2018.01.21
      吉田拓郎の魅力というのはなかなか言葉で説明しづらいものがある。投げ出すような歌い方で、何の衒いもなく自分をさらけ出す感じ。さらけ出された人格はと言えば、まあごく普通の男の子。言葉が冴えているかといえば、まあそういう時もあるが、どちらかというと、リズムと旋律で訴える方が強い。アメリカのポップスやブルースやロックやフォークのスタイルを素直に受け入れて、日本語をストレートに載せている感じ。何だろう?時代の空気をそのまま感じさせるのだが、本人はこの音楽性については相当細かい処に拘っていたのである。うーん、それこそ<内臓感覚>に忠実たらんとしていたのだろう。

      レンタルで借りてきた3枚組のベストアルバムを聞いている。"Takuro Yoshida BEST"。殆どは1970年代の曲だったから、中島みゆきがデビューする前後であり、彼女が拓郎を追っかけていた頃のもある。比較すると、音楽的には引き継いでいるのだが、中島みゆきの歌詞は徹底的に屈折した表現になっていて、こちらは曲よりはずっと歌詞の方に魅力がある。それと、比較してみて気づくのは、中島みゆきの芯になっていると思われる<あらゆる命への絶対的な拘り>である。まあ、生い立ちにも拠るのだろうが、これは命を育む女の本能なのかもしれない。そういう要素が拓郎には決定的に欠けているのだが、その替りに何物にも囚われずに絶えず浮遊していく気持ちよさというのがある。こちらの方は、まあ、男の本能なのかもしれない。。。そういえば、中島みゆきの歌で言えば「流星」にはそういう雰囲気があって、拓郎の歌を聞きながらそちらを思い出す。
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