2022.05.20
西条の東広島市立美術館で『グランマ・モーゼス展』を見て来た。JRで50分位である。1900年を挟んで100歳まで生きたアメリカの農婦である。奉公先で知り合った男と結婚して10人の子供を生み、5人を失った。農村の自給自足生活と家族を愛した。手芸というべきか、刺繍で絵を描くのが上手くて、結構評判が良かったが、70歳にもなって手がうまく動かなくなったので、代わりに油絵を描いたということらしい。思い出の中の風景を描く。絵葉書等も素材としている。遠景、近景、人物を同じくらいの重みで描く。魚眼鏡に映った風景がヒントになったらしい。プリミティブ絵画といわれ、絵本の感じである。年に一度の村総出での蝋燭作りや石鹸作り、感謝祭やクリスマス。生きるという事がそのまま楽しみであり、絵を描くのもその中の一つであった。まあ日記を書いて悦に入っているようなものかもしれない。芸術という意識は無い。
・・・大きな年表に彼女の一生とアメリカの政治経済との比較表があって、その2つの見事なまでの無関係性に驚愕した。これだけの激動の時代に、アメリカの片田舎にはその嵐に巻き込まれることなく、平穏で幸福な時間が流れていたのである。「大きな国」としか言いようがない。有名になって、インタビューも受けている。絵が上手くなるには絵をひたすら描きなさい、絵の具の混ぜ方以外は人に教わらない方が良い、宗教画を描かないのは聖書がよく判らないからだ、判らないことは描くべきではない、死ぬことは眠るようなものだ、何も怖くない、と言っている。トルーマン副大統領と食事をしている。ピアノがあったので、頼んで彼に弾いてもらったが、曲名は判らなかったそうである。
・・・見終わってから、酒蔵通りの狭い路地を入って、Trecasa というカフェで蒸籠料理を食べた。野菜の甘味が良く出ていて、美味しかった。

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