谷山を犯人にしたてあげようとした字水は、はじめ家のへいなどをうまくわたって、谷山の家まで足あとをつけずにいき、谷山の家から足あとをつける予定だった。しかし、10本足のげたをもってへいなどをわたるのは、少し苦労だった。10本足のげたが重くて、また、へいなどにぶつかるからだ。
それで、得意な弓矢を使ったのだ。矢にげたをくくりつけ、とばしたのだ。大学時代、プロなみのうでをもっていた字水は、矢をうまく谷山の家の前までとばし、それからへいをわたっていったのだ。事件の前のUFOとは、この矢のことだったのだ。
さて、ダイヤを盗むのに成功した字水は、田中とダイヤのわけあいでけんかになり、田中を殺した。やがて谷山がしゃくほうされたので、字水は谷山のしゃくほうされた夜、森へいった。しかし、いちいち森へはいってダイヤを木の中へかくしにいってはあやしまれる。そこでまた、得意の弓矢を使った。矢にダイヤの入ったふくろをくくりつけ、とばしたのだ。
次の日の朝、私が見つけた足あとは、とちゅうできれていて、帰っていく道もなかった。あれは、うまく足あとをそろえて後ずさりしていったのだろう。いかにもその場所で消えてしまったなぞの人物にするために……。
50個ものダイヤを、1ぺんには矢でおくれなかったので、次の日の夜も森へいった。そしてまた、矢にダイヤの入ったふくろをくくりつけとばしたのだ。
私に見つかった字水は、げたをはいているわりには速いスピードで走った。それは、げたにちょっきり足がはまるからだろう。そこで、ちょっとそこの3人。この犯人のおとしていったげたを、1人ずつはいてくれないか」
ピンじろうがそういうと、3人はげたをはいた。字水がはくと、やはりぴったりだった。
「やはりぴったりだったね、字水君」(伏線まるでナシ。こんなのわかるかいっ!)
ピンじろうがそういうと、字水はふるえた声でいった。
「か、かね……金がほしかったんだ!」(をを。定番のフレーズだあ)
そのまま字水はにげようとした。
しかし、そこを水谷につかまえられた。
「さあ、行こうか……」
ピンじろうが字水にいった。
「はい」
字水は小さな声でつぶやいた。
「私に電話をかけてきたのも字水さんだったのね。谷山さんのまねをしていたのね。谷山さんのまね……うまかったわよ」
黒宮がはげましのことばのようにいった。
「ありがとう。警察をでて真人間になったら、役者にでもなろうかな……。フフ……」(もう笑うしかない)
字水はじょうだんをいった。(冗談だったのか)
「ところで字水……。ひとつわからないことがあるんだ。ひっかいた凶器はなんだったんだい」
「フフ……つめですよ」
「つめ?」
「つめをやすりでとんがらせたんですよ。犯行の後、つめきりできってもとにもどしたんです」(おいおい。ピンじろうはやすりで尖らせた字水の爪を見ているはずだが、変に思わなかったのか? っていうか、そんなもので人は殺せねーよ)
「なるほど」
ピンじろうは字水のかしこさに、感心しそうになった。(感心するなよ、おい)
「さあ、行こう……」
2人は警察へ向かった。(いや、警察に連行するのは水谷らの仕事では?)
よく晴れたあたたかい日だった。
もうすぐ春だ! 春はもう目の前までやってきていた。
(おわり)