縮刷版97年5月上旬号


【5月10日】 なんか本当に亡くなっていたらしい長谷有洋さん。関連記事を探して「GOO」で検索をかけたけど、ビデオのタイトル案内とかばっかりであとはちょっとした人名辞典くらいしかなく、そこに「マクロス7」にも出演していた旨が書かれてあって、それが全然覚えていないキャラの声だったので、第1作では主役を張ってた人なのにと思うと、なんか哀しくなった。マックス役の速水奨さん(マクロスの時は違う名前だったよね、確か)はその後「聖戦士ダンバイン」のバーン・バニングスや「重戦機エルガイム」のギャブレット・ギャブレイへとスター街道まっしぐら。「マクロス」の後番組の「超時空世紀オーガス」にも出てたっけ。もちろん「マクロス7」でも同じマクシミリアン・ジーナス役で出演していて、その美声ぶりを披露していた。

 確かに長谷有洋さん、2枚目声じゃーなくどっちかってゆーと軟弱な弱々しい青年って感じの喋りで、声もどっちかってゆーと通る方じゃあなかったから、作品として人気が出た「マクロス」の主役ってことだけで、とりあえず注目はされても、後がなかなか続かなかったんだろー。もちろん2枚目声だからって、昔からずーっと活躍し続けている神谷明さんのよーな人はごくごく希で、速水さんだって今もトップって訳じゃなく、緑川光さん、石田彰さん、子安武人さん、関智一さん、鮎置龍太郎さんっていった具合に、ライバルはどんどん増えている。でも10年後、残っているのはいったい何人? って考えると、20年以上の昔から未だに第1線で活躍し続けている神谷明さんってつくづく偉大、だねー。

 やっと勝ったか名古屋グランパスエイト。こんなことなら早く出しておけばよかったぞ森山選手ってな具合に、2得点1アシストと大爆発してレッズを3対1で葬り去った。このままずーっとレギュラーで使われて、その都度勝負強いところを見せていけば、やがて日本代表に選ばれて、決定力に乏しい日本代表の中で前回の中山みたいな役割を担わせることができるのになー。んでもって戻って来た小倉、パワーレフティー平野とともにトップでグランパス陣がトライアングルを組み、ピクシー率いるユーゴスラビア代表とフランスワールドカップの場で対峙するってシナリオ。出来すぎだけどでも、絶対に見てみたいぞ。プラスGK伊藤裕二ってのは贅沢かねえ。

 イトーヨーカ堂船橋店でお買いもの。「クイックルワイパー」のシートと「ドライペット」のパチもんと「ゴキブリホイホイ」と「キンチョーリキッド」をまとめて買って部屋に帰ってお洗濯とお掃除をして午後を潰す。買い物中にふと見慣れたポスターが目にとまり、よくよく見ると「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」が、ヨーカ堂の中にあるミニシアターで昨日から上映されているとゆー案内だった。こんな近くで「エヴァ」がかかっているな見なくてはいけないと思いつつも、今日洗濯をしないと3層に積もった洗濯物の下から得たいの知れないモノが生えてきそーな気がしたので、後ろ髪を引かれる思いでヨーカ堂を後にする。

 なんでも「クレヨンしんちゃん」の新作も上映していて、すわ2番館ならではのアニメ2本立てかと思ったら、それぞれに入場料が違っていて、どうやら互い違いに上映してその度に観客を入れ替える方式をとっているらしー。「エヴァ」は午前10時からと午後3時半からと午後7時からの3回上映。もしずーっと「エヴァ」だけだったら、明日一日入り浸っていよーと思ったのに、入れ替えじゃー1回しか見られない。ちょっと残念。でもこんなに近くでやってるんだから、明日にでも見に行こーかな。しんちゃんを。

