2015.07.19

朝から雨になったが、お昼前には晴れた。昼食を摂ってからアステールプラザまで広島中央合唱団の第50回定期演奏会を聴きに行ってきた。スターバト・マーテルを新しい作曲で演奏するというのでちょっと興味を持ったからである。

・・・この曲は一昨年にスティーブ・ドブグロスというアメリカ人に委嘱したもので、その時が初演で、今回が2回目ということである。合唱の他にソプラノ、アルト、テノールのソロと作曲者によるピアノと長原幸太という広島出身のヴァイオリニストが率いる弦楽合奏が加わる。歌詞はラテン語そのままで、十字架で処刑されたイエスの母の嘆きを歌ったもの。昔から多くの作曲家が曲を付けていて、定番の歌詞である。

・・・今回の曲想は勿論ルネッサンスやバロックのスタイルではないから、何となく宗教曲として聴くと違和感があるが、次第に慣れてくるものである。チックコリア風のジャズの要素もあり、意識的に取り入れたという和風の音階もある。最初は長崎に残っている隠れキリシタンの音楽みたいな感じもした。全体的には加古隆風だなあ、と思った。合唱の構成は声部間の声の移動によるダイナミックな構成があり、それぞれの歌に適した曲想の変化があって、それなりに楽しめたが、現代の日本という環境でこういう歌詞というのはやや無理もあるのかなあ、と思った。

・・・合唱は物語の記述部分に使われていて、ソロが聴衆の気持ちの代弁部分に使われている。テノールによるJuxta crucem (処刑されるイエスと苦しみを共にする決意)と、アルトによる Tui nati(イエスの母が愛する子を失った悲しみを共にする決意)がなかなか良かった。最後はソプラノが Quando corpus(肉体が滅ぶ時に魂を天国にという聴衆の願い)で締めくくってアーメンで終わるので、今回は特別に同じ作曲者による Lux aeterna (永遠の光)が付け加えられた。原爆や戦争、幾多の災害の被害者の上に永遠の光が輝きますように、というわけである。確かに光り輝く感じがあって、こういうのは多分伝統的な作曲技術なんだろうと思った。

・・・帰りに裏口付近の舗道を歩いていると、突然長原幸太さんが出てきてびっくりした、コンビニに向かって急ぎ足であったから、お腹が空いたのであろう。

<目次へ>  <一つ前へ>   <次へ>