フルートフェスティバル参加記録(ちらし
4月7日(日):
      アステールプラザに行ってフルートオーケストラの練習に参加。大代先生自らが指導して、全曲をざっとさらった。プロの入ってくる曲、「ラデツキー・ファンタジー」と「サウンド・オブ・ミュージック」では難しいところはプロに任せて省略しても良い、ということだった。それよりも速度感やスィング的なリズムをよく練習すべし、ということである。楽譜に音符が2つ並んでいる処をディジリとか言って、プロが上を吹いてアマが下を吹く、ということであった。時間をかけたのはアマだけで演奏する3曲、「踊りあかそう」、「軍隊行進曲」、「シンコペイティド・クロック」であった。残り3曲、「狩のポルカ」、「バッハのアリア」、「川の流れのように」、はアンコール曲であるが、やらなかった。

      最初は緊張していたのと、部屋が広くて音がよく判らなくて、まともに音が出なかったが、大沢先生が準備としてヘ長調の音階をゆっくり吹かせてくれて落ち着いた。腹式呼吸の練習だそうで、一音づつトゥ、トゥ、トゥ、トゥーーーとやる。壁に向かって息を投げ出すように、ということである。それでも音は出たり出なかったり。そもそも周囲の音に紛れてなかなか自分の音が判らないから、無意識のフィードバック制御が成り立たない。各パート毎に音合わせをしたが、パート3が合わない。大沢先生は数人ずつ合わせながら絞り込んで、フルートの頭部菅を出し入れするように指導していた。音程は長い音でキチンと合わさないといけない。オーケストラの習慣として、右側の人に合わせていく。前方の人にも合わせる。そうするとコンマスに合うことになる。人数は50人位であった。結構オジサンも居れば若い男も居た。女性は9割位であるが、高校生からオバサンまでこれも年齢幅がある。初めての人は4〜5人であった。隣に座った可愛い高校生(?)もそうで、緊張している、と言っていた。男の人達は何となく自信がありそうな感じであった。緊張のせいか手に汗をかいて困った。正に冷や汗である。べとべとして指がすべる。ハンカチが欠かせない。

4月14日(日):
      アステール・プラザ大練習場で2回目のフルート練習。今日も大代先生である。始める前に横隔膜の運動としてFdurの音階にしたがって、ふっふっふふうううううとやる。今回は半音移動による指の訓練もやった。アマチュアだけの合奏の3曲、「踊り明かそう」、「軍隊行進曲」、「シンコペーティド・クロック」だけをやった。いろいろと細かい強弱や音程の調整。速いパッセージでの拍の保持。結構疲れた。帰りは平和公園からバスで帰った。歩いていると先ほどの女子高校生が自転車で追い越して行った。

4月21日(日):
      今日の練習は横川駅近くの西区文化センターである。表のドアが9時まで開かないので近くの公園で待っていたら5分位前に開いた。練習場はちょっと狭い。今日は前回の復習と「ラデツキー・ファンタジー」である。これはなかなか速くて大変そうである。

      11時に終わって、CFF(中国フルート友の会)の総会である。総会とは言っても役員がほとんどで僕のような一般会員は少ない。終わった後弁当が出て、皆とロビーで食べた。大代先生の前になったので、いろいろな話を聞いた。5月に行われるエリザベト音大の学園祭にランチを出すらしく、もう退官したのに、学生よりも熱心に料理を考えたり、チケットを売ったりしている。隣には、ヤマハの講師をやっている人が来て、どこかで見たことがある、と言われた。まあ白髪だし、印象に残っていたのだろう。もう一人の隣の人はアルトフルートを吹いているベテランで”先生”と呼ばれていたから多分音大の先生なのだろう。総会の出席者が余りに少ないので、規約には出席者数の規定が無いのか?と聞いていた。大代先生によると、作らなかったということである。法人化すると厳しいのでそうしなくてはならず、委任状を集めるのに苦労するということである。会員は300名弱だそうで、法人化することもないだろう。ただ、繰越金が増えると税務署に対して多少気にしなくてはならないということであった。

4月28日(日):
      今日の練習は休んでいる人も居たようで、ちょっと少なかった。アンコールの曲、「川の流れのように」、「バッハのアリア」、「狩のポルカ」をやった。「狩のポルカ」はとてもテンポが速くて、拍の勘定についていけない感じである。前半の繰り返しの前に4小節前奏が付いていて、最後にD.C.で帰るときにその前奏まで帰る。そりゃそうだな、と後で気づいた。とにかく繰り返しがややこしい。素人専用の曲は復習の感じ。最後に「ラデツキー・ファンタジー」をやって、難しいところの省略方法を決めてくれた。これもまた速い。ただ、中間部は遅くなるようで、助かった。連休前とかで、11時半に終わった。連休明けはいよいよ音楽大学の学生が加わっての合同練習である。