 フジテレビがマードックの「JスカイB」に出資するとの報道。テレビ朝日みたく買収されそーになったんじゃなく、逆に出資してやるんだから立場は違うぜとは思ってみるが、出資する代わりにお荷物な某新聞とその子会社の某工業新聞の面倒を見てよ、借金付きであげるから、なんて言われて売り飛ばされるんじゃないかって心配が、今度はむくむくと起こってくる。もしかして売られちゃった方が「マードックに買われた新聞」ってことで知名度が上がって部数も伸びて、給料が上がるかもしれない。でも締まり屋だからマードック、出来の悪い社員のくびをぶちぶちを引きちぎっては投げ捨てるかもしれず、真っ先に市中引き回しの上打ち首獄門的怠惰振りのわが身の振り方を、にわかに考える五月晴れの昼下がり、なのであった。ああ。


【5月9日】 秋葉原をうろうろ。「機動戦艦ナデシコ」のゲームソフトがどこのショップの店頭でもガンガンとデモされていて欲しくなるが、内容は本編とはまったく関係のない恋愛シミュレーションだったりするから、1つのエピソードとして提示されていた「新世紀エヴァンゲリオン2nd」に比べると、欲しい度数がちょっとだけ低い。店頭デモではまだ未発売の「超時空要塞マクロス 愛、おぼえてますか」も流れていて、ラジカセからガンガンと流れていた飯島真理さんの挿入歌に、もう」10年以上も昔になってしまった甘やかな(さして甘くもなかったけど)大学時代を思い出す。いっぱいいっぱい聞いたよなー、「ロゼ」(「ブルーベリー・ジャム」は傑作だあ)とそして「ブランシェ」を。どちらも飯島真理さんのアルバムのタイトルね。

 実は飯島真理さんの名前を強く意識するよーになったのは、アニメ雑誌で見たからじゃなくって「SFマガジン」に連載されていた難波弘之さんのコラムだったりする訳で、何でも施設を訪問して演奏した山下達郎さんたちを手助けしてくれたボランティアの中に、まだ国立音大かどっかに在学中だった飯島さんがいて、バックでキーボードを弾いていた難波さんに「ファンです」とかいってデモテープを渡したんだとか。後で聞き直した時に「粒立ちの良い声」と思った難波さん、すぐさま連絡をとったら既にあちらこちらから声がかかっていて、それならばせめてダマされてインチキプロダクションにいかないよーにと、事務所とレコード会社を紹介。あとは「超時空要塞マクロス」への抜てき、坂本龍一さんプロデュースによるファーストアルバム「ロゼ」のリリースと、トントン拍子の出世を果たした。

 「キモノステレオ」あたりまではリアルタイムでフォローしていたけど、あとはMCAだかMGMだかに移籍してからのアルバムを2枚くらい買ったりしていた程度。その当たりで飯島さんを知った人は、まさかかの「マクロス」のリン・ミンメイを飯島さんが演じていたなんて露ほども知らないんだろーね。「マクロス」なんてアニメがあったことすら知らないかも。でもリアルタイムで「マクロス」見てた世代には、「飯島さん=ミンメイ」って図式は覆そうにも不可能で、だからゲームソフトで「愛、おぼえてますか」がリリースされるのが呼び水となって、飯島さんが再登場して、それもアニメのシーンに戻って来て活躍してくれないかと、考えている中年のおっさんは意外と多いんではなかろーか。

 でも僕個人としては、「マクロス」のミンメイとしてよりは、純粋にアーティストとして製作した「ロゼ」とそして「ブランシェ」が結構気にいって、今も当時録音したカセットを持っているくらいだから、声優さんとしてじゃなくって、アーティストとしてスポットが当たってくれてもいっこうに構わないんだけど。確か外国の人と結婚したって聞いたけど、今いったい何やってるのかなー。何歳なんだろーなー。ついでに一条輝役の長谷有洋(はせさんじさんの息子、だったよね)はいったい何をやってるんだろーなー。まだ死んでは・・・・いないよね?

