2018.06.20
 人種というのは大まかな分類であって、実体は境界が曖昧で連続しているが、ホモ・サピエンスの拡散を考える上では有用な概念である。海部陽介『人類がたどってきた道』(NHK出版)から、纏める。

・・アフリカ大陸で<何らかの知性に関する進化(抽象的思考とか計画性、技術の伝承)>が終わった 5-9万年前から拡散が始まった。

・・最初はユーラシア大陸南岸に沿って東南アジア域に到達し、更にオセアニア地域にまで広がる。これが<オーストラロイド>である。海洋性が特徴である。一部は北上して日本人の遺伝子に痕跡を残している。純粋に残されているのはアボリジニとニューギニア原住民。

・・次は西アジアからヨーロッパとインド亜大陸に向かった<コーカソイド>。ヨーロッパの移動先には既にネアンデルタール人が居て、ある程度の緊張関係があり、また寒冷にも適応しなくてはならなかった。インド亜大陸にはオーストラロイドが居たが、やがて片隅に追いやられた。

・・次はヒマラヤ山脈の西側を経由して北方に向かったのが<原モンゴロイド>である。これも寒冷適応が必要だった。両方共に寒冷適応は必ずしも時間のかかる身体的適応ではなく、「文化的適応」となった。衣服や住居、更には石器の精密化等。

・・原モンゴロイドは更にシベリアを経由してアメリカ大陸まで渡るのだが、他方東アジアに拡がり、更に東南アジアにも広がった。おそらく、その頃には東南アジアに居たオーストラロイドを駆逐するだけの文化的優位を持っていたと思われる。これが<南方モンゴロイド>であり、オーストラロイドの遺伝子も取り込んでいる。

・・北方に残ったモンゴロイドはやがてその寒冷度に応じて身体的環境適応をしていく。これが<北方モンゴロイド>である。典型的にはエスキモーやモンゴル族であるがその程度にはかなりの分布がある。

・・最後にアフリカに残ったのが<ネグロイド>ということになる。

・・日本列島には、オーストラロイド、原モンゴロイド、南方モンゴロイド、北方モンゴロイド、つまりコーカシアンとネグロイド以外の全ての人種が流れ込んで混血している。これに対して、中国大陸や朝鮮半島には比較的新しい時期の北方モンゴロイドに占められていて、おそらく古い時期のモンゴロイドは彼らによって日本列島に追いやられたのではないか、と思われる。

 
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