ALUBUMS


  • 「ODELAY」(mvcg-184)
  •  いやはや、すごい騒ぎになってますね(「DEVIL'S HAIRCUT」、J-WAVEのHOT100でNo.1を獲得、ハハ)。ここまで絶賛されてると、逆に疑いたくもなってくるってもんです。で、聴いてみました。最初の内は、「なんか洗練されすぎだなぁ、もうちっと刺々しくならんもんかなぁ。」と思ってました。たとえば「Loser」。この曲は、今でもなお有効。この曲をかけて、最初のスライド(6弦をDに落とすんだって)が流れてくると、今でも僕は笑いがこみ上げてくる。そして、最後の「I don't believe him」のところでまた笑う。何故この曲はこんなにも飽きないのか。たぶん「Pulp Fiction」などと同じで、どん底にいながら、まだ底なしにみえる虚無にラリって笑っているようなこの曲の佇まいのせいなのだろう。で、このアルバムにはそうした感覚が欠けているような気がしたのだ。笑い声に例えれば「でへへ」から「あはは」に変わった感じ。でも何度か聴くうちに(このことだけでもう充分なのかもしれないけど)、聴いてて楽しくなってきた。それは、馴れてきたとか、判ってきたためではなく、単純にグルーヴ優先の聴き方に自然に変わっていったためだと思う。実際、Beckは、たぶんもうどん底にはいないのだ。そのことは、 例えば彼のインタヴューが時が経るにつれてまともになっていったことからも伺い知れる。そしてそのことはもちろん、絶対に悪いことではない。これからもBeckは、ちょうどBeastie Boysなどと同じような感覚をもった、グルーヴィな傑作を僕たちに届けてくれるのだろう。
     最後に、この「ODELAY」のジャケットは最高だ。
  • 「STEREOPATHETIC SOULMANURE」(FLIP60)
  •  「MELLOW GOLD」でメジャー・デビューしたBECK。あの作品だけでも充分、訳の分からん奴だったが、そこにさらに輪をかけて訳のわからんモノだったのが、このインディーから発売されたアルバムである。ノイズの応酬になったと思ったら、次の曲になったらメッチャ純朴なカントリー(多分、歌詞まだ未確認)になってたり、ブルースハープ吹き語りというリトル・ウォルターみたいな(ホントか?)曲もあれば、車道の横でオッサンがただ歌ってるだけの曲があったりする。ここには深い意味はない(批評性がないわけではない。ベック本人がいうところの「必要以上に〜過ぎる」そこいらの音楽に対する反発は存分に感じられる)。ただ、おもしれぇとおもったことをやってみただけなんだろう。そしてそれこそが、現在までのベックに貫かれている姿勢なのだろうと思う。
     このアルバムで僕が一番好きなのは「NO MONEY NO HONEY」だ。イントロは、なんかできそこないのニュー・オーダーみたいなエレ・ポップなのだが、いきなり音質が墜落して、海岸で録っているらしく、ずっと「ザザー」という波の音がしている中で、二人のオッサンが「女もいなけりゃ、金もない〜」なんてデュエットしてるのだ。最後の二人の会話がまたいいのだが、それは聴いてのお楽しみ。このアルバムの持っている、「思いついたこと、おもしれぇと思ったことは、誰にも気兼ねしないで実行する」という自由さ、それはベック本人の「自分自身でいることが一番ラディカルなんだ」という言葉が示すように、僕らの混乱した思考、一つの方向に押し込められることのない気まぐれな思考そのままこそが持ちうる、生々しさと定型からの解放性を備えている。だから、みんなBECKが好きなんだよね。あ、そういえばこのCDは、ものによっては最後の部分に凄いノイズの応酬が長時間にわたって、えんえんと繰り返されるボーナス・トラックが収録されているのだが、僕のには入ってない。誰かとっかえない?+400円くらいで。
  • 「ONE FOOT IN THE GRAVE」(KLP28)
  •  Kレーベルからなんでか唐突にリリースされた、ほとんど全編アコギによる弾き語りアルバム。ここでのベックは、彼独特の「わりぃ、昨日まで熱が37度5分あったんだよ」ってな感じのちょっと鼻づまりの声で、まるで「あぁ、今日はなんもいいことなかったなぁ」って一日に溜まった鬱屈を溜息混じりに吐き出しているように、ダウナーな感覚を持つメロディーをボソボソと呟くようになぞっていく。ちょっとパンキッシュな曲もあるのだが、それもなぜか無理に虚勢を張ってるような、自分で自分を盛り上げようとしてそれに失敗しているような、奇妙に空々しい印象を与える。さえない日常の老廃物の山に囲まれ、足の踏み場もなくて動けなくなってる自分の姿に重なる。ここに収められている曲群には、吐き出されなければならない僕らの溜息と同じだけの、歌われる必然性があるのだ。このアルバムを聴いていると、つい目が据わってしまい、どうにも疲れ切った夜に自分の部屋でへたり込んでいるような感覚にいつも陥ってしまう。もし胸がいっぱいになったら、今は溜息をついとけばいい。もし疲れ切っているなら、とりあえずはへたり込んどけばいい。どうせ時が来れば、その場所から出て行かなければならないのだから。ベックのちょうどそんな瞬間を捉えた、おそらく彼の作品の中では一番統一性を持った(つまり彼独特のバランス感覚をとっぱらった)、心の中の狭いが深い狭間にはまりこんだようなアルバムである。
    SINGLES
  • 「LOSER」(MVCG-13016)
  • 1.LOSER
    2.TOTALLY CONFUSED
    3.CORVETTE BUMMER
    4.MTV MAKES ME WANT TO SMOKE CRACK

