17.05.08
エリザベト音大に行って、ハン・ヨジン フルートリサイタルを聴いてきた。200人位の聴衆で殆どがフルーティストのようであった。高校生も来ていた。先生方が集めたものと思われる。ハン・ヨジンはまだ15歳。11歳の時に琵琶湖国際フルートコンクールで優勝した。韓国の英才教育の賜物である。

・・・さてプログラムであるが、これでもかと言わんばかりの難曲とか現代曲もまじえて、一通り彼女の才能を証明するような曲目を並べた感じである。既に楽屋から漏れてくるウォームアップの音からして何か語り始めるような感じの表情のある音であったが、最初のフォーレのファンタジー Op.79 では正にそんな感じで、ゆったりとしながら変化に富んだ音が魅力的である。細い身体から絞り出すという風でもなく、どうやってこんなに力強い低音がだせるのだろうと思った。まあ、かなり上体が前後左右に大きく揺れていて、やや見苦しいくらいではあるが。

・・・2曲目はエマニュエル・バッハのソナタニ長調 Wq.83 で、これまたよく消化されたというか、曲の面白さを表現した演奏で、ちょっとこの年齢にしては驚異的である。ここまではピアノ伴奏(蒲生祥子)が付いていた。彼女のピアノもなかなか良い。

・・・3曲目はソロで ボザの14のアラベスク練習曲からNo.7 で、これまたとんでもない難曲を表情豊かに聴かせてくれた。

・・・4曲目はピアノが戻ってきて、F.マルタンのバラードで、まあ現代曲である。まったく何という演奏だろう。

・・・休憩の後の5曲目はソロの現代曲で P.ユレルの エオリア。これだけは、楽譜を見ながらの演奏で、さすがに上体の激しい動きは止めていた。声を使ったり、重音を使ったり、キーをパタパタさせたり、と忙しい技術のオンパレードであったが、すざましく軽妙にこなしている。

・・・6曲目はこれまた難しい A.ジョリヴェのフルート協奏曲。ピアノの蒲生さんも大変そうだったが、見事なフルート。。。会場から「ブラヴォー」の掛け声が出た。

・・・最後は有名なサン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28 で華麗に締めくくったが、最後の方はやや疲れが見られた。

・・・アンコールは有名なボルヌのカルメンファンタジー。超絶技巧の曲も単なるアンコールピースということだろう。

・・・アマチュアとして参考にすべき事と言えば、低音の充実が一番大事だという事くらいかな。もう一つ気付いたのは楽器の保持方法。左手人差し指がずいぶん開いている。8歳から始めたというから、薬指が G のキーに届くように指の全体を開いたものと思われる。右手の親指が中指の辺りにあるのも特徴的で、これも右手の指を開いた結果だろう。つまり、手の小さな子供の時からフルートをやるとこういう感じになるのだろう。そして、結構これは楽器の安定、つまり素早い指使いにとっては合理的なのかもしれない。帰ってきていろいろと反芻した。驚くべき演奏ではあったが、ちょっと荒っぽい感じがあったなあ、というのも正直な印象ではある。
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