訴状に現住所を書かないことができますか/弁護士の法律相談

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2023.9 .8mf
河原崎法律事務所
弁護士河原崎弘

質問:訴状に住所を書きたくない

私(29歳)は、ある男(32歳)に、駅で殴られ、倒れ、足を骨折しました。現在でも、腰痛の後遺症があります。男は、懲役1年執行猶予4年の判決を受けましたが、私に対する損害賠償はありませんでした。
私は、住所を移しました。私は、男に損害賠償を求めて訴えを提起しようと考えています。その場合、男に住所を知られてしまうのでしょうか。
現在は、男は、私の職場も、住所も知りません。男が私の現住所を知ると、お礼参りをされるのではないかと、心配です。
相手に住所を知られずに、裁判ができないでしょうか。

回答:理由があれば住所を書かないことが許される

弁護士の説明は次のようなものでした:従前から、訴状などにおける当事者の住所の記載については、「原告の実際の住所地が被告や第三者に知られることにより、原告の生命身体に危害が加えられることが予想される場合など、実際の居住地を記載しないことにつき、やむをえない理由がある場合で、その場所に連絡すれば、原告への連絡がつく場所など相当と認められる場所が記載されているときは、実際の居住地を記載することを厳格には求めない」などの柔軟な取扱いがなされてきました。

犯罪被害者等基本法に基づき内閣府に設置された犯罪被害者等施策推進会議において、これが指摘され、各裁判所に連絡が行っています。 住所は生活の本拠地です(民法21条)。生活の本拠地は複数あると考えられています。従って、住所は必ずしも、住民登録をしたところではありません。裁判では、訴状、尋問を受ける際に書く宣誓書には、住所を書くことになっています。
そのような場合、住民登録をしたところではなく、連絡のできる(郵便が届く)を住所として書くことは許されます
あなたの場合、両親の住所、兄弟の住所を書いてもよいでしょう。弁護士に依頼する場合は、「○○○番○○○号、○○○○法律事務所気付」とすることも許されます。
本人尋問で、相手から勤務先や現住所を尋ねられた場合、答えたくない理由として、「お礼参りされるおそれがあるので、答えたくありません」と答えればよいでしょう。

住所、氏名の秘匿制度の新設

2023年2月20日施行の改正民事訴訟法により、住所、氏名の秘匿制 度が新設されました(民事訴訟法133条)。
住所等が知れることによって、社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそ れがあるとの疎明があった場合、裁判所は、住所、氏名などを秘匿する裁判 をします。
裁判所から、秘匿決定を得ると、秘匿対象者の住所、氏名等を秘匿して、申 立、訴え提起ができます。申立人は、真実の住所、氏名の代わりに、代替 住所、代替氏名を、裁判所に届けます。
以後、関係者は、代替住所、代替氏名を記載した申立書、反訴状などを作成し、法的手続きをします。 登録 2005.12.27
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161