2016.10.07

廿日市「さくらぴあ」で千住真理子のリサイタルを聴いてきた。曲目が馴染み深い名曲小品ばかりだし、もう聞かなくてもいいかなあと思ったのだが、家内が行きたいというので。。。赤いドレスで元気そうに出てきて、例の調子で解説しながらストラディヴァリウス・デュランティをたっぷりと聴かせてくれた。今年は楽器が作られてから丁度300年になるのだそうである。またヴァイオリンの嫌う高温多湿の時期がやっと終わって調子が良い時なのだそうだ。

・・・ 最初の「G線上のアリア」は本当にG線だけで弾いているということに改めて気づいた。ちょっとざらざらした味があって、ヴィオラのような感じである。

・モーツァルトの3側面として、まずは「アヴェ・ヴェルヌ・コルプス」。転調で緊張感を持続させ、微妙に旋律を変えながら静かに昂ぶりを見せる。天才の曲だなあ、と思った。「ディヴェルティメント17番のメヌエット」は確かに可愛らしい。曲の感じが「ユーモレスク」に似ていることに気付いた。「トルコ行進曲」の新編曲版は技巧的な処もあり、なかなか見事であった。

・高音の艶はこのデュランティの特色なのだろう。時折見せるハーモニック奏法でも実に安定した感じがする。元々千住真理子というと、禁欲的で胸を突き刺してくるような音に特徴があったのだが、デュランティに出会うことで、その音に随分情緒性が加わってきたような気がする。

・シューベルトとカッチーニの「アヴェ・マリア」は美しかった。前半最後はアルビノーニの「アダージョ」。ちょっとしたフレーズの入り方のタイミングとか、この人ならではの微妙なテンポの揺れで表現する。

・・・後半は日本の歌が3曲。「赤とんぼ」「浜辺の歌」「故郷」。どんな編曲かなあ、と思って聴いていた。最初は低音弦、次は高音弦、次はピアノにメロディーが移ってヴァイオリンが高音で修飾する、ついで転調、最後は高音弦、というパターンである。ピアノにメロディーが移るパートが一番難しい感じである。「故郷」が一番充実していたと思う。

・次は海外の民謡を3曲「我が母の教え給いし歌」「ロンドンデリーの歌(ダニー・ボーイ)」クライスラー編曲による「アロハ・オエ」。これらの方が編曲としては自然である。

・次は千住明の曲で「海を越えた贈り物」。この人の作曲スタイルがよく出ている感じで、大河ドラマのテーマ曲を思い出した。モンティの「チャルダッシュ」は流石である。正に自家薬籠という感じで素晴らしかった。

・アンコールは、まず「Amazing Grace」。最初の1コーラスはソロで、なかなか迫力があった。「愛の挨拶」も緩急自在で聞き惚れた。

・デュランティを自費で購入して、借金を抱えているらしい。応援しなくては、と思った。
 
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