昼ごろ、雪はすっかりやんだ。
「それではさようなら」
ピンじろうはそういうと、家には帰らず、家とは反対方向に向かって歩いていった。
ピンじろうは警察へ行くのだった。
「水谷警部!」
ピンじろうは友人の水谷をよんだ。(おお。警部が友人だったとはびっくり)
水谷はすぐに、ピンじろうの前にでてきた。
「実は足あとたんちきをかしてほしいんですが……」
「ええ、いいですよ」(いくら友人だからって、そんなあっさりと(笑))
ピンじろうは水谷から足あとたんちきをかりると、いちもくさんに字水の家の前にいった。そして、足あとたんちきのスイッチをいれた。
「――――」
足あとたんちきは反応しなかった。
「やはり10本足の怪物は、足あとを消してもすぐわかってしまうので、足あとをつけるのをやめたな……。それなら、どうやってこの字水の家まできたのだろ。足あとをつけずにどうやって……」
また、謎が1つ増えたのだった。
ピンじろうは今日も風呂に入りながら、今までの事件を整理していた。
(やはり谷山が犯人なのだろうか……。証こはじゅうぶんあるからな……。しかし、どうしても谷山が犯人とは思えない……。よし! 明日、おもしろい実験をしてみよう!)
そんなことを考えている家に、となりの家……つまり字水の家でものおとがした。
ピンじろうは風呂の窓からのぞいた。
ある1人の男が字水の家にきていた。遠くて顔ははっきりみえない。何か話しあっているようだった。そして、1人の男はまた帰っていた。(また?)
(こんな夜中にだれがきたんだろう)
ピンじろうは字水に、明日聞くつもりだった。
ピンじろうは風呂からあがると、ビールを1ぱい飲み、ねどこについた。
――UFOがとんだ――
その日は、なぜかね苦しかった。なかなかねれないピンじろうは、戸を開けて庭へでた。
外は寒かった。ピンじろうはブルッとふるえた。
「星がきれいだな……」
ピンじろうはうっとりと空を見上げていた。その時、何かが空を横ぎった。はじめは流れ星と思っていたが、どうもちがう。
「UFOだろうか?」
ピンじろうは直感で、いま見たUFOのようなものは、きっと事件にかんけいがあると思った。(「ピンじろう」と呼ばれるゆえんか)
次の朝……。ピンじろうは雪がふっていることに気がついた。
「おっと! すぐ字水さんの所へ行かなくちゃ」
ピンじろうはパジャマから服にきがえると、またいちもくさんにかけだした。(「いちもくさん」という言葉が、この頃はお気に入りだったよーだ)
「しかし、よくふるなあ」
ピンじろうは字水の家へとびこんだ。
またまた字水につきっきりだ。本当に、字水にしてはいいめいわくだった。
「あっ! 所で字水さん。昨日きた男の人はだれですか?」
ピンじろうは字水にきいた。
「ピンじろうさん。みてたんですか。あれは私の友人の田中という人で、今度やる中学生の同そう会のことについて、話にきたんです」
「そうですか」
「ジリリリリリーン」(電話です。目覚ましじゃありません。昔はこーゆー音だったんです)
けたたましくベルがなった。
「はい、字水ですけど……」
ピンじろうが受話器をとってそういった。(他人の家の電話に勝手に出るなよ)
「すぐに南町3丁目まで聞てくれ! ピンじろうさんもいっしょにな」
受話器はそういうときれた。(誰からかかってきたんだ? どうやら水谷警部らしいのだが)
2人は急いで、南町3丁目へ行った。そこには人だかりがたくたんさあった。
パトカーがとまっていた。
人だかりの中央に、男の死体が転がっていた。男のまわりには、かすかに10本足の怪物の足あとが残っていた。
「ああっ! こ、これは……」
字水がさけんだ。
「ぼ、ぼくの友人の田中君……」(また、被害者の苗字に「田」の文字が。でも、そのことは誰も気にしていないし、実際なんの意味もない(笑))
字水はおどろいた。ピンじろうもおどろいた。きのう字水の家へ来たばかりの田中が、こんなところで死んでいるのだ。
「た、田中君。どうして……どうしてこんなことに……」
字水の目になみだがたまった。やはり田中には、つめのようなものでひっかかれた後があった。
「足あとたんちきで、足あとをぎゃくにたどってみよう」(この機械、大活躍だな)
ピンじろうは足あとをたどっていった。
「やっぱり谷山の家か……」
ピンじろうは谷山の家のブザーをおした。
(次回、谷山登場! そして、ピンじろうが考えた「おもしろい実験」とは果たして?)