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2016.2.17mf更新
弁護士河原崎弘

サブリースにおける転借人(借主)の権利

相談

私は、会社を経営しています。会社の事務所は、不動産管理会社とのサブリース契約で借りています。
最近、不動産管理会社から、オーナーとの契約が解除されたとの通知があり、その後、オーナーから、明渡を求める通知が来ました。
当社は、サブリース契約であることはわかっていましたが、このような場合、明渡の義務がありますか。裁判をすると負けますか。

回答

顧問の弁護士の説明は次の通りでした。
(保護すべきは転借人)
サブリース契約は、賃貸人(オーナー)が不動産を賃貸し、条件として、賃借人が一括して他に転貸借することを承諾するものである。
サブリースでは、賃借人自身による使用収益を目的とする通常の賃貸借とは異なり、いわゆるデベロッパーなどの事業者(賃借人)が、第三者に転貸して収益を上げる目的の下に、不動産の所有者からその全部又は一部を一括して借り上げ、所有者に対して収益の中から一定の賃料を支払うことを保証することをおおむね共通の内容としています。
学説においては、「サブリースの場合に借地借家法により保護されるべきは、賃借人ではなく、むしろ転借人についてである」とする。例えば、「転貸借を、賃貸人と賃借人から成る共同事業体との間の賃貸借」と見たり、あるいは「賃貸人から賃貸権限を委譲された賃借人との間の賃貸借と見る」などの法律構成によって、基礎となる賃貸借が期間満了や債務不履行解除によって終了しても、転借人の使用収益権を保護すべきであるとする見解が多く見られます。

(通常の転貸借の場合)
転貸借契約は、賃貸借契約の上に乗っています。基礎である賃貸借契約が消滅すると、転貸借契約も終了します。
しかし、賃貸借と転貸借は別個の契約であり、賃貸借が消滅すれば転貸借も当然に消滅するというわけではなく、賃貸人の承諾を得て適法な転貸借が成立した以上は、転借人の利益も保護する必要性はあります。
そこで、判例は、賃貸借の合意解除の場合は、信義則上、原則として転借人に対抗できないとしています(最高裁昭62・3・24判決、判例タイムズ653−85)。また、抵当権の目的である地上権を放棄しても抵当権者に対抗することができないので(民法398条)、判例は、同条の趣旨の類推や信義則を根拠として、地上権の放棄や借地契約の合意解除をもって地上建物の抵当権者や賃借人に対抗することができないとしています。

(基礎である賃貸借の解除理由)
あなたの場合、基礎である賃貸借が解除された理由がわかりません。通常、次の解除理由が考えられます。
  1. 賃借人の債務不履行、
  2. 賃借人の更新拒絶、
  3. 賃貸人と賃借人の合意解除
解除理由が、賃借人の債務不履行の場合は、あなたの会社に明渡義務がある可能性が高く、合意解除の場合は、あなたの会社に明渡義務はありません(民法398条)。
賃借人の更新拒絶の場合には、微妙な問題でした。しかし、更新拒絶の場合、転借人に明渡義務がないとの最高裁の判例がありますので、あなたの会社が勝つでしょう(明渡義務はない)。

判決




被上告人(オーナー=賃貸人) → 訴外会社(賃借人=転貸人) → 本多(転借人) → 京樽(再転借人)


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