2018.12.10
何とも刺激的な題名に惹かれて、堤未果『日本が売られる』(幻冬舎新書)を読んでみた。TPPや日欧EPAといった自由貿易協定に参加するために、ここ2〜3年の間に、日本では大規模な規制緩和(公営事業の民営化)が進められているが、あまり知られていない。僕も殆ど知らなかった。それをまとめて警告した本である。あまりに数が多いので、列挙しておく。ここまでして、何を輸出したいのか?いつまでもモノを作って輸出するだけの国でいられるのだろうか?資本輸出や観光業等に注力した方が良いのではないだろうか、という気もする。

・・・水道事業民営化(フランスの資本が入る)、核汚染土の廃棄基準緩和(原発輸出の条件として汚染物を引き取ることになっている。)種子法廃止と自家採取禁止、残留農薬基準の大幅規制緩和(ネオニコチノイド系殺虫剤(ミツバチが激減)、グリホサート系除草剤(ラウンドアップ、動物で発がん性))、遺伝子組み換え非使用食品表示の厳格化(遺伝子組み換えは耐グルホサートが目的である)、乳製品輸入自由化(国産牛乳が無くなる)、農地法改正(中国資本による農地買占め)、森林伐採の私企業委託自由化(一気に禿山となる)、漁業への参入自由化、卸売市場法改正(小規模生産者と店舗が淘汰されて、食の多様性が失われる。)、働き方改革法、改正入管法(事実上の使い捨て移民)、労働基準監督署の一部民営化、カジノ法、公教育の民営化(戦略特区で実施中)、国民健康保険加入条件緩和(日本への医療目的の入国者が増加)、「MOSS協議」(80年代、医療機器と医薬品の承認をアメリカに事前相談する制度、以後日本は輸入超過となり、保険料高騰の原因となった、)、介護の私的ビジネス化(次は、混合介護により、保険適用外が主体となって、介護費用負担が増大する)、LINEとマイナンバーを結合するという方針(韓国企業のLINEに個人情報を利用されても文句は言えない。プライバシー設定を見直した方が良い。韓国では Telegram に切り替える人が増えている。)

・・・これらの規制緩和は既に世界では反省されていて、幾つか克服された例がある。これも列挙する。イタリアの「五つ星運動」(ネットを利用した直接民主主義)、マレーシアのマハティール首相によるアジア通貨危機対策(外資に資産を売り渡した韓国、タイ、インドネシアとは逆に投機資金を排除して、内需を刺激して回復。消費税撤廃。日本でもそうだが、消費税は法人税引下げと必ずセットになっていて、個人から企業への資金移動にすぎない。)、ロシアの超近代的ハイテク有機農業と種子の自国開発、パリでの水道再公営化(市民の監査組織が運営)、スイスの「食の安全保障」(憲法に明記、国内の協同組合運動)、アメリカの Mom's Across America(子供のアレルギー疾患の原因がグリホサートにあることを突き止めた。2018.8.10 モンサント社がグリホサートによる清掃員の発癌で有罪となった。)

・・・あとがきでは、非営利の協同組合を拠点として国際資本に対抗すべきである、という。

 
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