2004.01.12

       瀬尾和紀(fl)と大萩康司(g)のリサイタルを聴きに行った。前から2番目のかぶり付き。ジュリアーニのソナタAdur作品52、テデスコのソナチネ作品205、シャンカールの魅惑の夜明け、ピアソラのタンゴの歴史、アンコールにモンティのチャルダーシュと2重奏の大曲ばかりで意欲的な演奏会であった。ソロはギターがレイ・ゲーラという人のそのあくる日という渋い曲(これはもう一度聴いてみたい)、タルレガのアルハンブラの思い出、フルートがパガニーニの24のカプリスから24番、ドビュッシーのシランクス。

      フルートは銀と金と2種を使い分けてて、音色の違いが良く判った。金は金管的な輝く音色で、銀は柔らかく表現に富んでいる。テクニックは目覚しくて驚いてしまった。特にパガニーニの変奏で重音を使った表現がこんなに効果的であるとは思わなかった。またシランクスは真っ暗の中で演奏して音の素晴らしさが際立った。最後に音が消えていくときに管の共鳴音だけが弦の音のようにか細く残る。音色そのものより、音程的にも音量的にも実に良く考えられて制御された演奏で素晴らしかった。唇の圧力と顎をほんの少しだけ動かして調整していたが、それにしても素早い音程や音量の変化が何とも曲芸的であった。両足でしっかりと立って膝を曲げて飛ぶようにして身体を上下に動かして勢いを付ける吹き方である。これはお腹を使って空気圧を制御するやり方の一つである。ひとつだけ物足りないところは、これだけ完璧で激しい表現力でありながら、演奏があまりに冷静で表現が知的に整理されすぎていて、自らの自然発生的な表現にまで成熟していないところである。またちょっとテクニックを強調しすぎたのではないだろうか?驚きと感動とは違う。やや優等生的。それにしても週2回くらいのペースで全国を巡りながらこんなプログラムをこなしていくというのはやはり若さであろう。(瀬尾和紀はホフマンのフルート協奏曲を録音していて、radio canada で知っていたので、聴きに行くことになった。)

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