5月12日(日):
      フルート合奏練習。今日はプロと音大の学生達(小オケ)との合同ということであったが、10時半からということで、それまでは、いつもの通り素人のオケ(大オケ)の3曲をみっちりとやった。これはまあ何とかなりそうである。

      休憩してから、席を入れ替えて小オケの人達が入ってきた。最初は「ラデツキー・ファンタジー」であるが、大分速くなっていたので、ところどころ抜けてしまった。走狗のようなところは何となく吹いているが正確かどうか良くわからない。まあ何も言われないのでこんなものなのかもしれない。中間部を過ぎると急に速くなる。最後はタンギングが追いつかないで繋がってしまう。まあ、更なる訓練が必要である。

      次が「サウンド・オブ・ミュージック」であるが、これが大問題で、テンポの変化が激しくて対応できない。何回もやれば判ってくるのだが、時間がないのであまりやれない。大体が、楽譜にそのことがきちんと書いてないし、編曲も新しいのでインターネットで聴いてみる事もできない。(後で探したら見つかった。)指揮を見ながら合わせて吹けるまでになればよいのだろうが、そうも行かない。最後まで残りそうである。

      「バッハのアリア」は息継ぎの場所が難しい。切らないようにすると結構しんどいので途中で判らないように休みなさい、という指示があった。今回はインターネットで調べて準備した「狩のポルカ」が楽だった。僕の想定練習の速度で間に合ったから。まあ判ってみれば結構単純な曲だし。「川の流れのように」は転調でフラットが5個も付いている最低音Cからの音階部分が速いので、大オケの人は殆ど吹かなかった。そんなに難しくないから勇気を持って、と言われた。

5月19日(日):
      雨。昨日と今日はエリザベト音大の祭りということであろうか、大代先生は来なくて代わりに川本眞理江先生が来てくれた。なかなか丁寧で勉強になった。指揮も判りやすい。大オケだけでやるとまあお休みの人も多いせいか結構誰も吹かない、という部分も出てきて、1人なので心配になって途中で吹くのを止めたりする。なかなか前途多難という感じである。

      「サウンド・オブ・ミュージック」は結構訂正が入った。低い音とか、長い休みの後とかは出遅れ勝ちになる、ということで、ああそうかもしれない、と思って意識する。最初の音の指を準備しておかないと出遅れるとか、音を小さくするときは弱くなるのではなくて、姿勢を正して音程を保つようにする、とか。「軍隊行進曲」はキビキビと。シューベルトは突然の転調に注意。「シンコペーティド・クロック」はジャズ風に。「踊り明かそう」は明るく歌う。3曲がそれぞれ異なる雰囲気なので気分をコントロールする。吹いている方としては気分まで判るのかなあ、とも思うのだが、指揮台に立つと敏感に察知できるようである。でもまあ、今日の収穫としては僕くらいのレベルの人も多い、ということであった。

5月26日(日):
      今日は本番での指揮者の白石先生が来られたので、殆どの人が出席していたようである。テンポや間の採り方などかなり変わっていて戸惑った。振りも最初がおもむろに入るのでつい早く入りすぎてしまう。客を意識した変更が目立った。フルートを構えたり収めたりするタイミングを合わせる、とか、客席の側を向くとか、胸から上を見せるように譜面台を下げるとか、バスフルート群を中央後部に固めるとか。。。確かに、音楽というのは聴く人の心に伝わって初めて成立する「出来事」なのである。でも、白石先生はやや気分屋の感じで、2拍で振ったり4拍で振ったりするので、テンポを間違えたりしやすい。慣れるまで大変である。「サウンド・オブ・ミュージック」は序奏が速いので付いていけなかった。その後のトリル伴奏が急に遅くなる。譜面も1オクターブ下げることになった。ラデツキーの最後は滅茶苦茶に速くなってタンギングが間に合わない。「踊り明かそう」も大分速くなった上に2ndの最初に3rdの吹く音が追加された。「軍隊行進曲」は間も入れて少しお洒落な感じにするようである。全8曲を一通りやった。午後は小オケだけの2曲をやるようである。

5月31日(金):
      今日の練習は夜、東区民文化センターである。狭い。音出しもなく始まったので最初は音が出なかった。「ラデツキー・ファンタジー」は速すぎる、ということに尽きる。入り損ねると途中から入れない。「サウンド・オブ・ミュージック」も最初のところが付いていけない。さんざんであった。アンコールの曲は何とかなりそうである。今日はソプラノの小林良子さんが入って前で歌ってくれた。囁くようなしゃべり方をするとても魅力的で美しい人であった。フルートの音が大きすぎて歌は聞こえなかった。マイクを使うそうである。大オケの3曲はまあまあ付いていけたので何とかなるだろう。オニギリを持っていったのだがとても食べる暇がなかったので、帰ってから食べた。

