2014.02.03

      夕方から中国フルート友の会主催の神田寛明フルートリサイタルを聴きに旧鯉城会館まで行って来た。節分なので、まずは豆撒きをしてから出かけて、恵方巻ということで巻寿司を持っていって原爆ドームの近くのベンチで食べた。開場時間に行ったのだが、客は少ない。会員チケットは2,000円であるが、通常は3,500円で、曲目がフルートに関心のある人向きでもあるし、150-200人位だったろうか?赤字だったのではないだろうか?

      神田さんはちょっとお茶目な人で、最初に全曲目の解説をしてくれた。今日はフランス物ということである。

・最初の曲は去年亡くなったダマーズの「コンセール風ソナタ」である。古典舞曲の形式ではあるが、中身はモダンである。音楽が語るというのはウィーン古典派に代表されるドイツ音楽の特徴なのだが、これも別な意味で、つまり別の語法で、語っているように思われた。和声なのかどうか、そんなものが進行していくという感じはあるが、それがドイツ風に比べると人工的な感じがする。ああこういう風にしてもまあいいか、という感じである。それなりに整合性がある。

神田さんのフルートは木製である。強く吹くとちょっと篠笛のような感じがある。昔僕は女竹で横笛を作って吹いていたのだが、その時の音を思い出した。ちょっと乾いた硬さを感じさせる音。こういうのは固体音である。銀だとリンリンという感じになる。それはともかく、彼の演奏はさすがにN響の主席である。演奏に何とも言えない説得性がある。

・次はソロでフェルーという人の「3つの小品」。これもいかにもフランス風。

・3曲目がドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」のピアノ−フルート版である。CDなどでよく聴く感じよりもゆっくり目で、寝覚めかけている気だるい感じがした。それから活発になる。何だかバレーを見ているような吹き方が面白い。ピアノの方はよく息が合っている、というより、その微妙なずれ具合が曲の面白さを作り出していて、さすがであった。

・後半はまず武満徹の「エア」。オーレル・ニコレの為に作曲したソロの曲である。ラの音(Aurel Nikolet のA)を中心にして、それに還りながら巡るようにいくつかのフレーズを繰り返していく。曲としてのまとまりをうまく付けている感じ。

・最後はピエルネという人の「ソナタOp.36」で、これもまたゆったりと余裕を持って吹いているのが印象に残った。そうそう、神田さんのフルートで一番感じたのはタンギングの切れの良さである。スタッカートだけでなく、音の始まりがすごく綺麗である。

・アンコールはドビュッシーの「シランクス」とゴーベールの「水面」。全くもって魅了された。ゴーベールの曲は知らなかったが、水面がゆらゆらしたり、小波が立ったり、飛沫が散ったり、といった細かい表情が描き分けられていたのに驚いた。

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