2026.01.28

    NHK BS 「フロンティア:脳に忍び込むナノプラスチックを追う」はなかなか衝撃的だった。アメリカで死体の分析を行った論文が出て、プラスチックが脳にかなりな濃度で残っていることと、その濃度と認知症との相関が認められた。これらの因果関係は必ずしもどちら方向かは判らないにしても、血液脳関門を通過していることは想定外だった。ポリスチレンでナノプラスチックを作ってマウスの胎児に食べさせると、500nmサイズでは体内に吸収されなかったが、50nmでは吸収されていて、やはり脳での濃度が高かった。そのメカニズムを調べると、ポリスチレンのナノ粒子にコレストロールが集積し、脳関門ではコレステロールを取り込む時にポリスチレンが紛れ込むことが判った。細胞に取り込ませる実験を行うと、細胞内小器官リソソームに集積する傾向が判った。リソソームは細胞内老廃物を分解して再利用する器官であるが、ナノプラスティックは分解できないために集積すると考えられ、結局は老廃物の分解が滞ることが予測される。実際に細胞に取り込ませて様子を観察して判ったことは、合成したポリスチレンではそれほど影響を受けないようであるが、ポリスチレンを自然界を模して光劣化させておくと、細胞の分裂が阻害され、やがて細胞が死亡することが判った。かといって我々はもはやプラスチック無しでは生活できなくなっており、プラスチックが自然界で光劣化すればナノプラスチックとなり、実際に大気の一成分として観測されている。だから、問題は生体にどれくらいの影響があるのか、どのようなプラスチックが有害性が高いのか、といった定量的なデータの把握を行い、被害を最小限に留める工夫をすることである。僕が子供の頃はプラスチック類似材料というとベークライトとかセルロイドとかレーヨン位だった。現在の膨大な石油由来のプラスティックゴミを見ると隔世の感がある。

  <目次へ>       <一つ前へ>     <次へ>