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ラグナロク

フェンリル狼に食べられるオージン

 

この絵は、フェンリル狼に噛まれているオージンを描いていると解釈されています(Munch, 125)。

同様のモチーフは、スウェーデンのオェステル・ヨェートランド州のレドベリにあるルーン絵画石碑にも見られ、よく両者は比較されております。

マン島にあるルーン絵画石碑よりマグヌス・ペーテルセンの写生画。(Illustration by Magnus Petersen)

(P. A. Munch, Norrøne gude-og heltesagn. Rev. Jørgen Haavardsholm. Oslo: Universitetsforlaget, 1996, 125).

『巫女の予言』53節には、オージンがフェンリス狼と戦い、殺されることが語られています。スノッリの『エッダ』51章、『ヴァフスルーズニルの言葉』53節には、オージンはフェンリス狼に飲み込まれる、と書かれています。以上の記述にはオージンの足がフェンリス狼に噛まれるというくだりはありません。

したがって、これはスノッリの『エッダ』51章に続けて語られる、ヴィーザル(オージンの息子)が、フェンリル狼の下顎に片方の足をかけ、上顎に片手をかけて、口を裂くという記述を図説しているのではないかという解釈もできるでしょう。『ヴァフスルーズニルの言葉』53節にも、ヴィーザルが狼の顎を引き裂くことが記されています。

実際、マン島のペーテルセンの絵をよく見ると、足を下顎に、片手を上顎にかけているようにも見えます。これはよく言われるように、オージンのことを描いたのではなく、ヴィーザルのことを描いたものかもしれません。

とは申せ、この人物の肩には鴉が載っており、また狼には槍が突き刺さっています。ですから、やはりこれはオージンだという解釈の方が有効だとは思います。

あるいは、スノッリの記述以外に、オージンが脚を喰いちぎられるという神話が伝播していたのかもしれません。ヴィーザルがそれほど広く人々に信仰されていたという証拠があまり見ないからです。オージン信仰がどのように伝わっていたのか、ということを考える縁となりますね。

 

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