2017.09.12
      オリエンタルホテル3Fチャペルでの「高瀬アキmeets坂田明」を聴きに行って来た。10数年前だったか、宇都宮の図書館で見つけて以来、高瀬アキはセロニアス・モンク→エリック・ドルフィの血筋を引き継いだ人のように思って、いつか生演奏を聴きたいと思っていた。9月の初めから日本に来ていて面白い公演をやったらしいが、知らなかった。この間中国新聞でこの最後の余興みたいな公演を知ったのである。30名ばかりの観客は何となく僕なんかと御同輩と言う感じ。まあ、恰好を気にしない高齢者。どうも坂田明の同級生が沢山来たようである。それと、ピアニストかも、と思われる女性が数名である。

      お互いに3曲位づつ提供してぶっつけ本番である。坂田明は日本語のリズムをそのまま取り込んだ発想で、相変わらずのスタイルであるが、高瀬アキは引出しが豊富だから、いかようにでも対応する、という感じで、そのイマジネーションには驚くしかない。ピアノの上に覆いかぶさって、左手で弦を直接弾きながら、右手で鍵盤を叩くというような技も見せてくれた。久しぶりのフリージャズのリズムに浸されて満足した。これは、何というか、自然音としての人間とでもいう感じ。要するに迸(ほとばしる)音と身体の律動。

      曲名は殆ど忘れてしまった。坂田の曲では「狼出たぞ、、、と」、「A Good for Nothing」、アンコールの「赤とんぼ」、まあ印象で言えば「天才バカボンのパパ」をイメージすればよい。高瀬の曲では「さくら」と「マイ・カリプソ」が記憶に残ったが、演奏は成り行き次第で始めと終わりが別の曲になったりもしたので、関係ない。「さくら」は桜の不気味さを音楽にしようとしたということである。坂田明の大ナタを振るうようなメロディーが高瀬アキに引き継がれると、細かく分割されていって、最後に良く知られた旋律(名前が出てこない)が浮かび上がってきて終わる。テーマというのが、この旋律のコード進行だった、ということかもしれない。また、「子供たちと一緒にやってうまく行った」というリズム遊びをやってみた。一行の最後の「だ」で高瀬アキがポーズを取る。繰り返していくと次第にフリージャズのリズムに乗ってくる。David Murrayとの最新CD「CHERRY-SAKURA」(2017年度2期ドイツ批評家レコード賞受賞)を買って、サインしてもらった。
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