 あれこれゲームを見て中古でWARPの「E0」が2480円で出ているのを見つける。980円ってのは流石に見あたらない。けどサクラ大戦あたりが未だに4000円から5000円前後の中古価格で売られているのを見ると、渾身の逸品にしてはコアなゲームユーザーには人気がないんだなーと、本人が自身満々で送り出しただけに、ちょっと哀しくなってくる。理解できないユーザーが悪いのか、理解させない製作者側に非があるのか。これは実際にプレイしてみなくちゃいかんのかなー。でもやっぱり「E0」は買わずにメディアワークスの「エターナルメロディ」を買って(ゴメン中古だ)帰る。ちょい訳ありの購入だけど、でも週末は楽しめそー。同僚から借りた「クオヴァディス2」は運動神経が鍛えられる来年あたりまでとっておこー。

 日本出版販売が中国国家図書館に本を寄贈するとゆー調印式が開かれたので、日販の本社があるビルまで出かける。文芸評論家の尾崎秀樹氏が来賓として出席していて、和服姿にザンバラな白髪がブンガク者ーってな雰囲気を思いっきし醸し出していて圧倒された。尾崎秀実さんじゃないよそっちはゾルゲ事件で吊された人だから。しかし質問に「答えになっていないかもしれないけれど」と断った上で、用意して来た2枚くらいの便せんを読んだのには、なんだか仕込みの臭いを感じた。内容はさすがにそれなりになんともまあな文章だったが、決してうまいとはいえない喋りだったことに、芸達者な文学者が増えて来たなかにあって、純粋朴訥な人なんだなーとゆー印象を受けた。本当はキツイ人なのかもしれないけど。

 会社で原稿を書いていて行き詰まったので、席を外して神田神保町で開かれていた浅田次郎さんのサイン会をのぞく。そのまま「鉄道員」(集英社)を買って行列の後ろに並んで待つこと20分ほど。先月の筒井康隆さんほどの来場者はなかったけど、ちょっと銀座のママさん風おばさんとか、見目麗しいけど影のありそーな美人とか、ただの油ぎったオヤジとか、とにかく社会経験の豊かな人たちが粛々としてサインしてもらえるのを待っていたのには驚いた。筒井さんの時は大半が20代前半の若い人だったからなー。

 雰囲気からしてカンロクの浅田さん、女性が立つとニコニコしながらサインをして、最後に握手までするサービスぶりだったのに、男の場合は「ほんっ」てな感じで本を受け取り、顔もあげずに筆ペンでむりむりむりとサインをして、さっさと横のハンコを押す人に渡していたのが印象に残った。あるいは胡乱な僕だけがそーだったのかもしれないけど、でも怒らない怒らない。きっと僕だって男のおっさんがサインしてって言って来たら、ニコニコニコッとはたぶん絶対にしないから。

 サインは達筆でなかなか壮観。僕の名前が入ってしまったから、古本屋ではまず価値が出ないだろーね。でも意識して「名前は書かないで」なんて行ったら、「後で売る気だなー、貴様ー」ってな具合に机を投げつけられかねないので、おとなしく主催者の誘導に従って整理券に名前を書いて渡した。もし僕が浅田さんより有名になったら、僕の名前と浅田さんの名前が入ったサイン本の価値は、グワーっと上がるんだろーけどなー。500年は先の話だろーけど、ね。


【5月8日】 「花キューピット」のCMに3DCGの「ミッフィーちゃん」登場。「うさこちゃん」の名前の方が通ってるのかな、ディック・ブルーナの絵本に出てくる口が×印になったウサギのキャラクターが、立体感のあるCGになって高原の牧場を歩いている。歩いているけど元が平面でかつ横顔とか後ろ姿とかを見せないキャラクターだから、ナナメに歩いても顔や体はずっと正面を向いたまま。それがトトトーッと画面の手前に近づいてくるからちょっと不気味。平面では気にならなかったのに、立体になるとあの巨大な頭がすっげー重たく見えて来る。

