「ところで、その君の弟はどうしているのかね」
「弟じゃありません!」
「失れい。それでは兄だね」
「ちがいます!」
「えっ!?」
ピンじろうは、またとまどった。ふたごのもう1人は男だと、てっきり思っていたからだ。
「それでは妹かね」
「はい、そうです」
ピンじろうは、わけがわからなくなってきた。
ピンじろうは事件の日、ずっと字水につきっきりだった。むろん、風呂もだ。(おいおい。風呂くらい一人で入らせてやれよ)たしかに、字水にはあれがついていたのだ。(「あれ」の部分は、オリジナルでは傍点がついてました。なにもそこまで強調しなくても(笑))
「え、えーと……。それでは、その妹は今、どうしているんだい?」
「2年前、事故で……」
字水は少し悲しそうな顔をした。ピンじろうは、どんどんわけがわからなくなってきた。
なんとか、その妹がうまく字水に化けていても、2年前に死んでいるのでは、ピンじろうの前に現れることはできない。
「いや、その……ありがとう」
ピンじろうはそういうと、にげ帰ってきた。
「やはり字水は犯人じゃない! まだ、別の新犯人がいるはずだ。ようし、必ずその犯人をあばいてつかまえてみせる!」(ホントにこいつ、名探偵なんでしょーか?)
ピンじろうはやる気まんまんだった。(懲りねー奴だな)
――道をうろついた怪物――
谷山を見張りはじめて、もう1ヶ月がすぎた。
谷山がつかまってから、10本足の怪物の事件どころか、あきすだってないぐらいだ。
谷山は一時しゃくほうとなった。(釈放って……別に逮捕されたわけじゃないよな?)
「よし、谷山。家へ帰っていいぞ」
ピンじろうが谷山にいった。(警察さえも意のままに操るピンじろう、恐るべし)ピンじろうはまた、ある実験をしようと考えていたのだ。
「ピンじろうさん、いいんですか? 谷山をしゃくほうさせて。もう、やつが犯人ということは90%かくじつですよ。(どーゆー根拠で算出された数字なんだ?)足あとは谷山の家から出発してるし、谷山をつかまえてから事件はおこらないし……」
「なーに。すぐわかるさ」
ピンじろうはそういうと、空をながめた。
「なぜ、空などながめているんですか」
水谷がピンじろうに聞いた。
「もうすぐ雪がふってくるからだよ」
「えっ!?」
ピンじろうのいったとおり、雪はチラチラとふってきた。
「やはり、天気予報は正しいな」(いや、別に笑いどころじゃないんだけど、なんか妙におかしい)
ピンじろうはそういうと、、水谷の方を向いていった。
「あっ! 水谷君。今までのことを全て、新聞記者につたえてくれ」
「今までのこと……といいますと?」
「私が、犯人が谷山かどうかを調べるために、こっそり谷山を警察につれてきたこと。そして、今日谷山を家にかえしたことだ」
「いったい、なぜそんなことを……」
「もうすぐわかるさ」
夜になると、雪はだいぶつもってきた。
水谷は今までのことを新聞記者につたえると、その記事はすぐ夕刊のトップ記事にのった。(いや、トップ記事になはならんだろう。……一般人を監禁したってことで、別の意味で大問題にはなると思うが)
その日、怪物は道をうろついた。
それがわかったのは、朝5時ごろだった。
ピンじろうは、なぜか早く目がさめた。そこで、外へ出てさんぽをしていると……。
「おおっ!」
ピンじろうはおどろいた。足あとがあるのだ。10本足の怪物の足あとが……。
「また、何か事件があったのだろうか」
ピンじろうは足あとをどんどんたどった。しかし、足あとは途中できれていた。
「くそう……ようし! 水谷君に足あとたんちきをかしてもらおう」
ピンじろうは水谷の家へ向かった。
(次回、初めての女性キャラ登場!)