2016.08.04

中島みゆきの「ウィンター・ガーデン」(幻冬舎)は同名の夜会(2000、2002年)の内容を写真付の詩集にまとめたものである。写真は広木忠雄、田村仁、荒井博文。北海道の雪原の真ん中にあるガラス張りの家に一人の女が引っ越してきた。庭には槲(かしわ)の木。犬も住んでいる。この女は何処かの島の漁協に勤めていたのだが、彼女の姉の夫と不倫関係となり、2人で共謀して漁協の金を少しづつ横領して、ついに遠い地に駆け落ち先を見つけて、先に彼女がやってきたのである。そこは湿原で、リゾート開発があるという話に乗せられて将来2人でペンションを経営しようと思って家を買ったのであるが、どうやら女は騙されたようである。最初の冬がやってくるが、男は姉との離婚が出来ず、まだやってこない。ある日町の司祭から電話があってこの家の秘密を知ることになる。湿原に建てられた家は沈みつつあって、既に一階は地面より下にある。住んでいるのは2階である。元の持ち主は中の良い夫婦だったが、夫の浮気に妻が怒り、一階を焼いた火災事故で夫が死亡した。妻は正気を失ってしまったので司祭が預かっている。愛人の方は誰も居なくなった家に夫を探しに来て湖に張った氷上に迷い込んで氷を割って死んでしまった。犬はその愛人の生まれ変わりであった。。。姉に電話すると、姉が妊娠したということを聞かされた。女は横領の証拠となる帳簿を持って、共謀者たる男を巻き込んでやろうとして、犬の制止も聞かずに飛び出していくが、車の事故で死んでしまう。

 こういった筋立てを用意しておいて、それに絡んだ北海道の風景やら心象風景やらを歌にしている。まあ、生まれ故郷の北海道を歌いたくて、そのために背景となる物語を作ったという感じだろう。

      その後、夜会についての良い批評が見つかった。槲の木を能楽師が演じたということである。なかなか深い。
http://soiree.txt-nifty.com/blog/2011/04/post-590b.html
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