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Last update 2015.5.15mf

弁護士の法律相談/離婚裁判で最高裁まで

離婚相談

私(51歳)は、夫(55歳)とは結婚して26年になります。夫は、横暴な性格で、自分の言う通りに私が従わないと、暴力を振るいます。離婚裁判で最高裁まで一度、突き飛ばされ、以来、私は頚椎捻挫の後遺症に悩まされています。夫は、サラリーマンですが、愛人がいる様子です。夫は外泊はしませんが、午前 3 時頃に帰宅することがあります。夫は、「仕事だ」と、言っています。私が出ると、切れる無言電話もあります。
夫は、細かい性格で、 私に家計簿を付けさせ、ときどき、点検します。冷蔵庫の中を点検し文句を言います。
夫は、気に入らないことがあると、「離婚だ。お前が出て行け。この家は売り払う」と、言います。
私は、夫の乱暴で、ねちねちした性格が嫌いで、夫と一緒に居ると、いつ乱暴されるかと脅え、暗い気持ちになります。私は夜も眠れず、体の具合も悪いです。家を出て離婚したいです。
子供が2人(23歳と25歳)おり、2人とも夫を嫌っています。長男は家を出て、1人で暮らしています。
夫の年収は1200万円ほどあります。夫婦の財産としては、4年前に買った自宅(時価1億円位、夫の持分100分の90、私の持分100分の10)と預金(夫名義2000万円位)があります。夫は、株を持っていますが、これは3000万円位あると思いますが、正確にはわかりません。夫はこの他に、郷里の福島に親から相続した不動産を持っています。

関係ありそうな書類をコピーしておく

相談者は弁護士のところに、「家を出て離婚したい」と言って、相談に来ました。
相談者は、ときどき涙を浮かべ、26年間の結婚生活を否定することに未練があるようですが、離婚の決意は固い様子でした。相談者は、裁判で夫と徹底的に戦いたい意思を持っていました。裁判費用は妻の兄が負担することになりました。
弁護士は、家を出るなら、不動産の登記簿謄本、預金通帳、株の売買報告書、夫の給与明細など財産に関係する書類全部のコピーを取るよう勧めました。裁判で慰謝料、財産分与の額を決める証拠になるからです。
妻(相談者)は娘と一緒に家を出て、娘と一緒にアパートを借りました。
妻は弁護士に離婚訴訟を依頼しました。
*暴力対策については (ドメステックバイオレンス) を参照

仮差押

弁護士は、夫が家の名義を変えたり、抵当権を設定することを心配しました。相談者が権利証を持っていても、夫は不動産を処分できます。離婚の申立てを知った夫は、誰かに知恵をつけられ、家の名義を変えたり、処分したりするおそれはあるのです。
弁護士は、これを防止するため、まず不動産を仮差押することにしました。
仮差押は、裁判所に対し申立をします。裁判官によっては、このような仮差押えを認めない人がいます。運が悪く偏屈な裁判官に出会い、仮差押が許可されなくても、時期を変えて再度申立てをするとよいでしょう
仮差押へ手続きでは保証金を供託します。保証金は請求額の約1割から2割くらいです。普通、離婚による慰謝料は300万円から500万円位です。離婚の際の財産分与は、専業主婦の場合は結婚してから夫婦が築いた財産の30%から50%、自営業を手伝う妻および共稼ぎの主婦の場合は50%が標準です。
夫婦が築いた資産は、合計1億5000万円です。この2分の1の7500万円が潜在的な妻の持分です。これから、妻名義の不動産部分1000万円を差引いた6500万円が財産分与請求権です。
弁護士は、財産分与請求権と慰謝料2000万円の合計8500万円を請求し、平成11年7月仮差押えの申立をしました。
裁判所は、保証金を600万円として仮差押えを認めました。保証金は相談者の近親者が用意してくれました。保証金は裁判が終われば返ってきます。自宅にはすぐ仮差押えの登記が付きました。夫は、自宅を売れなくなりました。

離婚調停

仮差押が成功したことを確認し、弁護士は家庭裁判所に、離婚が成立するまでの婚姻費用および離婚、財産分与、慰謝料を請求する調停の申立をしました。
調停の管轄裁判所は通常相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(一覧)です(家事事件手続法245条1項)。しかし、夫は勤務先が都内でしたので、都内の裁判所が都合よく、弁護士も同じ考えでした。
弁護士は、夫の同意( 管轄の合意 )をとって、平成11年7月の下旬、霞ヶ関にある東京家庭裁判所に調停の申立をしました。
調停では、まず、婚姻費用を請求する手続きを先に行いました。調停は月1回位のペースで進みます。夫は月100万円位の収入がありました。
平成12年3月、最初の1年間は月額16万円、以後離婚が成立するまでは月額11万円の婚姻費用を、夫が妻に支払うとの調停が成立しました。この夫は、相当なけちでした。この時点で夫側に弁護士が付きました。
その後、離婚調停などの話を進めましたが、夫は離婚に同意せず、平成12年6月、離婚調停は不調で終わりました。

