2017.12.15
    アルパークの109シネマでMET(メトロポリタンオペラ)の「魔笛」を上映していたので、観に行って来た。10時から13時40分頃までなので、ポテトチップスを買って中で食べた。今回のは10月14日公演のジュリー・テイモア演出、ジェイムズ・レヴァイン指揮のものである。

    演出が面白い。ファンタジーということで、夜の女王の侍女の仮面は丁度宮崎駿のアニメに出てきた「顔無し」の感じで、頭の上に乗せたり、手に持ったりする。鳥射しの場面では棒の先に付けた鳥が舞う。天使の乗る大きな鳥や不気味な雰囲気の熊など、大きな操り人形を躍らせる。化粧はまるで歌舞伎である。さすがアメリカということで、配役の人種も多様である。歌ではまあ夜の女王(キャスリン・ルイック)が圧倒的であった。音楽は間違いなく素晴らしいとしか言いようがないが、こういう映画館で聴くとなるとやや疲れが残る。

    物語は、娯楽作品であるからそんなに気にしなくても良いのかもしれないが、やはり時代を反映している。ザラストロの「光の世界」が女王の支配する「夜の世界」に勝つ訳であるが、それは男の寡黙と忍耐と理性が女の饒舌と嘘と感情に勝つという意味でもあるし、そのことが台詞の中でしばしば強調されているから、女性解放論者の顰蹙を買うかもしれない。幾何学図形やコンパスの図で理性が象徴される。イシスとイリシスという中東世界の神が登場する。これはイスラムからもたらされた科学文明を象徴している。理性の世紀、それはルネッサンスに始まりフランス革命で政治的現実となった。近代の人間中心主義、男性優位社会である。それは二つの世界大戦でその限界を露呈することになるのであるが。。。
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