2018.06.18
 中国新聞に紹介があったので、109シネマで河瀬直美監督『VISION』を観た。

  日本の森の中で若い猟師と結ばれたフランス人の女性。彼は事故で死亡して、妊娠していたその女性は子供を産み落として、老婆に預けてフランスに帰国した。老婆は村の人に赤ん坊を預ける。その育て親が時々登場して話をするが、見る人にはその意味が判らない。その森は薬草で知られており、老婆は詳しかった。フランス女は薬草『VISION』の雲をつかむような話を聞いて、再びその森を訪れる。そこで1人の樵に出会い、意気投合して結ばれる。VISIONの話は老婆にも通じて、1000年に一度その胞子を出すと言う。フランス女の聞いた話では正確には素数の997年に一度だそうである。最近森の様子が変であり、老婆によるとこの秋〜冬にかけてその出来事が起きるという。ある日老婆は森に出かけて古木の前で舞い、森と一体化する。その後、突然若い男が現れて樵の手伝いを始める。その男もまた突然森に出かけて居なくなる。樵の犬が森に出かけて死んで、その死んだ犬を抱えて男が戻ってくる。男は再び森に出かけて、女が見守る中、古木の前で舞い、やがて周囲の木々が燃えはじめ、男が倒れる。ただ、実際に舞っていたのは死んだ若い猟師であった。この辺は幻想であるが、ともあれ、女が踊り倒れた男を抱えて、両者がお互いに母子であることを確認する。結局は捨てた我が子との再会、という物語になっていて、Vision というのはその事だったようである。まあ、何だかよく判らない映画ではあったが、森の情景はなかなか美しかった。新聞記事にも書いてあったが、何もかも包み込む母性の象徴という感じもある。

 
<目次へ>  <一つ前へ>    <次へ>