 平面キャラの3DCG化では、富士ゼロックスの「ドラえもん」も相当に違和感があったけど、アニメでおしゃべりとかしぐさをかを見ていたから、それと同じおしゃべりやしぐさをするCGに、だんだん慣れていった。でも「ミッフィーちゃん」のよーな無表情キャラは、リアルになっても全然カワイクならないんだよね。質感をまだしもフワフワなヌイグルミのよーにすれば、「サンリオ・ピューロランド」にいる(いるのか?)「キティーちゃん」の着ぐるみっぽくなって、親近感もぐっと増したのに、「花キューピット」の「ミッフィーちゃん」は、なんか陶器かコンクリートのよーな質感だから、無表情さがなおいっそう引き立ってる。

 聞いた話では、ブルーナのキャラクターを管理しているところが、著作権とゆーか商標権とゆーか、とにかくキャラの姿形から色にいたるまで、すっげー厳しいところで、印刷物として使うときだって、あのくすんだグリーンとか、オレンジっぽい赤とかの色を出すのに、どこもとっても苦労するんだとか。テレビの場合だと、ブラウン管の色調整1つで色がガラリって変わっちゃうから厳密な管理は難しーんだろーけど、せめてカワイサ(かわいいのか?)だけは保ってちょーだい。でもそのうち3DCGの「ミッフィーちゃん」をかわいいって思える、そっちしかカワイイって思えない子供たちが増えて来るんだろーね。ゲームやら何やらで3DCGのキャラによーけ(=たくさん)接するよーになった現状では。3DCGトトロ・・・うーんカワイイかも。

 「新世紀エヴァンゲリオン」夏の完結編のサブタイトルが決定。その名も(じゃーん!)「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」(がーん!)。これまでも「サンダイバー」から「マグマダイバー」、「世界の中心で愛を叫んだけもの」から「世界の中心でアイを叫んだけもの」といった具合に、SF作品のタイトルからサブタイトルを持って来た回はあったけど、「まごころを、君に」にはヤラれたって気がしたねえ。だってこれ、あの大ベストセラーSFが映画化された時の邦題だよね。たしかそう、ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」ってSFの。氷室京介はそのままま「アルジャーノンに花束を」ってアルバムを出してたけど、ここまでヒネるなんて流石はガイナックス、オタクの心のカユいところに猫じゃらしを近づける術を心得てる。

 しかし「Air」ってのは何だ? ニフティのFGAINAXじゃあ素早く解説会が始まっていて、「歌曲」とか「アリア」とか「旋律」とかいった音楽用語としてこの「Air」をとらえている。「DETH編」に挿入された弦楽4重奏のシーンを見ると、確かにそんな意見に与したくなって来るけど、ここはやっぱりプレイオフ真っ最中のNBAに敬意を表して、「Air」はすなわちマイケル・ジョーダンなんだとらえて、完結編を予測することにしよー。

 となればシナリオはもうキマリ。空を舞うウナゲリオンが拘束具を外すと、そこから現れたのは「バックスバニー」やら「ロードランナー」やら「トゥイーティー」やらの「ルーニー・トゥーン」軍団。コミカルなアニメ出身とゆー特徴を活かして、ゴムのよーに体をぐにゃぐにゃさせたり潰されたって再生したり、ガケから脚を踏み出せば一瞬止まってそれから落ちるって物理法則に逆らう動きを見せたりと、シリアスなエヴァのキャラクターたちをキリキリ舞いさせる。しかしだ。そこで我らがエヴァ初号機も拘束具をベリベリと引きはがし始めると、そこからは全身を汗で光らせたMJ、そうマイケル・ジョーダンとそっくりな素体が現れたのだ。

 零号機からはスコッティ・ピッペン、弐号機からはデニス・ロッドマンとそっくりな素体が登場。今世紀最強のトライアングルが炸裂すれば、さしもの「ルーニー・トゥーン」軍団もかなわない。3人の足下にひれ伏して許しを乞うと、流石はMJさらりと水に流して味方に引き入れ、世界一有名なネズミとアヒルと犬と熊とダルメシアンとその他諸々が居並ぶ「ゼーレ」つまりは「ディ○ニー」へとなぐり込み、ついでにディズニーの軍門に下った「ト○ロ」やら「ナ○シカ」やらをケチらして、アニメ世界一の看板を手にするのだ。ガンバレMJ、ガンバレ僕らの「エヴァンゲリオン」ってなエンディングに、「まごころは、いつだって君の中にある」とかなんとかいったナレーションが被ってエンドロールが始まる。どうだこれなら誰からも文句は・・・・出るよね。だってタイガー・ウッズが出てないもん。

