交通事故による損害賠償請求権の時効

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2023.1.2mf
弁護士河原崎弘
質問
私は、交差点で、横の狭い道から出てきた車の衝突され、足の骨と肋骨等を骨折し、1月の入院後、6ヶ月通院しました。加害者に治療費だけ払ってもらいました。保険会社と交渉していますが、過失割合でもめ、なかなか示談ができないまま、時間がどんどん経過します。
交通事故による損害賠償請求権は時間が経過すると時効にかかってしまうのでしょうか。
特に後遺症が出た場合、その時効はどうなりますか。
相談者は、日弁連交通事故相談センターで弁護士に相談しました。相談は無料でした。

回答
1. 加害者に対する請求権
担当の弁護士の説明は、以下の通りでした。 2020.4.1施行の民法改正により、次のようになりました。
交通事故における物損による損害賠償請求権は、被害者が、「加害者および損害」を知った時から3年、知らない場合は事故の時から20年で(民法724条)消滅します。
生命又は身体の侵害(人損)による損害賠償請求権については、被害者が「加害者および損害」を知った時から5年で消滅し、知らない場合は事故の時から20年間で消滅します。
刑事の 公訴時効 は別です。
あなたの場合、物損については、事故時から、治療費、休業損害については、それが発生したときから損害賠償請求権は時効期間が進行します。
後遺症については、症状固定時から5年で時効消滅します。
時効の進行を止めるには、加害者から債務を認める念書を書いてもらえば、そこで過去の時効期間は中断し、そこから新たに時効が進行します。
訴えを提起すると、もっと強力に時効は中断します。

2.保険会社に対する権利
自賠責保険の被害者請求に関しては、傷害、死亡の損害賠償請求権は、原則として事故時から3年、後遺症による損害賠償請求権は、症状固定時から3年で時効になります。自動車損害賠償保障法改正前、すなわち、2010年3月31日以前発生の事故については、保険金等の請求権の時効が2年でした。
自賠責保険の損害賠償請求権については、保険会社に対して 「時効中断承認申請書 (用紙は保険会社にあります)」を提出して、承認して認してもらうことにより簡単に中断できます。
気を付けるべきことは、後遺症認定が必要な場合は、自賠責保険請求権が時効消滅する前に保険会社に損害賠償請求をすることです。そこで、自動車保険料率算定会が 後遺症等級 について調査します。この期間を経過すると 後遺症等級を認定 してもらう機会を失うことになります。

関連質問
任意保険は時効があるのでしょうか。
経過は、概略、下記の通りです。
私は、昨年事故に遭い、傷害を負いました。 それから 1 年 2 か月ほど過ぎています。示談等まったく話にならなかったので、調停申立をしましたが、時間の無駄でした。請求金額は 190 万円弱で自賠責の範囲を超えてます。
訴を提起したいのですが、なかなか時間が取れず時間だけが過ぎて、損害賠償請求の時効について不安がよぎっています。

回答
任意保険の契約者(通常、加害者)は、原則として、事故後60日以内に保険会社に事故の発生につき通知する義務があります。判決の確定とか、示談の成立など、保険金支払い事由が発生した場合は、 3 年以内に保険金を請求する必要があります。
以上は、すべて、保険会社が決めた約款に規定されています。
しかし、貴方は、被害者ですので、任意保険に関する時効を考える必要はありません。
加害者に対する人損の損害賠償請求権は、前述した通り、5年で時効消滅します。5年以内に訴えを提起すれば大丈夫です。

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