2018.01.12
      今日はタルコフスキーの「ノスタルジア」を見に行った。難解である。疲れた。

最初の画面は開けた湖を背景にした田園風景で、女性と子供が歩いている。どうもこれはタルコフスキーの幼年時代の一コマのようである。

物語はイタリア。「ストーカー」で出てきた作家がまたここでもロシア人作家の配役で、ローマに住む通訳の女の案内で、とある寺院に入るが、作家は寺院には興味がない。どうも作家はロシアのある音楽家の伝記を書いていて、その音楽家がここで自殺したらしいのである。女の方は寺院の案内人に「何故女ばかりが神に祈るのか?」と尋ねる。「多分女には出産や育児などの受難が多いからだろう。」と答えられる。その晩ホテルで窓を開けたまま寝ていると雨が降りこんできて床がびしょ濡れになる。犬が一匹やってきて座る。どうもこの水浸しとか犬とかが、タルコフスキーの映像にはよく出てくる。夢の中で作家は妊娠中の妻を見る。

さて、この町の近くには温泉があって、それはプールのように囲われていて自然の湧き出し湯のようである。何人かの客が湯に浸かってくだらないおしゃべりをしている。そこにやってきた僧侶は「世界の終末が近い」と言い、家族を7年間も監禁したらしい。「あなたは存在しない。存在するのは神です。」と言ったのだが、作家がそれに感心して、訪ねていく。案内の女は作家に惚れていたのだが、愛想を尽かしてローマに帰る。さて、僧侶は<世界を救う為に>と、作家に頼みごとをする。ロウソクに灯を点して温泉を渡ってくれ、という。彼はそれを何回もやりかけたのだが、人々は自殺すると思ってやらせてくれないのだそうである。作家は請け負う。

その晩故郷の夢を見る。翌日夢に誘われてとある泉に入る。その時少女に出会う。この無邪気な子供が印象に残る。望郷の念に駆られた作家は僧侶との約束を忘れて帰国しようとするが、その時、ローマに帰った女から電話があって、僧侶がローマの広場で演説をしているという。僧侶は作家が約束を果たしたかを気にしているという。彼は思い出して「やってるよ。」と答えたので、僧侶は大演説をしたあと、ベートーヴェンの第九を大音量でかけながら、焼身自殺をする。他方、作家はロウソクの灯を点して何回か失敗した後、ついに温泉プールを渡りきる。

その時に場面が切り替わって、故郷の風景に戻る。どうやら作家はここで息絶えて、故郷に帰ったのであろう。最後に、「母の思い出に捧げる」という字幕が出る。一体何が言いたいのか判らないが、映像は印象的で、それが何かを語っているように思えた。


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