2019.04.05
半分読んで放っておいた大澤真幸『三島由紀夫:二つの謎』(集英社新書)を読んだ。すごく面白いけれども、この三島の思想にも、大澤真幸のような分析にも全く共感できない。どうしてこんなに観念的になれるのだろうか?まして、それで切腹自殺なんて。。。まあ、小説家というのは大体において常軌を逸しているのだし、評論家の切れ味鋭い想像力というのも身勝手なものなのだが。。。

・美学:現象の中に現象を超える契機がある。それが美。だから、美はいつも現象というカーテンの後ろに隠れているように感じられる。つまり、美を確信する為には現象を破壊するという行為が必要であるが、その行為の結末は結局現象自体を破壊し、同時に美も逃げ去ってしまう。だが、その結末が問題なのではなく、行為がもたらす主観的意識の変革が問題である、という事のようである。

・『豊穣の海』シリーズを書き始めた頃までは僕も三島由紀夫の愛読者だったのだが、彼の、とりわけ恋愛の、描写にリアリティを感じなくなって、飽きてしまった。その頃から美の象徴としての天皇が彼の意識を占めるようになる。大澤氏の分析では、火と血の破壊衝動と海の抱擁力への憧れという二つの契機があり、小説では後者に引きずり込まれた為に、現実世界で前者による解決を求めて、鍛え上げた自らの肉体を破壊したという。。。表現者としては、確かに、徹底している。
 
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