     たしか94年2月頃、カートがまだこの世を去る前に、僕はこのシングルをラジオで聴いたと思う。このシングルが、我々に、ロックに「ベック」という新たな分岐点が訪れたことを教えてくれた。当時のロック・シーンはほとんど「グランジ一色」。破滅を気取った野郎ばっかりが、どん詰まりで広がりのない閉鎖的な音楽を垂れ流していた時代である。もちろんペイヴメントみたいな例外もいたんだけど、シーン全体としては「IN UTERO」という、あまりにも素晴らしいが暗い、最終通達のようなアルバムが出ていたにもかかわらず(もっとも「この先行き止まり」が本当の意味で判ったのは、あの事件からなんだけど)、まだ「苦悩」を礼賛するような雰囲気があった。それに退屈していた僕にとって、このシングルはあまりにも画期的だったのだ。まず「LOSER」が凄かった。インパクトありすぎだった。フォークとヒップ・ホップの合体なんて、当時、少なくとも僕にとっては異常に斬新だったのだ。「俺は負け犬だ 殺っちまったらどうなんだ」なんて歌詞がシリアスに受けとめられた時期もあったが、今聴くと非常にユーモラスに響いているのがわかる。また、ヴィデオクリップも強力だった。僕は、あれが生涯ベスト1のクリップだと断言できる。このシングルは、ダルで落ち込んだ時のつぶやきみたいな、名曲「TOTALLY CONFUSED」も収録しているが、さらに僕をぶっ飛ばしたのが「MTV MAKES ME WANT TO SMOKE CRACK」である。このあんまりなタイトルをもつ曲は、最初はアコギがじゃかじゃか鳴って、割とオーソドックスに始まるのだが、途中からなぜかシナトラみたいに(みたいな?)ジャズィになり、「YEAH! ラリリでもしてねぇと、MTVなんか見てらんねぇよ〜」なんて歌ってるのだ。笑う。この途方もなくインパクトのあったシングルとヴィデオ、アルバム「MELLOW GOLD」、さらに言えば「STEREOPATHETIC SOUL MANURE」により、初期ベックのイメージは、いみじくも「MELLOW GOLD」のライナーで述べられているように、「どうでもいいや、へへへへ」に定着した。だから、洗練されてあからさまな格好良さを持った「ODELAY」に少しだけ違和感を覚えてしまったのだ(でも、今ではもう大好きなアルバムになった。あのアルバムはホント、聴けば聴くほどいい)。ちなみに補足を。このシングル、クレジットの年代が滅茶苦茶である。「loser」は1982年、4は1988年、2・3はなんと1997年(笑)録音になっている。いいなぁ、やっぱこいつは。


  • 「WHERE IT'S AT」(GFSTD22156)
  • 1.WHERE IT'S AT(EDIT)
    2.WHERE IT'S AT(REMIX BY MARIO C. AND MICKY P.)
    3.BONUS BEATS

