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2014.11.28mf更新

離婚事件で高い弁護士費用(着手金)を請求された

弁護士河原崎弘

相談:弁護士費用(着手金)の返還を請求したい

私は、離婚訴訟(裁判) を、東京に法律事務所を持つ 弁護士に依頼しました。弁護士は、離婚専門と称していました。最初、依頼した弁護士と報酬契約(弁護士に依頼する契約)を締結し、弁護士費用として、着手金140万円(消費税別)、諸経費(印紙、切手、コピー代)5万円、裁判所1回出頭すると日当5万円とし、合計 150万円(内訳、着手金140万円、諸経費5万、第1回出頭日当5万円)を支払いました。
調停では、家庭裁判所が遠隔地だったので、私が出頭しました。 私の年収(給与所得)は、約1300万円、子どもが1人います。
調停は不成立となり、訴えを提起し、弁護士は、3回ほど、裁判所に行きました。その後、妻側が、「私が、現在、女性と交際していることを証明する写真」を、不貞の証拠として提出しました。弁護士は、「交際している女性がいることの説明を受けていない」と言って、怒り、「辞任する」と言い出し、結局、辞任しました。
弁護士は、「私が、有責配偶者 ではないか」と疑ったのです。有責配偶者だと、離婚裁判では負けると考えたようです。私は、離婚事件係争中の異性との交際 は問題があることは理解しています。
最初の着手金が高いので、私が、その理由を尋ねると、弁護士は、「あなたは不動産を持っていたから」と言うのです。 不動産とは自宅のことです。私は、これを、自分で売却しました。家の時価よりも債務が多いので、売却金も手元には残りませんでした。
この着手金は高過ぎませんか。弁護士が勝手に辞任するなら、着手金の一部の返還を請求できませんか。
弁護士の事務所から裁判所までは、往復2時間半ほどです。
相談者は、別の法律事務所の弁護士を訪ねました。

回答:離婚事件の着手金と報酬

相談した弁護士の回答は次のとおりでした。

着手金、報酬

普通、離婚事件の着手金は40万円〜50万円くらいです。経済的給付(慰謝料、財産分与、養育費)が問題となる場合は、若干、これに加算されます。
廃止されましたが、第二東京弁護士会の 報酬会規 (独占禁止法に違反するとの理由で2004年3月31日廃止されたが、廃止後も多くの弁護士が使っています)22条では、 離婚事件の弁護士費用(相場)は、次のようになっています。
  
離婚事件の弁護士費用
手続 着手金報酬
離婚調停事件または離婚交渉事件30万円以上50万円以下30万円以上50万円以下
離婚訴訟事件40万円以上60万円以下40万円以上60万円以下

離婚交渉事件から引き続き離婚調停事件を受任するときの着手金は、前項の規定による離婚調停事件の着手金の額の2分の1とする。

離婚調停事件から引き続き離婚訴訟事件を受任するときの着手金は、第1項の規定による離婚訴訟事件の着手金の額の2分の1とする。

前3項において、財産分与、慰謝料など財産給付を伴うときは、弁護士は、財産給付の実質的な経済的利益の額を基準として、第17 条又は第18条の規定により算定された着手金及び報酬金の額以下の適当妥当な額を加算して請求することができる。

この規定によると、離婚訴訟の通常の着手金は、40万円から60万円です。 自宅が紛争の対象になっているか若干問題です。 自宅(土地、建物)が紛争の対象になっていないなら、自宅の価値を考慮に入れて着手金を決めることは不当でしょう。

そうすると、140万円の着手金は高過ぎるといえます。

日当

報酬会規41条では、弁護士が遠隔地に出かけた場合の日当は、次のようになっています。
半日(往復2時間を越え4時間まで)3万円以上5万円以下
1日(往復4時間を越える場合)5万円以上10万円以下

弁護士の事務所から裁判所まで、往復2時間半ですと、半日分の日当となります。 5万円の日当は、報酬規定の許容範囲内ですが、少し高いと言えます。往復2時間半なら、 日当は、通常は、1万円〜3万円前後が普通でしょう。
しかし、あなたは、着手金140万円、日当は1回5万円を承諾して、報酬契約を締結したので、契約は、有効に成立しています。

だが、依頼者に説明不足があったからと言って、 弁護士がすぐ辞任するのは非常識です。これは(受任者である弁護士に責任がある委任契約の解消ですから)、あなたが着手金の一部を返還請求できる根拠になります。

