2024.06.23

『壮士劇場』という1947年の映画をYouTubeで観た。日本国憲法発布記念ということで、自由民権運動の中で、中江兆民の影響下、壮士芝居で成功した人の話。難しい演説や書物ではなく、演劇という大衆に判りやすい形で政治運動をした。坂東妻三郎が主演である。

      地方回りを余儀なくされ、北海道公演で破綻したときに、身を売ってまでして、本土帰還のお金を出してくれた芸者と東京で再会してハッピーエンドとなる。1時間半位の長さであるが、途中で飽きてしまって、3回ほどフルートを吹いてリフレッシュした。

      まあ、何とも言えない。強いて言えば、勧善懲悪とか判官贔屓とか、江戸時代の庶民の道徳感情というのが「民主化」へのエネルギーになる、ということで、「封建制」の中にこういう大事なものが潜んでいることを忘れてはならない、ということだろうか。逆に言えば、政治エリートがそれらを「合理主義」の名の元に軽視しているようでは危ういということでもある。

      もう一つ気づいたことは音楽である。明治時代ということで、当然尺八の伴奏で浪曲なのであるが、判りやすい歌詞とメリスマを駆使した音楽とが、和声構造的な西洋音楽に慣れてしまった僕には何かしら新しいものに感じられる。子供の頃はこういう音楽が何となく遅れたものに感じられていたのだが、逆に、こういう音楽の側面こそ、音楽の本質に近いのではないだろうか。

  <目次へ>       <一つ前へ>     <次へ>