2012.11.12

      古賀茂明「官僚を国民のために働かせる法」(光文社新書)を読んだ。本屋で偶然目に付いたものである。通産省の官僚で、国家公務員制度改革を行おうとして閑職となり、昨年ついに辞めさせられた。テレビなどにも出ていた人らしいが知らない。

      「日本/権力構造の謎」がオランダ人という謂わば部外者による調査観察記録であるのに対して、こちらは内部の人の証言ということで、あまり官僚と接したことの無い僕としては事実関係の確認といった意味もあって読んだのである。(なお、ここでいう官僚というのは、国家公務員I種試験に合格して各省庁に採用された人達(キャリアー組)を意味する。)まあ、確認にしかならなかったが、本人の体験に基づく記事なのですんなりと読み終えてしまった。

      民主党が政権を取るまでは本気で官僚による支配を覆そうという意志があったのだが、実際に政権についてしまうとあっさり丸め込まれてしまって、何も変わっていない。けれども政治家にしか変えられないのも事実である。そこで国民は何をすれば良いのか?メディアの報道に騙されないようにして、とりあえずは選挙区の政治家にメールなり電話なり献金なりで政治的圧力をかける、ということが効果的である、との事である。彼が実際に目指していた制度改革についてもまとめて書いてあるが、民間企業から見れば至極当然の事のように思われる。まず、幹部の身分保障を無くし、失敗したら入れ替える。成果を評価して下位のものは辞めさせる。人事は官僚ではなく政治主導とする。評価は目標管理と360度評価を取り入れる。幹部ポストは民間からも公募する。幹部候補には若い内に同じ省内ではなく民間も含めていろいろな職を体験させる。年功序列を止める。残業代は部署毎に上限を決めて満額支払いとすることでコスト意識と効率を上げる。スト権を持たせて労働条件を正々堂々と交渉させる。等々。
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