1998.12.28

    ガバン・マコーマックの”空虚な楽園”を読んだ。I氏が薦めていた本である。日本の戦後を総括してみようという事で、進歩派の言論の総まとめといった感じがする。前半の政治経済のところは良く纏まっていて、なるほどと思った。土建屋の思うがままに税金を吸い取られているというところとか、レジャー産業のありかたとか、農業についての見方とか。後半は専ら戦争責任の話である。天皇制を残したという米国との妥協の産物が、すっきりしない形で問題として残されていて、アジア諸国からの追求がますます盛んになっている。これからどんな日本を目指すにせよ、それは避けて通れないのに、後回しにされている。結局の所、日本が後を追い、米国が先頭を切っている現在の生活様式は環境の許す限界を超える事で、存続が出来なくなる。どうでもよい人間の欲望をそそる事で経済を成長させるよりは、富の分配のシステムをうまく考える事の方が重要である、という説が、昔スチュアート・ミルによって唱えられたというところで終わる。何も解決の手法を示している訳ではないが、多少頭が整理されたように感じた。

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