YMCA国際文化ホールで「高橋アキ・リサイタル」を聴いた。ホールは地下にあって、側面が全てレンガである。天井は低い。全部で400座席くらいだろうか?後部は高くなっているので、天井までが一般住宅くらいになる。最初の案内によると後部座席の方が音響が良いらしい。客席は6割位埋まった。今回の公演は福山の「ジャズ大衆舎」というグループと広島の「耳の空」が協同で企画したらしい。

      前半が広島側からのリクエストで、サティの「ノクテュルヌno.3,4,5」、ケージの「In a Landscape」、「Summer(1947)」、Morton Feldman という人の 「Extensions 3(1953)」。うーん、どうなんだろう?静かで、難しい曲ばかりである。よく判らなかった。演奏はそれほど細かい表情に拘らない感じで、その点ではお兄さんの高橋悠二に似ている。でもまあ、Summer なんかは想像力を羽ばたかせれば何かが見えそうだし、Ectensions にも独特の緊張感だけは感じられた。僕が朝から眠かったせいもあるだろう。

      後半は福山側からのリクエストでシューベルトの21番変ロ長調(遺作)であった。前半では聴くのに苦労したので、こういう和声でちゃんと支えられた音楽を聴くと何となく安心するのだが、それもあまり長くは続かない。楽想はこれといった計画性もなく発展もなく、とっさの思い付きのように転々と手を変え品を変えて繰り返される。ああ、なるほどと感心している間は良かったのだが、あまりに長いので第一楽章が終わってほっとすると、そうだった。まだあったのだ、と思う。やはりこういう音楽は付き合いきれない感じがする。3連符があまり綺麗でないなあ、わざとなのだろうか、とか、欠点ばかりが耳に障る。アンコールではサティの「ジムノペディ」を弾いて、これは表情豊かで、聴き易い感じ。そうだった、僕の高橋アキのイメージはこれだったと思い出す。でもお兄さんの演奏にあった批評性(音楽への皮肉)のようなものが無い事に改めて気付いた。つくづく、ピアノという楽器は難しいと思った。

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