2014.01.05
      今日は横川の西区文化センターで小林美恵と横山幸雄リサイタルを聴きに行った。家内は正月ということで和服なので、JR新井口までのんびりと歩いた。JR横川からちょっと歩いて到着したときにはちょうど開場したところで大勢並んでいた。550人の席はほぼ満席となった。比較的年配の夫婦連れが多い。まあ正月だし。

      最初の曲はサン=サーンスの「序奏とロンドカプリチオーソ」。華やかな曲でまあまあ。小林美恵は弓を目一杯長く使う。ヴァイオリンをしっかり固定して、弓の角度を弦の配置に合わせるから、弓を引く方向が水平から鉛直まで大きく変化する。細長い腕だし、背が高くて痩せているということもあって、動作が大きく見える。吉田雅夫追悼コンサート でバッハを弾いたときはそれがとても印象的だった。

      次はピアノソロでショパンの「バラード1番」。学生の頃、兄の家にルービンシュタインのLPを置いておいて良く聴きに行ったので親しみがある。演奏はまずまず、という感じ。ユジャ・ワンならもっと明瞭に弾くだろう。

      3曲目はマスネの「タイスの瞑想曲」で、これは素晴らしかった。ピアニシモの高音はやはりフルートではこんなにうまくは出来ない。

      次はラベルの「ヴァイオリン・ソナタト長調」。これはとても現代的な曲である。第1楽章は機智に富んでいて美しい。第2楽章はブルースとジャズの要素を取り込んでいるが、勿論ジャズとは全く異なっていて、不思議の世界である。最後の楽章はヴァイオリンが忙しくリズム的な和音を刻むのを尻目にピアノが飛び跳ねる。これまた変わった曲想である。またCDでじっくり聴いてみようと思う。

      後半は現存する作曲家の作品である。広島の中村暢之という作曲家(「ちびまる子ちゃん」のテーマを作曲した人らしい)に昨年の夏に委嘱した曲で初演である。「去りしものへ そして来たりしものへ」という題がついている。簡単で過去を回想するような尺八のようなテーマ(何となく被爆体験を回想しているような感じがした)とそれを裏返したような副テーマからさして発展するでもなく、繰り返しを多用しながら展開してやや盛り上がりをみせて、テーマに戻る。全体としては無伴奏ヴァイオリン曲の作法に従っているような感じではある。

      最後は横山幸雄の「ヴァイオリンソナタ」である。10年位前の作曲である。ちょっとフランクのヴァイオリンソナタを思わせるような、モダンで古典的な曲である。第3楽章がゆっくりした歌になっていて、第4楽章で俄然盛り上がる。ヴァイオリンの素晴らしいソロで始まって、一気に情熱を吐き出すようなやり取りが続いて終わる。小林美恵の長い髪が乱れるので、弦と弓の間に巻き込まれて大変な事になるのではないか、と気になった。

      アンコールは「ファリャの民謡組曲」から、よく知られた「子守唄」と速い曲の組み合わせ、それに、ドビュッシーの「美しい夕暮れ」。とても美しかった。フルートでも吹けそうである。

      今回はDUOということもあって結構トークがあった。話し始めると結構オバサン的な親しみやすさが前面に出てきて演奏時の気高い感じとの対比が面白かった。ところで彼女のヴァイオリンはストラディヴァリウス「ナドー=クーレンカンプ」(1734年製。所有は昭和音楽大学)だそうであるが、音には悪魔的な感じは全く無くて、素直で軽めな感じがした。彼女の性格が出ているのかもしれない。

  <目次へ>  <一つ前へ>  <次へ>