離婚調停、裁判で夫に住所を知られたくない

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2023.8.9 mf

質問:夫の暴力が怖い

夫の暴力がひどく、私(29歳)は、夫(32歳)とは離婚するつもりで、昨年7月、子供(3歳)を連れて家(東京)を出て、北海道の実家に帰りました。現在は、東京に住み、働いています。離婚手続きをしたいのですが、夫が離婚に同意しません。離婚調停の申立をし、離婚訴訟をする覚悟です。
夫は、私の職場も、住所も知りません。夫が私の現住所を知ると、「戻れ」と言いに来て、さらに、私の勤務先や住所を知れば、暴力を振るうでしょう。
夫に住所を知られずに、調停、裁判ができないでしょうか。

回答:訴状に住所を書かない方法があります

2023年2月19日まで

住所は生活の本拠地です(民法21条)。生活の本拠地は複数あると考えられています。住所は必ずしも、住民登録をしたところでなくともよいです。 離婚調停の申立書、訴状、裁判所で尋問を受ける際に宣誓する宣誓書などに、住所を書くことになっています。
しかし、あなたのような事情で住所を相手に知られたくない人もいます。そのような場合、弁護士に依頼する場合は、弁護士の事務所を書いてもよいです。例えば、「○○○番地○○○○法律事務所気付」と書くことも許されます。
本人尋問で、相手から勤務先や住所を尋ねられた場合、答えたくない理由を、「暴力を受けるので、答えたくありません」と答えればよいでしょう。
以上の方法を使った場合でも、調停調書、判決文には、住所が記載されます。最後には、相手に住所が知られることは覚悟すべきです。
これを避けるために、実際の裁判の手続きでは、郵便が届くであろうところを、あなたの場合、北海道の両親のところを住所としてよいでしょう。住所が複数あることは認められているからです。

民事訴訟改正:住所等秘匿制度の新設

2023年2月20日施行の改正民事訴訟法により、住所、氏名等の秘匿制度が新設されました(民事訴訟法133条)。 家事事件手続法38条の2がこれを家事手続きに準用しています。
住所等が知れることによって、社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあるとの疎明があった場合、裁判所は、住所、氏名などを秘匿する裁判をします。
裁判所から、秘匿決定を得ると、秘匿対象者の住所、氏名等を秘匿して、申立て、訴え提起ができます。申立人は、真実の住所、氏名の代わりに、代替住所、代替氏名を、裁判所に届けます。
以後、関係者は、代替住所、代替氏名を記載した申立書、反訴状を作成し、法的手続きをします。 ,

法律

民事訴訟法

第八章 当事者に対する住所、氏名等の秘匿
(申立人の住所、氏名等の秘匿)
第百三十三条 申立て等をする者又はその法定代理人の住所、居所その他その通常所在する場所(以下この項及び次項において「住所等」という。)の全部又は一部が当事者に知られることによって当該申立て等をする者又は当該法定代理人が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることにつき疎明があった場合には、裁判所は、申立てにより、決定で、住所等の全部又は一部を秘匿する旨の裁判をすることができる。申立て等をする者又はその法定代理人の氏名その他当該者を特定するに足りる事項(次項において「氏名等」という。)についても、同様とする。
2 前項の申立てをするときは、同項の申立て等をする者又はその法定代理人(以下この章において「秘匿対象者」という。)の住所等又は氏名等(次条第二項において「秘匿事項」という。)その他最高裁判所規則で定める事項を書面により届け出なければならない。
3 第一項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、当該申立てに係る秘匿対象者以外の者は、前項の規定による届出に係る書面(次条において「秘匿事項届出書面」という。)の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付の請求をすることができない。
4 第一項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 裁判所は、秘匿対象者の住所又は氏名について第一項の決定(以下この章において「秘匿決定」という。)をする場合には、当該秘匿決定において、当該秘匿対象者の住所又は氏名に代わる事項を定めなければならない。この場合において、その事項を当該事件並びにその事件についての反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する手続において記載したときは、この法律その他の法令の規定の適用については、当該秘匿対象者の住所又は氏名を記載したものとみなす。
(秘匿決定があった場合における閲覧等の制限の特則)
第百三十三条の二 秘匿決定があった場合には、秘匿事項届出書面の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付の請求をすることができる者を当該秘匿決定に係る秘匿対象者に限る。
2 前項の場合において、裁判所は、申立てにより、決定で、訴訟記録等(訴訟記録又は第百三十二条の四第一項の処分の申立てに係る事件の記録をいう。第百三十三条の四第一項及び第二項において同じ。)中秘匿事項届出書面以外のものであって秘匿事項又は秘匿事項を推知することができる事項が記載され、又は記録された部分(次項において「秘匿事項記載部分」という。)の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製の請求をすることができる者を当該秘匿決定に係る秘匿対象者に限ることができる。
3 前項の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、当該秘匿決定に係る秘匿対象者以外の者は、当該秘匿事項記載部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製の請求をすることができない。
4 第二項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
(送達をすべき場所等の調査嘱託があった場合における閲覧等の制限の特則)
第百三十三条の三 裁判所は、当事者又はその法定代理人に対して送達をするため、その者の住所、居所その他送達をすべき場所についての調査を嘱託した場合において、当該嘱託に係る調査結果の報告が記載された書面が閲覧されることにより、当事者又はその法定代理人が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあることが明らかであると認めるときは、決定で、当該書面及びこれに基づいてされた送達に関する第百九条の書面その他これに類する書面の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付の請求をすることができる者を当該当事者又は当該法定代理人に限ることができる。当事者又はその法定代理人を特定するため、その者の氏名その他当該者を特定するに足りる事項についての調査を嘱託した場合についても、同様とする。
(秘匿決定の取消し等)
第百三十三条の四 秘匿決定、第百三十三条の二第二項の決定又は前条の決定(次項及び第七項において「秘匿決定等」という。)に係る者以外の者は、訴訟記録等の存する裁判所に対し、その要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、その決定の取消しの申立てをすることができる。
2 秘匿決定等に係る者以外の当事者は、秘匿決定等がある場合であっても、自己の攻撃又は防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは、訴訟記録等の存する裁判所の許可を得て、第百三十三条の二第一項若しくは第二項又は前条の規定により閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製の請求が制限される部分につきその請求をすることができる。
3 裁判所は、前項の規定による許可の申立てがあった場合において、その原因となる事実につき疎明があったときは、これを許可しなければならない。
4 裁判所は、第一項の取消し又は第二項の許可の裁判をするときは、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める者の意見を聴かなければならない。
一 秘匿決定又は第百三十三条の二第二項の決定に係る裁判をするとき 当該決定に係る秘匿対象者
二 前条の決定に係る裁判をするとき 当該決定に係る当事者又は法定代理人
5 第一項の取消しの申立てについての裁判及び第二項の許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 第一項の取消し及び第二項の許可の裁判は、確定しなければその効力を生じない。
7 第二項の許可の裁判があったときは、その許可の申立てに係る当事者又はその法定代理人、訴訟代理人若しくは補佐人は、正当な理由なく、その許可により得られた情報を、当該手続の追行の目的以外の目的のために利用し、又は秘匿決定等に係る者以外の者に開示してはならない。
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 電話 3431-7161
登録 2005.8.22