6月1日(土):
      今日は右腕の筋肉痛があるので、あまり練習は出来ない。午後、一寝入りしてから、雨の中、アステール・プラザまで出かけた。2階の多目的ホールである。パーカッションもソプラノも入って大掛かりになってきた。大代先生も出演し始めた。「サウンド・オブ・ミュージック」のテンポの急激な変化の部分を多少丁寧にやってくれたので、大分判ってきた。それでも最初のところはうまく付いていけない。「ラデツキー・ファンタジー」はまた最初の入りができなかった。2回目は行けた。最後も速すぎる。でもまあ、白石先生はお構いなしである。この曲は白石先生がラデツキー行進曲をもじって貰うように柴田典子さんに作曲を委嘱したものである。最初の景気付けということであるが、僕にとっては自信を失わせるような曲である。帰りの電車で大オケのメンバーを見かけたような気がする。混んでいたので見失った。僕は土橋で江波線からのりかえたのだが、その時には乗っていたから、宇品線の方に乗って紙屋町で乗り換えたのだろうか?

6月2日(日):
      いよいよ本番である。まだ雨が止まない。小雨だが。早めにと、8時半の電車で広島駅に向かって、新幹線口で昼食用の助六寿司を買った。丁度白石先生も買っていた。舞台ではシャキとしているが、やはり高齢という感じである。付いたら皆もう殆ど来ていた。持参した譜面台を舞台直下に供出した。舞台上では小オケの面々があれこれと椅子やら集めた譜面台やらお立ち台やらを配置している。入場のところから始めるので、楽屋から廊下まで席順に並ぶのに結構時間がかかった。ゲネプロは概して練習よりはうまく行った。皆、結構学習している。大オケの時は左が高校生で、元気の良い雑音が良く聞こえた。フルートの音は結構端から出るものだと気づいた次第である。また右側の人の肩に僕のフルートが当たった。ちょっと位置調整しなくては。指揮には多少慣れてきた。

      小オケの曲を初めて聴いた。「ウィーンの風」はなかなかお洒落な感じである。「ホルストの惑星からのジュピター」はフルートだけでやると音色が単調かなあ、と思っていたが、バスフルートとピッコロの音色をうまく使って変化を出していた。ただ、演奏の方はギクシャクしていて、やり直しが出ていた。でもまあ全体に順調で、お昼休みも長く取れた。男性控え室は2階の練習室である。バレーのバーと鏡があった。椅子がなかったので床に座って食べていたら、Kさんが来て椅子くらいあるだろう、ということで物置の鍵を開けて椅子を出した。男性は7名である。2人は高校生。2人は先生と呼ばれているから、多分音楽の先生なのだろう。皆、音出しや練習をした。最後に音合わせ。チューナーを持っている人が1人居て良かった。僕の音は高かった。いつも2mm抜いていて大丈夫なのだが、そこから更に0.5mm位抜いた。
      本番は順調に進んだ。特にあがることもなく、緊張もなく、和気藹々であった。出番を待って並んでいるとき、隣の人が妊娠8ヶ月だということで話が弾んだり、金のフルートを持っているSさんの話しとか、参加しているエリザベト音大エクステンション講座(フルートアンサンブル)の話とか。結局、本番の出来が一番良かったのではないだろうか?でも、僕にとっては「サウンド・オブ・ミュージック」の出だしと「ラデツキー・ファンタジー」の最初と最後はやはり駄目だった。この曲で隣のSさんはさぞ迷惑だったろう。退場の時、舞台直下から家内が「最後の(狩のポルカ)が良かった。」と言ってくれたのを2ndのリーダーの人が「これが最後ね。」と間違えて、「そんな事言わず、来年も宜しく」と言ってくれた。枯木も山の賑わいという感じではあったがそれでも確かに木の一本ではあった。ともあれ、企画運営してくださった皆様に感謝感謝!特に、これだけ多様な演奏会が34回も続いているというのは大沢先生の人脈力に負うところが大きいと思う。


6月5日(水):
      朝、また百日草が倒れているのを発見。直ぐに根切り虫の仕業と判った。周囲を堀り返してやっと見つけた。これで5本くらいやられたと思う。この一帯の百日草がほぼ全滅である。