 アホな妄想はよして、真面目に「創」6月号を読む。、哀しいけれど新聞とか一般の雑誌じゃあ、香山リカさんと大塚英志さんにMの事件に関してこれだけのスペースを裂けないんだよね。大塚さんが喋った「ある種ものを考えているつもりになってるじゃないですか。ただその思考が、浅い深いではなくて、その世界できれいに完結しちゃってる」って言葉に、知識を求めて広がっている、外に向かって進んでいるようで、実はいろいろなところから自分の内に知識を吸い込んでいるだけなのかもしれないと、自分の行いを振り返って考える。

 あと「ロフトプラスワン」5月のスケジュールが載っていて、20日の「放送禁止大学2」が宅八郎さんをホスト、元「SPA!」編集長のつるし一彦さんをゲストに迎えたトークショーで、扶桑社を退社した鶴師さんがどんな不満をぶちまけるのか、行って聞いてみたい気持ちがむくむくと起こってくる。けれどももしフリで入ったフリをしたのがフジサンケイの人間とバレて、壇上に引きずり上げられて吊し上げくらうのも怖い(って自意識過剰なだけなんだけど)から、どーしたものかと迷っている。渡邊週刊アスキー編集長も顔を出して、タッグとゆーか宅さんを入れた3人で吊し上げられたら(って自意識過剰なんだってば)、やっぱ相当に怖いよね。


【5月7日】 黒岩徹さんの「イギリス式人生」(岩波新書)を読んでいて、昨日テレビのニュースで見たばかりの「ハンフリー」とゆー猫のエピソードを見つける。ダウニング街10番地、つまりは英国首相官邸に住み着いている雄猫がハンフリー。89年10月からからもう8年近く住んでいるから、サッチャーからメイジャーへと続いた保守党政権の後半生をつぶさに見てきた、まさに”歴史の生き証人”ともいえる猫である。人じゃないけど。

 そのハンフリー、一時期3カ月ほど行方不明になって、王立軍医カレッジで保護されていたことがあったそーだけど、戻って来た時にカメラマンとジャーナリストが20人も官邸に集まり、官邸の方でもハンフリー自身の声明を出したそーな。イギリス人のユーモア精神ってのもなかなか粋なもんだねー。テレビでやっていたのは、そのハンフリーが政権交代のあったこの数週間、官邸から行方をくらましていて、新首相の奥さんが大の猫嫌いだったこともあって、すわ政権交代を予見したものかといった見方が上がっていたとゆー話。けれども新首相は隣の蔵相官邸に住むことになったそーで、ならば安心と思ったのか、先日ひょっこり帰って来た。やっぱ猫って頭の良い(要領の良い)動物なんだなー。

 ソニー・ミュージックエンタテインメントの決算発表。ドリームズ・カム・トゥルーのリリースがなかったり、新人やら中堅の新譜のリリースを絞りに絞った関係で、売り上げも利益も減益となったけど、連結ではかのソニー・コンピュータエンタテインメントの大躍進が寄与したためか、売り上げと当期利益が増収とゆー、今のマルチメディア時代を象徴するかのよーな内容となった。もっとも本業のレコード部門でも、今年はいよいよドリカムの新譜が出るし、チャラやパフィーやジュディ・アンド・マリーやらが台頭して来た上に、川本真琴やら知念里奈やら新人アーティストもじわじわと伸びているから、今年はなんとか増収は確保できるって見通し。しかしドリカム頼りって体質は、つまりはドリカムがいないと大変なことになるって訳で、またぞろ移籍話なんて流布すれば、引き留めに入ったSMEじゃー何億、何十億なんてお金を積み上げて、引き留めにかかることになるんだろーね。