     「odeley」からの米ファースト・シングル。1曲目はアルバム・ヴァージョンを編集したもの。2曲目は昨今のビースティーの片腕、マリオ・カルダートJr.のリミックス。原曲をよりソリッドな今様のヒップ・ホップとして聴かせている。原曲よりもいい、と言うつもりはないが、かなりかっこいい。オーラスはbonus beatsと銘打たれているように、ブレイク・ビーツを詰め込んでいるのだが、ドラムだけでもばっちりいけてて聴いてて楽しい。でも、djユースとして便利なのかどうかは知らん。そういやぁ、この間、「loser」の輸入盤シングルで聴いたことのない曲が入ってるのを見つけて、喜んで買ってきて、家に帰ってケースを開けてみたら、何も入ってなかった。びっくりして目玉が飛び出しちゃったんで、はめ直すのに苦労しました。


  • 「DEVIL'S HAIRCUT」(GFSXD 22183)
  • 1.DEVIL'S HAIRCUT(LP VERSION)
    2.DEVIL'S HAIRCUT(REMIX BY NOEL GALLAGHER)
    3.GROOVY SUNDAY(REMIX BY MIKE SIMPSON)
    4.TROUBLE ALL MY DAYS

     「Odelay」の中でもとびきりのコマーシャル・ポテンシャリティを持った、欧米でのセカンドシングル。何故か日本と欧米では、「Where it's at」と「Devil's haircut」のカットの順番が逆になった。でもジャケは同じ(トリミングが違いますが)。さらに1曲目はアルバムと同じ。で、2曲目がかねてから噂にあった、OasisのNoel Gallagherがリミックスしたもの。ノエル本人による後付けのギターが全編に渡って大フィーチャーされている。またそのギターが、グランジとサイケの間を行ったり来たりしているような感じで、原曲のヒップ・ホップな残像と相まって、ちょっと釈然としない感じが残る。元曲の肩の力の抜けた、方向性や目標を持たず漂っているような佇まいに、無理矢理ロック的なダイナミズムというか抑揚を押し付けたような感じ。それは多分失敗したわけではなくて、このぎこちない不安定な感じそのものを、Noelは狙っていたのかも知れない。ロックとヒップホップ(と言い切っちゃまずいかも知れないが)が、融合しているわけでも、合体しているわけでもなく、ただ共存している。3曲目は、曲名は違うが、やはり「DEVIL'S HAIRCUT」のリミックス。リミキサー(と言うんでしょうか?)はDust Brothersの片割れ(ちなみにChemical Brothersは、昔Dust brothersと言っていたそうですが、この人達とは別人です)。こっちは逆に、よりヒップホップ路線を押し進めたような仕上がり。4曲目は、括弧して「イギリスでは未発表」と書いてあるが、日本ではシングル「Pay no mind」に収録。弦の張りがゆるゆる、チューニングめちゃめちゃ、音質さいあくの、ワンコード(?)弾き語りどすえ。この他にUS盤、さらには日本盤「Where it's at」はパッと見た感じでは、全部カップリングが違いました。今はちょっと厳しいので、もうちょっとしたら買います。


  • 「DEVIL'S HAIRCUT」(GFSTD 22183)
  • 1.DEVIL'S HAIRCUT(LP VERSION)
    2.DARK AND LOVELY(REMIX BY DUST BROTHERS)
    3.AMERICAN WASTELAND(REMIX BY MICKEY P.)
    4..000.000

     これはUS盤の方のシングル。1曲目は言うことなし。2曲目は曲名は違いますが、やはり「DEVIL'S HAIRCUT」のremix。プロデューサーで、この曲の共作者でもあるDust Brothersによるものだが、少し病的な不協和音を使ったりしていて、居心地の悪さバリバリの仕上がり。最後の部分はダンサンブルでかっこいいけど、全体的にはちょっとその場しのぎかな。リミックスの方向性が見えにくい。で、お次が曲名は違いまするがやはり「DEVIL'S HAIRCUT」のremix。これのリミキサー、Micky P.という人に僕は見覚えがないんだけど、とても面白いヴァージョンに仕上がっている。というのも、元曲から受け継いでるのはベックのラップだけで、バックトラックは思いきりなハードコア・パンク。しかもこいつがメチャハマっていて、爆笑もんです。最後が未発表曲。ベックならではのビザールな暗黒世界が窺える、と書いてもいいんだけど、もうちょっとユーモア感覚が欲しいな。すこし重苦しく感じる。


    Links

  • the BECK web!!
  • 1柳マサヤのアジト---ライヴ・レポートあり。


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