離婚裁判:1審

弁護士は、平成12年6月、離婚、財産分与、慰謝料1000万円を請求し、家庭裁判所に訴えを提起しました。
夫側には別の弁護士が付きました。裁判では夫の不貞は証明できませんでしたが、夫が婚姻生活を破壊し、責任があることは証明できました。
預金類も、裁判所に対し、調査嘱託申立(現在の民事訴訟法186条)をし、裁判所から銀行に対し回答を求め、金額を証明できました。相談者が預金関係の書類をコピーしていたことが役に立ちました。
平成14年4月、1審判決がありました。判決は離婚を認め、慰謝料200万円、財産分与としては1200万円と自宅の持分100分の30が妻に与えれました。従前から持っている持分と合わせ、妻の持分は100分の40になりました。

離婚裁判:2審

夫はこの判決に不服で高等裁判所に控訴しました。妻も附帯控訴しました。附帯控訴をしないと、裁判所は夫の請求の範囲でしか判決しないからです。また、妻は1審の慰謝料金額には不服だったのです。
平成15年6月、高等裁判所で判決がありました。高等裁判所の判決では、慰謝料は500万円、財産分与は600万円でした。家の持分についての財産分与は1審と同じでした。

離婚裁判:3審

夫はこの判決にも不服で、平成15年7月、最高裁判所に、上告しました。しかし、上告審で判決が変わる可能性は非常に低い です。
平成16年1月、上告棄却の判決があり、離婚、慰謝料、財産分与は確定しました。

共有物分割の訴・和解

1つだけ解決しなければならない問題が残りました。それは、妻の持分100分40、夫の持分100分の60となっている自宅の分割です。
裁判外の話合いでは無理なので、弁護士は、平成16年6月、共有物分割の訴え(民法256条1項)を提起しました。
夫側には、また、別の弁護士が付きました。裁判では、終始、妻に押された夫は、この頃は弱気になり、平成16年10月、妻が夫に自宅の持分を時価で売ることで和解が成立しました。さらに、夫は元妻に対し、判決が認めた慰謝料、財産分与の金額、家の代金を支払いました。
夫が徹底的に争ったため、解決まで5年にもわたる裁判になりました(現在の裁判制度では、これほどの時間はかからないでしょう)。 当初は、涙を浮かべることの多かった相談者はこの頃には元気になりました。

コメント:前向きな離婚がしたい

このページを読んで考えさせられました。気持ちや愛情などは本当はお金や法律で解決するものではないと思います。
今、私は、離婚の話し合いの最中です。お互いに泥のかけあいになって悲しいです。10年間もどんな形にせよ共に暮らして来た同士がいがみ合って、今までの10年間の生活を否定して、一体どうすればいいんでしょう。
ただ、ただ悲しい、むなしい、そんな気持ちです。人の気持ちとは大切なものです。大切にしなければならないんでしょうね。
前向きな離婚がしたいです。

回答

法律の世界に落胆されたかもしれませんが、法律の対象となる人は、通常人、平均人、凡人なのです。問題を解決するのに、実力闘争よりは法律による解決が良いとの考えなのです。
おっしゃることはよくわかります。お気を落とさずに。

参考書

わかりやすい離婚の法律相談

参考:ドメステックバイオレンス防止法

2001年10月13日、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(通称、DV防止法)が施行されました。配偶者(内縁を含む)暴力相談支援センターによる援助(7条)、警察官による被害の防止措置(8条)が設けられ、被害者は裁判所に対し保護命令の申立(10条)ができるようになりました。
配偶者が命令に違反すると刑罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)を科せられます。

配偶者暴力相談支援センター
東京ウイメンズプラザ03-5467-2455電話、来所相談、心理カウンセリング、情報提供
東京都女性相談センター03-5261-3110一時保護、電話、来所相談
東京都女性相談センター立川出張所042-522-4232


保護命令の内容 2001年11月、このページは、株式会社アスキーから発売中の雑誌「アスキーネットJ 12月号」12頁に引用の形で掲載されています。
しかし、それは当ページがほとんどの内容を占めるもので、引用について、著作権法32条が許している公正なる慣行に合致しません。 そこで、11月28日同社到達の内容証明郵便にて著作権法違反と指摘しました。その後、同社から、謝罪がありました。
登録 May 14,1997
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301 弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161