 産経新聞の夕刊が何を血迷ったか「もののけ姫」の大特集を組んでいる。テレビ欄の下に掲載された全10段の広告を見て、「公開まであと2カ月に迫ったんだなー」なんて思っていたら、中には何と5ページにもわたる「もののけ姫」特集が掲載されていて、そのあまりの分量にひっくり返った。別に「もののけ姫」は嫌いじゃなく、むしろこんなに沢山の「もののけ」の記事を読めるなんて、アニメファンとして喜ばしいことこの上ないのだが、しかし「もののけ姫」に限らずスタジオ・ジブリ作品と言えば、日本テレビが製作に深く関わっていたんじゃなかったっけ? 公正中立とはいっても新聞だって人の子、資本主義の子。ましてやメディアミックスはお家芸ってフジサンケイグループが、別のメディアコングロマリットに所属するテレビ局が製作に関わっている映画に、どうしてこれほどまでに肩入れするのかが理解できなかった。

 宮崎駿監督のインタビューに音楽と歌の担当者インタビュー、さらには過去の宮崎作品のフィルモグラフィーとか、「ディズニーを超えた」ってな評論家のコメントとか、本家本元の徳間書店の雑誌「アニメージュ」よりも深くて濃い内容の記事が載っている。コンテンツとして優れたものならケイレツなんて無視するもんだろーし、実際に明日付けの表の新聞でも、扶桑社からのドロップアウト組が多数所属する「週刊アスキー」を、大きく企画で取りあげている。しかし一般紙が5ページも特集するなんて、よほど自社の利益に結びつかない限りやるもんじゃない。あるいは「もののけ姫」の製作に関わっている電通あたりが、広告絡みで仕掛けたんだろーかと、そんな邪推をしてみたくもなった。事実は如何に? 怖くて聞けない。

 毎日新聞で四方田犬彦さんがフランスのアニメ事情についてリポート。表紙に「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイが描かれた「TSUNAMI」って雑誌と、「天地無用!」の魎呼が描かれた雑誌が写真で紹介されていて、そのしっかりとした作り(っても表紙だけだけど)に読んでみたいなーって思いにとらわれる。でも僕フランス語は読めないんです、1語たりとも。英語も読めないし中国語もスペイン語もイタリア語もドイツ語も読めないんだけどね。

 四方田さん曰く「パリ大学で日本語のクラスを取る若い世代がもっともしりたがっている日本とは、(中略)もっぱら『攻殻機動隊』や『めぞん一刻』の日本であることは、いまや否定できない事実であり、彼らはやがて次の世代の日本研究を担う」とか。アニメファンとして悪い気はしないが、しかし「いたずらに日本の現代思想や美術の喧伝輸出を志したとしても、行き着くところは知識人の自己慰撫で終わることであろう」と言われると、一方で文学ファン、美術ファンでもある身として、ちょっとばかり寂しい思いにもかられる。

 これを見るためにビデオを買ったといっても過言ではない(ホントは「エヴァ」の再放送を撮るためだけど)「少女革命ウテナ」を帰宅して観賞、先週とうって変わっての、とゆーよりは先々週に戻ったよーな七実ギャグのオンパレードに、30分を感動のしっぱなしで過ごす。まずは廊下を走る暴れ馬、校庭の暴れ牛に暴れカンガルーと、反復しながらスケールアップしていくギャグの見本のよーな展開に拍手、次いで誰に怨まれてか次々と謎の事件が降り懸かる七実に、とりまき連中から「自分の手は汚さない方」と言わせたりするシナリオに喝采、そして上半身裸で飛び出して、カンガルーを一撃のもとに倒した冬芽に万歳。西園寺が久しぶりに出てきたが、あっさり無視されていたなー。

 あまりに爆裂なギャグキャラぶりに脳天を直撃されて、七実萌えとなった人が今は一番多いかもしれないけれど、来週はいよいよ生徒会のお姉さま、有栖川樹璃をフューチャーしての30分となるみたいだから、オープニングでちょっとだけ見せるその凛々しいお姿にフルタイムで接し、心惹かれて樹璃萌えとなる人が、きっと大勢増えるだろー。すでにオープニングで目を付けていた人も、根っからの三石琴乃ファンも、期して次週を待たれよ。三石さん出てるけど「MAZE★爆裂時空」は眠いからビデオだ。


