2013.11.18

   江守正多の「地球温暖化の予測は正しいか?」(化学同人)を読んだ。まあこれくらいは知っておかないと、と思って買っておいた本であるが、内容的には大体予想通りだった。メッシュが粗いので、細かい現象についてはモデルを作ってパラメータ化していて、そこが世界で20ほどある研究グループ間の相異になっている。(僕がオムツの中の「気象」を計算したのとおなじようなものである。水蒸気熱流体を直接計算することはそんな狭い領域でも大変なので、工学的に知られたモデルや数回だけ行った熱流体計算の結果をモデル化して気液平衡条件を追加して使う。それでも計算の意味はある。測定されたデータからは必ずしも因果関係までは出てこないから、因果関係を逆に解釈してしまうことがあるからである。計算すればその辺がはっきりする。)勿論気象現象はカオスなので、1週間先が限界である。気候ということになると、そういった気象計算を何回も繰り返して大きな傾向としてまとめることで充分予測できる。最後のあたりで予測結果の確率表現の工夫が説明されていて興味深かった。わざとパラメータを振ってみたり、あるいはモデルの信頼性を測定する方法を工夫して重みを付けたり、要するにいろいろなグループが何回も計算する度にいろいろな結果が出て、それを統計的に扱うという仕組みである。66%以上(正規分布でいうと大体標準偏差以内位)を「可能性が高い」と表現しているということである。これからのモデル化として生態系のフィードバックのモデル化が取り上げられようとしているらしい。二酸化炭素というのは海は勿論生態系によって数年という長期に亘って緩衝的に調節されるから、そのモデルがどの程度まで通用するのか、というのがまだ良くわからないからである。使っているモデルに根拠が無いとか、パラメータ化で結果が信頼できないとか、批判するのはまあ良いことだが、かといって計算する事自身を否定することには僕は反対である。問題の重要性を鑑みれば最大限の努力をして将来の予測をすべきである。
  <目次へ>
  <一つ前へ>  <次へ>