弁護士は、通常の職業よりも高い倫理水準を求められています。 東京には、東京弁護士会(3581-2201)、第一東京弁護士会(3595-8585)、第二東京弁護士会(3581-2255)の3つの弁護士会があります。 そこで、その弁護士が所属する 弁護士会 を調べ、弁護士に対して、「着手金の一部を返してくれ」との 紛議調停の申立をしてください。所属する弁護士会がわからない場合、日弁連(3580-9841)に電話をすれば、教えてくれます。

着手金の返還を求めて紛議調停の申立

相談者は、8月、弁護士が所属する弁護士会へ紛議調停の申立をしました。
1回目の調停期日において、紛議調停委員(その弁護士会所属の弁護士がなります)は、「依頼者に説明不足があったとしても、弁護士がすぐ辞任した点は問題である」と指摘しました。
2回目の調停期日に、調停委員が、 「弁護士が依頼者(相談者)に着手金の一部40万円を返還する」との調停案を提示しました。調停委員の説得にもかかわらず、弁護士は、調停案を拒否していました。
3回目の調停期日(12月)において、弁護士も、 依頼者も、調停案を承諾し、調停が成立し、相談者は、40万円を返してもらいました。申立してから4か月で、 このケースは解決しました。
この例にあるように、調停委員は、中立であって、弁護士の肩を持つことはありません。

関連相談:離婚事件の弁護士費用が高い

(立派な事務所)
私も、弁護士に離婚事件を依頼しました。妻との間の婚姻費用分担(婚費)(参照、高額所得者用婚姻費用計算機婚姻費用算定表と完全に同じ計算機/弁護士実務)請求の調停(私は相手方)から始まり、離婚判決に至るまでに、既に、弁護士に170万円を支払っています。
最後に、養育費請求の調停があり、これで全て終わりましたが、さらに、報酬として40万円請求されています。
離婚事件としては高過ぎる感じがするのですが、いかがですか。
弁護士は知人の紹介です。 一流の人で、東京のビジネス街にある事務所も立派です。
私は、40歳、年収900万円です。 私は、弁護士と問題は起こしたくありませんが、客観的にはどうでしょうか。

回答:離婚調停は自分で処理すべきであった

養育費調停は、養育費の総額の7割を経済的利益額として計算します(旧報酬会規14条3号)。しかし、養育費は子供の生活費なので、たいていの弁護士は、着手金、報酬とも各20万円前後でしょう。離婚に伴っての養育費の請求なら、弁護士費用では考慮しない場合もあります。40万円の報酬なら、ちょっと高いとの感じはします。
あなたの収入が多くなく、紛争の対象となった資産などの金額も低いので、弁護士費用は少し高いとの印象は受けます。 それでも、通常の費用の2倍弱ほどですし、適正な範囲でしょう。しかも、あなたは、高い弁護士費用負担を承諾して依頼しています。
弁護士費用を安くしたいなら、調停は自分で処理すべきでした。
その弁護士の能力が、真実、高いか、否かは、ここでは議論する必要はありません。あなたは、 一流(との評価のある)の弁護士に頼んだのですから、料金も高いでしょう。ブランドショップと、普通の小売店では、商品の価格は異なります。しかも、事務所の建物も立派なのですから、弁護士は、高い家賃を払っているのでしょう。
あなたは、自分の好みで、そのような事務所を選んで事件を依頼し、自分でも満足しています。弁護士費用が高いことに、不服は言うのはおかしいですよ。

関連相談2:弁護士費用

私(33歳)は、教員をしています。年収は、440万円です。夫も教員で、同じくらいの年収です。子供(2歳)がいます。夫の不貞があり、私から離婚を申出ましたが、夫は承諾せず、「離婚なら、子供の親権は自分が取る」と言います。
私は、弁護士に離婚事件を依頼したいのですが、どのくらいの弁護士費用がかかりますか。

回答:調停は自分で、裁判は弁護士へ依頼

弁護士費用を節約したい場合は、まず、調停は、自分で手続きをして下さい。調停は話し合いですから、自分でできます。そうすれば、弁護士費用は必要ないです。多分、あなたも、弁護士費用を節約できて、満足します。
調停不成立なら、裁判をします。裁判の場合は、弁護士を依頼したほうがいいでしょう。弁護士費用は、基本的に、着手金40万円〜50万円、報酬も40万円〜50万円くらいでしょう。財産請求(財産分与、慰謝料など)があると、これに、若干、加算されます。
親権については、あなたが普通に子供の世話をしているなら、日本では、ほぼ、機械的に母親が親権者に指定されます。

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