2016.12.31

昔の夜会のダイジェストDVD、「夜会の軌跡」が届いたので、観た。まあ、つくづく表現意欲の旺盛な人だなあ、と思う。社会から排除された者への共感だけが一貫している。どれも印象に残ったが、「問う女」からの「あなたの言葉がわからない」はゴンドラでの主人公とジャパユキさんとのやりとりで、台詞でありながら歌でもある、という面白さと、内容の深刻さ。言葉が通じないということの意味。結構深い。「夜会1990」からの「ふたりは」も印象的。不良少年と不良少女の恋を描いた歌で、周囲からの蔑みの声と、本人たちの純粋な気持ちとを中島みゆきが歌い分けながら、小説「この空を飛べたら」の世界を再現している。「ウィンター・ガーデン」では中島みゆきが何と犬になって歌っている。夜会というのは全くもって中島みゆきの意思だけで作られている感じがする。普通は演出家とか、作家とか、まあいろいろな人の意思が絡むのだが、要するに、彼女は自分の権限の及ぶ範囲で仕事をし続けていて、その範囲を徐々に拡げてきたということである。彼女を徹底的にサポートした YAMAHA の「独裁者」川上源一の存在は多分決定的だったのだろう。それにしても、この若いころのDVDを観て、ちょっとファンの気分になってしまった。深みに嵌ったのかもしれない。
 
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