      今日はのんびりしようと思っていたのだが、家内のかねてからの計画に従って、「山のパン屋 」に行くことになった。義母はデイサービスなので丁度良い。調べると瀬野の先の方の山の中であるが、2号線でそのまま行けばよいので1時間位であろう。まずは義母の忘れ物を届けに五日市まで行って、そこからまた2号バイパスに入った。ここんところ2号線を行ったりきたりしている。それほど混んでいなくて良かった。一昨日は呉方面だったが、今度は東広島方面である。瀬野の先の熊野跡道(174号)に入ったまでは良かったが、そこからの入り口が判らず行き過ぎてしまった。案内標識が見当たらないのである。引き返しながら併走する川にかかった橋を一つ一つ調べていくと見つかった。反対側からしか判らない。そこからは細い山道を何とか車が通れるくらいである。奥深く段々畑が有る中に見つかった。小さな裏山を持ったなかなかの良い眺めの場所にある。清水が沸いて出るようなところに井戸があって、そこからポンプで水をくみ上げて使っている。何でも建設会社を経営していた人がリーマンショックで会社を清算して故郷に帰ってパン屋の修行をして始めたのだそうである。従ってこの山小屋も手作りである。本人は多分パン焼きで忙しいのだろう、奥様と思しき人が店に出ていて、次々とパンを並べていく。既に先客があって、一番良い席に居た。我々もパンを買って席に就いた。パンは暖め直してくれる。テラスに波板の屋根をつけてビニールで周囲を覆って真ん中にストーブがある。なかなか居心地が良い。蚊も居ないようである。ゆっくりして、僕は近くのぼんぼんベッドに寝たりしながら過ごした。ピザトーストが焼きあがったのでみっこちゃんが買ってきて別けて食べた。パン生地そのものは普通である。帰るときに食パンを買おうとしたら既に売り切れていた。最初に買っておくべきだった。

      僕は外の脇道を上に登って、持ってきたヤマハのファイフ(キーの無いプラスチックの横笛)を吹いてみた。あまり響かず、つまらないなあ、と思って降りてきたら家内たちがフルートを吹いたのか、と訊いてきた。物凄く良い音で響いたらしい。実際家内が吹いてみても良く響いてフルートのような感じである。狭いながらも山間に反射して残響がある、ということなのだが、不思議な事に吹いている当人には全く判らない。先日のフルートフェスティバルでも、僕の音は自分にはとても貧弱にしか聞こえなかったが、ホールには響いていたのかもしれない。ふと思い出したのだが、光学でも近接場というのがあった。古典的な波動光学では光を発光体から少なくとも数波長以上離れた遠方での波として考えるが、波長程度以下では指数関数的に急激に減衰する近接場があって、それを使えば、波長以下の解像度での顕微鏡観察が可能になったりする。音の波長は10cmのオーダーだから、吹いている本人にはこの近接場が聞こえていることになる。それに多少はフルート固体音が歯や顎を介して聞こえるだろう。聴衆が聞くのは遠方に伝わる音波であるから、別物であることは間違いない。響きの良い部屋で吹けば反射してきてそれが聞こえるわけだが、ホールではその良い音は演奏者には殆ど帰ってこないということである。練習を響きの良い部屋でやれば自分の音のコントロールが容易であるが、ホールで吹くときにはそのフィードバックが得られないから確信が持てなくなるのは当たり前である。そのときは自信を持って練習の通りに吹き通すしかないのである。でもこれは結構精神力を要する。

      それはともかく、今回白石先生の指導で学んだことは、そういった個人の発する音としての音楽というのは本当の意味での音楽ではない、ということではないか。自分の音が判らなくなったり、付いていけなくなったり間違えたり、そういうことも実を言うとそれほど音楽にとって重要なことではない。最終的に本番でやっと判ったのだが、大切なのは聴いている人たちなのであるから、その人たちの聴く音に対して自分がどう関わるか?ということだけが重要なのである。自分の音は判らなくてもよい。オケ全体の音がどうなっていて、それを自分がどういう風にしたいのか、あるいはどういう風にできるのか、ということを考えればよい。そうすればいつでも落ち着いていられるし、全員がそういう意識で演奏すれば、絶対に良い音楽になるのである。何だか出来ていない人も間違えている人も居て、こんなんで良いのだろうか?と思っていたのだが、白石先生の耳からすれば、そんな個別のことよりも、全体としての音楽的な意味が表現されることの方が重要であって、皆がそのことを理解して努力することが第一優先事だったのである。そういう意味で、楽音以外の演出も音楽に含まれるということなのである。フルートの風音や多少のミスは消えてしまい、残るのはホール全体に響く音であり、それによって動かされる聴衆の心である。音楽は意識下に働きかけるから、人は聴きたい音楽を聴く。それを少しでも提供すればよいのである。多少の雑音はたいした問題ではない。というような事は、実をいうと毎朝の明け方に目が醒める度に考えていて、それで早起きになっていたくらいである。まあ事前練習も含めれば3ヶ月も毎日同じ8曲を練習してきたのだから当然ではあるが、自分の意思とは関係なくその音楽が頭の中に鳴っていて、それについて考えを巡らしてしまう、というのは、音楽が脳の深層に染み込むことの証拠でもある。
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