中国新聞に紹介されていたので、横川シネマで「太陽の蓋」(監督:佐藤太 出演:北村有起哉 袴田吉彦)を観た。
http://taiyounofuta.com/theater.html

      独立系の映画で、福島原発事故に右往左往する官邸周辺の様子をドキュメンタリー風に描いている。1人の政治部記者が視点の役目を果たし、元東京電力で原発に詳しい男が技術的な予測や推定を入れて、観客の理解を助ける。他には記者の家族が東京で怯える様子とか、原発の職員の家族が避難生活を送る様子が描かれている。東京電力は現場と密接にやりとりしていたが、情報は官邸には殆ど届いていなかった。官邸地下の危機管理センターに詰めている東電の社員も原子力保安委員長も現場を知らない。管首相がいくつかの非常手段を使ったのも理解できる。結局東電に乗り込んで初めて自分だけが何も知らなかったことを知るのであるから。

・  事故としては、4号機の使用済み核燃料プールに偶然水が入ったお陰で日本が壊滅するのを免れたのだが、2号機の格納容器は壊れているので水を注入し続けなければ大量の放射能が漏れることになるし、冷却を続けても、外側を完全に囲ってしまわない限り少しづつ放射能が漏れ続けているというのが現状である。事故の終わりは見えていない。

・  そもそも、絶えず水冷しなくてはならないような使用済み核燃料が日本列島を何回破滅させても足りない位大量に保管されている、という事実は、この事故が起きるまで、一部の専門家以外誰も知らなかったのではないだろうか?危険性の本質は「メルトダウンが始まってしまえば近づくことが出来ず、したがって止められない」という点にある。海洋投棄すれば勿論安定保管となるが、その代わりに地球の海が徐々に死滅することになり、生命の歴史が大きく変わるだろう。安全保障上、これ以上の脅威があるだろうか?
 
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