【5月6日】 近所の古本屋で見つけた水樹和佳さんの「エリオットひとりあそび」(ぶーけコミックス)を読み始めて止まらなくなり、午前2時くらいまでかけてじっくりと読む。「樹魔・伝説」(集英社)とかを読んでてっきりSFの人なんだと水樹さんのことを思っていたら、意外にも現代(といってもベトナム戦争が海の向こうで続いていた1960年代末から70年にかけてのことなんだけど)を舞台にした、シリアスなラブストーリーだったのでちょっと驚く。それでもSF作品で見せる繊細な人物描写がいかんなく発揮されていて、複雑な家庭に育ってひとり自立したように感じていた少年の、ときおり見せる子供っぽいところとか、それでも強い自制心とかを、さまざまな恋の物語を通して見せてくれた。

 あれだけさんざん「まんだらけ」やら「ブックオフ」やらを探し回って見つけることができなかった「エリオットひとりあそび」が、家から一番近くにある古本屋に上下各200円で出ていたとは、まさに灯台もと暗しってことで、これも日頃の行いの悪さがたたっているのだと、怠惰なわが身を振り返って反省する。古本屋ではほかにふくやまけいこさんの「ゼリービーンズ」を購入。ジェイン・メンデルソーンの「アメリアの島」(早川書房)に登場する女性飛行士のアメリア・イヤハートと同じ名前を持った女性が主人公のコミックで、「アメリアの島」を読んで妙に読み返したくなって、実家に持っているにも関わらず買ってしまった。おまけに今日の読売の夕刊に、プロペラ機でアメリア・イヤハート(飛行士の方ね)の冒険を再現するって女性飛行士の話が出ていて、重なる時には重なるもんだと、シンクロニシティーの不思議さを実感して身震いする。

 放送批評懇談会が刊行していた「放送批評」がリニューアルした新雑誌「GALAC(ぎゃらく)」を購入。82ページしかない雑誌なのに780円もしやがるぜって、ちょっとだけプンスカするが、誰あろう静岡のセンセイが編集委員を務めている雑誌、おまけに表紙がプリクラに向かう女子高生とあっては、買わない訳にはいかないじゃないですか。でもどうせならプリクラの女子高生は、台の上に乗って腰をかがめているところを、思いっきりローアングルで撮って欲しかったなあ。ってそれじゃあ「放送批評」じゃなくなるって。ああもう「放送批評」じゃないのか。だったらローアンのプリクラでもいいんだ。じゃあ次の表紙は地下鉄のソックスはきかえ娘ね。

 さて「GALAC」、僕のような世代にとって全然ありがたみのない吉本隆明さんを特集っぽく持ってきた編集姿勢に、いわゆる売れ筋をねらった雑誌じゃないんだなって感想を抱く。そりゃあマスコミにいれば吉本さんの名前も業績も位置づけもなんとなく解っているけれど、普通の人にとっては「ばななのお父さん」でしかないもんね。もっとも吉本ばななさんを巻頭に持ってきたところで、飛ぶように雑誌が売れるほどには、ばななさん本人の影響力も小さくなっているよーな気がするけど。

 日テレの五味一男さんとフジテレビの亀山千広さんによる対談は作り手としての自意識がうかがわれて面白かった。ドキュメンタリーでもないニュースでもないドラマやバラエティで、チャカシとしてのフィクションをそれこそ確信犯的に用いて悪びれない強い自意識には、売れてないなら思いっきりバケればいいものを、「工業新聞」の題字にとらわれて飛べずにいる、どっちつかずの中途半端な某新聞に所属する者として、なんだかとても惹かれるものがある。とはいえ新聞はフィクションではいけない訳で、だったらテレビマンユニオンの是枝裕和さんのよーに、じっくりと腰を据えて良質のドキュメンタリーを作りたいと思っても、今度は時間と金と人出がないと来た。どーすりゃいいの、まったく。どーにもならんのか、ほんとに。

