弁護士を依頼せず自分で裁判できますか/本人訴訟

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Last update 2023.9.2mf

相談


土地を借りています。地主から、賃料(地代)増額訴訟を提起されました。お金を節約するため、弁護士を依頼せず(弁護士なしで)、自分で裁判したいと思います。
大丈夫でしょうか。

回答

日本は、本人訴訟を認めている

裁判では必ず弁護士を付けなければならないとの法制度もあります。日本では、そのような制度を採用せず、本人訴訟ができます。
弁護士の費用は、家賃、従業員(事務員)の給料分を含んでいます。すなわち、サラリーマンの給料とは違い、企業の売上に相当するものです。従って、弁護士費用は、そんなに安くはありません。
そこで、費用を節約するために弁護士に依頼せずに、自分で裁判するメリットがあります。法律上できるだけでなく、技術的にもOKです。

手続き

訴える(原告の)場合は、まず、訴状を作り、裁判所に提出します。訴えられた(被告の)場合、まず、 答弁書を作成し、裁判所に提出する必要があります。
その後、必要な書類は、準備書面の形で提出します(文章は、主語を入れ、日時、場所など事実を書き、感情的なものは不要)。
書類を作る際に、民事訴訟法、民法、借地借家法の解説書を読むべきです。お金を節約するのですから、時間を使うことを惜しんではいけません。 本人訴訟で、うまく、行っている人は、皆、努力しています。
下に裁判の流れを書いておきました。

地代増額請求訴訟は、調停 を経る必要があります(民事調停法24条の2の1項。調停前置主義)。初めは調停をやり、まとまらなければ、訴訟に移行します。そこで、調停は自分でやり、訴訟になったら弁護士を依頼するとの方法もあります(離婚の場合も同様です)。

裁判の中では、 請負代金請求、特許権侵害訴訟、不動産訴訟 (不動産登記請求、不動産所有権確認、不動産明渡訴訟)などは、技術的な問題が多く、難しく、依頼者の受ける利益も大きいので、弁護士に依頼する方がよいでしょう。
しかし、時間があるなら、専門書を読み、自分でできないことはありません。他の事件の法廷の様子を見学をし、コツを学ぶことも役に立ちます。要するにお金を節約するためには、時間と労力は惜しみなく使いましょう。
賃料増額の裁判は、通常は、不動産鑑定士による賃料の鑑定で決まります。この費用は 40 万円位ですが、通常は、両当事者が折半して予納、負担します。

裁判官

弁護士でないからと、裁判官が主張を聴いてくれない場合は、知人に傍聴人として傍聴席に居てもらうとよいでしょう。傍聴人がいると裁判官も気を付けて発言します。誰も見ていないと、裁判官がとんでもないことを言うことがあります。ほとんど傍聴人がいない地方の裁判所ではこんな問題があります。

あなたが、手続きがわからなくて、もたたすると、裁判官は、「弁護士を頼んだら」と意見を言うかもしれません。しかし、 裁判官に対しては、普通の態度で接してください。裁判官が、主張をわかってくれなくても、怒っては、いけません。丁寧に説明するとよいでしょう。難しいことは書面で説明するとよいでしょう。
裁判官も、人間です、わからないこともあり、機嫌の悪いこともあります。本来、そのような人は、裁判官の適格性を欠いているのですが、その問題は、個々の裁判では解決できません。裁判官と対立したり、裁判官を感情的にさせると、判決に悪影響を与えることは間違いありません。
これは、地裁でも、高裁でも、同様です。高裁の裁判長は、年をとっていますから、横柄な態度の人が多いですが、知らん顔して、普通の態度で接してください。人間は恐ろしい動物です。弱いものに対しては、裁判官でも、横柄な態度になる人がいます。気をつけて、しかし、普通の態度で裁判官と接することが基本です。

裁判官が公正でなくても、抗議したり、忌避の申立(民事訴訟法24条)は、しない方がよいです。忌避の申立をして、良い結果があった例はないです。
忌避理由の「裁判の公正を妨げるべき事情」とは、客観的にみて不公正な裁判がなされるであろうとの懸念を起こさせる、当 該事件外の客観的情を言います。 裁判官が、事件について、片方の当事者に不利なことを言っても、それは、まさにその裁判官の判断だから、忌避の理由になりません。
危ないと思っても、慇懃無礼な態度で接するか、弁護士に相談すべきでしょう。

