2011.11.08

    夕方、電車で大手町の県民文化センターのホールまで、瀬尾和紀のコンサートを聴きに行ってきた。電車は実にのんびりとした乗り物である。広島の人はゆったりとしている。コンサートは中国フルート協会という団体の主催である。紙屋町の電停前には「デオデオ」があるので中に入ってみた。かれこれ40年位前だろうと思うが家電量販店「第一産業」がここに出来て、よく行ったものであるが、それが今では「デオデオ」になっている。県民文化センターは鯉城会館といって、いろんな小会議室が集まっている中に500人位の小さなホールがある。そこに100人くらいしか来ていなかった。そもそも自由席なのだが、会場前に列を作らないでパラパラと入る。広島の人が呑気なのか、それとも席が空いているからなのか?

    曲目は前半がテレマンの無伴奏、シューベルトの「しぼめる花」の主題による変奏、W.ギーゼキングのソナタである。シューベルトはちょっと元気が良すぎる。もう少し丁寧に表現して欲しかった。ギーゼキングのソナタは瀬尾さんが発掘したものらしい。ちょっとドビュッシーを思わせながらも民俗風でもあり今風でもある。後半は良く知られた名曲が並んでいてよかった。フォーレのシシリアーノとファンタジー、ドビュッシーのシランクス、オネゲルの牝山羊の踊り(これは面白かった)。ジョリヴェのリノスの歌もなかなか良かった。ギリシャの叙事詩という感じで、天変地異、隊列を組んだ戦争、荒廃への感慨、といった感じの楽章が交替していくのが明瞭に表現されている。最後のプーランクのソナタも素晴らしい演奏であった。この人は音程を調節するのにフルートを廻している感じである。それが良く判った。それにしても正確なテクニックには驚くしかない。アンコールはプーランクがエディット・ピアフ(と言ったような気がするが)に捧げた歌ということで、歌謡的な旋律を豊かな音量で歌い上げていてなかなか良かった。調べると15の即興曲の中の15番「エディット・ピアフを讃えて」であった。原曲はピアノである。

    ところでこのホールは相当古い。あまり反響が無いから直接音が届く感じだし、シランクスの演奏中には空調の音が気になった。トイレも和式である。

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