名探偵ピンじろうシリーズ
10本足の怪物
第5回

 

 ――なぞの男――

 昼ごろ、雪はすっかりやんだ。
「それではさようなら」
 ピンじろうはそういうと、家には帰らず、家とは反対方向に向かって歩いていった。
 ピンじろうは警察へ行くのだった。
「水谷警部!」
 ピンじろうは友人の水谷をよんだ。(おお。警部が友人だったとはびっくり)
 水谷はすぐに、ピンじろうの前にでてきた。
「実は足あとたんちきをかしてほしいんですが……」
「ええ、いいですよ」(いくら友人だからって、そんなあっさりと(笑))
 ピンじろうは水谷から足あとたんちきをかりると、いちもくさんに字水の家の前にいった。そして、足あとたんちきのスイッチをいれた。
「――――」
 足あとたんちきは反応しなかった。
「やはり10本足の怪物は、足あとを消してもすぐわかってしまうので、足あとをつけるのをやめたな……。それなら、どうやってこの字水の家まできたのだろ。足あとをつけずにどうやって……」
 また、謎が1つ増えたのだった。
 ピンじろうは今日も風呂に入りながら、今までの事件を整理していた。
(やはり谷山が犯人なのだろうか……。証こはじゅうぶんあるからな……。しかし、どうしても谷山が犯人とは思えない……。よし! 明日、おもしろい実験をしてみよう!)
 そんなことを考えているに、となりの家……つまり字水の家でものおとがした。
 ピンじろうは風呂の窓からのぞいた。
 ある1人の男が字水の家にきていた。遠くて顔ははっきりみえない。何か話しあっているようだった。そして、1人の男はまた帰っていた。(また?)
(こんな夜中にだれがきたんだろう)
 ピンじろうは字水に、明日聞くつもりだった。
 ピンじろうは風呂からあがると、ビールを1ぱい飲み、ねどこについた。

 ――UFOがとんだ――

 その日は、なぜかね苦しかった。なかなかねれないピンじろうは、戸を開けて庭へでた。
 外は寒かった。ピンじろうはブルッとふるえた。
「星がきれいだな……」
 ピンじろうはうっとりと空を見上げていた。その時、何かが空を横ぎった。はじめは流れ星と思っていたが、どうもちがう。
「UFOだろうか?」
 ピンじろうは直感で、いま見たUFOのようなものは、きっと事件にかんけいがあると思った。(「ピンじろう」と呼ばれるゆえんか)
 次の朝……。ピンじろうは雪がふっていることに気がついた。
「おっと! すぐ字水さんの所へ行かなくちゃ」
 ピンじろうはパジャマから服にきがえると、またいちもくさんにかけだした。(「いちもくさん」という言葉が、この頃はお気に入りだったよーだ)
「しかし、よくふるなあ」
 ピンじろうは字水の家へとびこんだ。
 またまた字水につきっきりだ。本当に、字水にしてはいいめいわくだった。
「あっ! 所で字水さん。昨日きた男の人はだれですか?」
 ピンじろうは字水にきいた。
「ピンじろうさん。みてたんですか。あれは私の友人の田中という人で、今度やる中学生の同そう会のことについて、話にきたんです」
「そうですか」
「ジリリリリリーン」(電話です。目覚ましじゃありません。昔はこーゆー音だったんです)
 けたたましくベルがなった。
「はい、字水ですけど……」
 ピンじろうが受話器をとってそういった。(他人の家の電話に勝手に出るなよ)
「すぐに南町3丁目までてくれ! ピンじろうさんもいっしょにな」
 受話器はそういうときれた。(誰からかかってきたんだ? どうやら水谷警部らしいのだが)
 2人は急いで、南町3丁目へ行った。そこには人だかりがたくたんさあった。
 パトカーがとまっていた。
 人だかりの中央に、男の死体が転がっていた。男のまわりには、かすかに10本足の怪物の足あとが残っていた。
「ああっ! こ、これは……」
 字水がさけんだ。
「ぼ、ぼくの友人の田中君……」(また、被害者の苗字に「田」の文字が。でも、そのことは誰も気にしていないし、実際なんの意味もない(笑))
 字水はおどろいた。ピンじろうもおどろいた。きのう字水の家へ来たばかりの田中が、こんなところで死んでいるのだ。
「た、田中君。どうして……どうしてこんなことに……」
 字水の目になみだがたまった。やはり田中には、つめのようなものでひっかかれたがあった。
「足あとたんちきで、足あとをぎゃくにたどってみよう」(この機械、大活躍だな)
 ピンじろうは足あとをたどっていった。
「やっぱり谷山の家か……」
 ピンじろうは谷山の家のブザーをおした。

(次回、谷山登場! そして、ピンじろうが考えた「おもしろい実験」とは果たして?)


 

この物語についての解説