賃料増額請求事件の場合

結論として、賃料増額請求の裁判の被告の場合、大きな問題がなければ(単に賃料額の多寡だけが問題なら)、弁護士を依頼せず。自分でやってもよいでしょう。 経費を節約したいなら、 あなたが十分な法律の知識を持っている場合は別にして、専門書を読み、無料法律相談で弁護士に 相談するなどして裁判を進めるとよいでしょう。
裁判所が遠隔地で、訴額が小さく、事実認定に問題が少ない事件は、本人訴訟をするメリットがあります。 事実認定に問題があるとか、訴額が大きい事件は、弁護士に依頼した方がよいので、それも含めて弁護士に相談しながら裁判を進めるとよいでしょう。
できたら書類は弁護士に作ってもらった方が楽でしょう。それでも、弁護士に訴訟を依頼するより費用(弁護士費用計算機参照)は安くなります。
訴訟は、本を読み勉強すれば自分でできます。しかし、現状では、多くの人は、不勉強な状態で、独りよがりな訴訟をしています。
自分から積極的に訴えを提起する自信がないなら調停申立もよいです。

統計

令和2年度の司法統計 では、全国簡易裁判所に提起された通常訴訟29万7145件のうち、弁護士、司法書士が代理人とついたもの(片方の当事者に代理人が付いたものを含む)は7万76836件、当事者本人(本人訴訟)によるものが22万0309件でした。約74%が本人訴訟です。

*ドイツでは、 民事訴訟法 78 条 (Zivilprozessordnung §78 ) により、地方裁判所(Landgericht)およびその上級審の裁判所では、弁護士を付ける必要があります(弁護士訴訟:Anwaltsprozess)。
フランスでは、裁判所によって異なりますが、大体、弁護士を付ける必要があります。

ファックス付電話で下記番号に電話すると、手続きの説明、書式を取出すことができます。当サイトも若干の 法律書式集 を用意しています。 自分で裁判する場合に利用してください。

東京簡易裁判所 03-5251-1611
東京家庭裁判所 0570-031840

民事裁判の流れ

訴状提出訴状は、同じものを2通提出します。正本(裁判所の分)と副本(被告に送る分)です。
これで訴えの提起です
裁判を早く終わらせたい場合には、
訴状提出と同時に、書証(甲号証、同様に2通)提出、証人尋問申請書(同様に2通)も提出する
と、効果的です。

裁判所は、期日を決めて、訴状副本と呼出状を被告に送ります。

答弁書提出 被告は、 答弁書(同様に2通)を提出、証拠(乙号証、同様に2通)提出

第1回口頭弁論期日(訴状を提出してから1月〜1月半後)
当事者(原告、被告)は、法廷に出頭し、廷吏あるいは書記官に呼出状を示し、置いてある出頭カードに名前を書きます。
同じ法廷で、順番に、他の当事者の口頭弁論もおこなわれるますので、廷吏が事件番号と当事者を呼ぶまで、傍聴席で待ちます。名前を呼ばれたら、席に着きます。
裁判官から見て右側が原告の席、左側が被告の席です。
自分の事件番号、名前が呼び上げられたら、自分の席に着きます。発言するときは起立しておこないます。
裁判官は、まず、原告に対し、「訴状のとおり陳述しますか」と尋ねます。
原告は、「はい」、あるいは、「訴状のとおり陳述します」と言います。
次に、裁判官は、被告に対し、「答弁書の通りに答弁しますね」と言います。
被告は、「答弁書のとおり答弁します」と述べます。
次に、裁判官は、原告あるいは被告に対し、不明な点などがあれば尋ね、提出すべき証拠があれば次回期日までに提出するように求めます。
最後に、裁判官は、当事者に対し、都合を尋ねてから次回期日(約1月後)を指定し、第1回口頭弁論は終了します。
書証提出は随時

準備書面 提出原告が、反論や、主張の足りないところを書きます。
この辺で、通常、和解期日が設けられる
準備書面(反論) 提出
証人、本人尋問申請
この後も、原告、被告とも、さらに、準備書面を提出できます。
証人、本人尋問実施事前に、証人、本人が捺印した詳細な陳述書を提出。
尋問の当日、真実を述べるとの宣誓をして証言、陳述します。
弁論終結ここまでで、期日は10回くらい、訴状提出から10か月くらいかかります。
判決言渡し出頭する必要はありません。判決は送られてきます。
April 9, 2000
神谷町 河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03−3431−7161