水谷は家の前でたっていた。
「あっ! ピンじろうさん」
水谷は、ピンじろうにはやくはやく! とジェスチャーを送った。
「いったい、どうしたんだい」
「犯人がわかりそうなんです」
「犯人って!? 10本足のか?」
「そうなんですよ」
水谷は、ピンじろうを家におしいれた。
「この写真をみてください」
水谷はピンじろうに、写真を1枚差し出した。
(笑)
「!!」
ピンじろうは声がでなかった。なんというぐうぜんだろうか。(いえ、ご都合主義と申します)今日の朝、ぶつかったばかりのあの女の人の写真なのだ。
「こ、こ……この人……がどうしたっていうんだい」
ピンじろうのことばがふるえた。
「実は、この人が犯人かもしれないんです」
水谷がそういうと、ピンじろうがさけんだ。
「バカな! この人が犯人なわけがないだろ! そんなバカなことがあるか!」
「どうして、そうこうふんするんです」
「い、いや別に……」
「実はこの女。事件前後に、その事件現場のまわりでウロウロしているんです」
「なるほど。でも、単なるぐうぜんだよ」
ピンじろうは、ぜったいあの女は犯人でないはないと思った。
「で、その写真はどうやって手にいれたんだい」
「谷山さんの知り合いだったので、写真をもらったんです」
「谷山の知り合いか……」
「それで、今からその女に会いにいこうと思っているのですが、ピンじろうさんもいきますか?」
「もちろんだ」
ピンじろうは、この人の無実を必ず証明してやろうと思った。
「それで、その女の人はどこに住んでいるんだい」
ピンじろうが水谷に聞いた。
「遠くはないさ。ほら、もう見えてきた」(どうして突然、横柄な言葉遣いに?)
――黒宮と谷山――
その家はとてもりっぱだった。庭もとても広かった。表札には「黒宮」と書いてあった。
「ブー」(庭にブタを飼っているわけではない)
ピンじろうはブザーをおした。
「ハーイ」
きれいな声がした。あの女の声だった。
「あら! あなたさっきの……」
女はおどろいた。しかし、何よりおどろいたのは水谷だった。
「ピンじろうさん。この人と知りあいだったんですか!?」
「いや……。知りあいってわけではないが……。ほんの数時間前にしりあったんだよ」
「それで、私にどんな用事ですか……」
女……黒宮はいった。
「いや、実はですね。あなたが10本足の怪物の事件前後に、必ず事件現場の近くをうろついていると……」
水谷がいった。
ピンじろうが横からしゃべった。
「そんなことはないですよね」
「いえ、本当です」
ピンじろうも水谷も、あまりすなおにいうのでおどろいた。
「うろついていたのは本当です。でも、私が10本足の怪物の正体ではありません」
「では、事件現場で何をしていたんですか?」
「待っていたんです」
「何をですか?」
「谷山さんです。いつも、事件の起こる日の少し前に、谷山さんから電話がかかってくるんです。用があるから、今日の何時にどこで待っていろとかかってくるんです」
「なるほど」
「それで私、そこへ行って待っていたのだけれども、ちっとも谷山さんが来ないんです。それが次の日、事件現場になっているんです……。さむい雪の中を待っていたのに、谷山さんは私に罪をかぶせようとしたのよ!」(すべての事件で、待ちぼうけをくらったのか? おめーもちょっとは学習しろよ)
黒宮はさけんだ。
(次回、謎の女性の正体が判明!)