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涯しない声

 

涯しない声、

存在と非存在の割れ目からの

時間と反時間の断点からの

形にならない者たちの涯しない声、

境界の向こう側へ落ち続ける

声にならない無数の声。

 

その声のざわめきの中で、

風化しきった壁画の中で、

厳粛に執り行われる

未知なるものへの唯一の儀式。

空虚の中の

ちりぢりになった化石たちの

一切を拒絶できるかたくなな沈黙。

 

けれど、澱んだ時間の中に偏在している涯しない声が

この遊星のどこにでもある道の上で

虫たちとともにうごめいているのだ。

砕けた時間と砕けた反時間のはざまに

この遊星の多彩な青のざわめきが

ひっきりなしに飲み込まれているのだ。

 

形をとらえようと試み続ける求道者たちの頭上で

かすかな清澄の響きだけが

遊星の上にこだましている。

 

1984.7.19


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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第1詩集『未知なるものへの祭壇で』