2022.02.16
昨日から『野田ともうします』という奇妙なドラマを観ている。5分間で完結する小話集になっている。柘植文という人の画いた漫画を原作通りに再現している。今回のは、10年位前に放送されたものの一気再放送である。3シリーズあってそれぞれが20話なので、1シリーズを観るのに1時間半位かかる。ちょっと疲れる。

・・・読書の世界で育ってきた野田という学生が大学の手影絵サークルに入り、外食チェーン店でアルバイトをしている、というシチュエーション。周囲の人たちとは全く調子が合わない。そのずれ具合が面白いのである。野田を江口のりこが演じていて、妻が最近江口のりこのファンなので、テレビ番組欄で見つけたものである。

・・・日本の漫画作家は随分とユニークなドラマを生み出している。それぞれがそれぞれの読者層を持っていて、マニアックでありながら、それなりにビジネスとして成立している。ヒットした作品を元にしてテレビドラマや映画が作られるというケースが多い。漫画家が日本の現代文化を牽引しているとも言える。そういえば学生時代、僕たち全共闘世代は少年漫画をよく読んでいた。そのアングラ的な文化がずっと続いているようにも思える。

・・・野田さんは日常の何でもない会話を自らの蓄積した小説世界と結びつけて突然語り始めるから、そんな小説を読んだこともない周囲の人たちから見ると常軌を逸した反応に見える。野田さんから見ると逆に周囲の人たちの感じ方や行動が理解できないが、それでも人間としてのある種普遍的な共感だけは持っていて、そのことが彼女を「世界」に結びつけている。アインシュタインの奇矯な行動、あるいはチャップリンの喜劇、そうそう、これは知識人という階層のカリカチュア化としても読める。

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