友人から紹介された江口園子さんのピアノリサイタルに出かけた。県民文化センター(鯉城会館)。手が小さいとかで、プロになるのは諦めてコツコツとピアノ学んできた人らしい。お弟子さんも沢山居るみたいで、500人くらいの客席がほぼ満席であった。60歳近くなって初めてリサリタルとか言っていた。無料である。

      曲目の解説が丁寧でとても良かった。気さくな人柄を感じさせる。演奏であるが、ベートーヴェンの「ロンド op.51,no.2」シューマンの「幻想曲 op.17」、後半ではショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ op.22」という大曲はいずれもやや迫力に欠けた。何かしら意味的なまとまりが感じられない。しかし、リストがショパンの歌曲をピアノ曲に編曲した「6つのポーランドの歌より op.74」、ヒナステラの「アルゼンチン舞曲集 op.2」は素晴らしかった。アンコールのメンデルスゾーン「ヴェニスのゴンドラの歌」、ショパン「子犬のワルツ」も良かった。技術も確かで歌心もある。ヒナステラは知らなかったが、アルゼンチンの現代作曲家で、面白い曲だった。考えてみると、ロマン派の大曲というのは、作曲された当時には作曲者の思い込みがあったのかもしれないが、それを首尾一貫した曲の解釈によって聴衆を惹きこむことは本来非常に難しいことなのだろう。まして、ピアノというどちらかというと単調な音色の楽器のソロである。どうしても、まとまりがなくだらだらと長いような印象になってしまう。それほど、現代という時代からかけ離れてしまったという事なのかもしれない。
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