 パイオニアLDCのリリースを書く。すっかりDVDに話題を奪われたLDが、この5月から相次いで発売される強力タイトルを軸にして、でっかいキャンペーンを展開するって内容。5月は「ツイスター」、6月は「ミッション:インポッシブル」と去年のヒット作のLD発売が続き、そしていよいよ7月4日、この日付にもっとも相応しいあのタイトル「インデペンデンス・デイ」がリリースされる。これってなんかとっても「粋な計らい」、だよね。

 クイズは簡単「レーザーディスクBIG○キャンペーン」の「○」に数字を入れて送るだけで、1等1人様には43型プロじぇくしょんテレビにドルビーデジタルデコーダー内蔵AVアンプにコンパチブルLDプレーヤーの「リビング劇場システム」が当たる。期間は5月25日から7月31日までで、インターネットのホームページでも募集するみたいなので、クイズマニアはゴーだ。


【5月5日】 グレッグ・ベアの「火星転移」(ハヤカワSF文庫)をようやく読了。すっげー力を持ってしまったばっかりに、地球から忌み嫌われ戦いを挑まれた火星人が、屈服するか戦い抜くか、それとも別の道を行くか悩んだ挙げ句に選んだ解決法に、感動よりも憤慨を覚えてしまうのは、僕が好戦的なためか、それとも人命を預かっていない無責任さによるものなのか。やられたらやりかえすのが流儀の米国で、この結末がどのように評価されたのか是非知りたい。しかしこうしたSFに火星版「月は無慈悲な夜の女王」を感じ取るよりも早く、「スターレッド」や「超人ロック」を思い出してしまう僕って、活字SFファンである以前に、やっぱ漫画ファンでありアニメファンなんだよなー。S

 家を出て目黒美術館の区民ギャラリーへ。某ネットで知り合った人がグループ展を開いているとゆーことで、その案内を頂いていたので電車を乗り継いで見に行く。本当は目黒駅から行くのが早道だったんだけど、何を勘違いしたのか恵比寿からでも近かったよーな記憶があって、うろ覚えの頭の地図と方向感覚だけを頼りに歩き始める。途中で防衛庁だかのだだっ広い施設にぶつかって、右へ行くのか左へ行くのか迷った果てに右へと向かってこれが大失敗。もと来た方向へ戻る感じになって、挙げ句細い道に迷い込んでそのままずーっと歩くと駒沢通りにぶつかって、千代田生命なんかがある地下鉄日比谷線の中目黒駅まで来てしまった。

 そこから記憶を頼りに清掃工場の煙突を探すと、はるか彼方に霞む空をバックにそびえる煙突がへんぽんと見える。妙に蒸し暑い空気をかき分けて、川沿いに進むことおよそ15分。這々の体で目指す区民ギャラリーへとたどり着き、効いた冷房に人心地付く。区民ギャラリーで展覧会を開いていたグループは「笠木組」と言って、笠木絵津子さんが開いたカルチャースクールの受講生たちが主要なメンバーとなって立ち挙げた、ほとんどがプロではない人たちによる集団だったと聞いている。それでもクラス会みたく集まって騒ぐとかいった活動ではなく、ちゃんとした創作活動を行っていて、これまでに東京都美術館や世田谷美術館で、年に1回くらいのペースでグループ展を開いている。

 実は某ネットで知り合った人とはリアルでの面識はなく、会場で毎回、おそらくこの人がそうだろうと思う人をみかけても、気恥ずかしいので声はかけなかった。今回も会場いいたような気がしたが、まあいいかと思ってそのまま会場内をぐるりと3集ばかり周り、30分ほどで辞去した。ほとんどが専門教育を受けていないという意味での素人さんばかりとはいえ、真面目に取り組んでいる人ばかりだけに作品もおちゃらけたものはなく、平面作品もインスタレーションもそれなりにキマっていた。

 キマってはいたのだが、しかしプロの作品を見にいくのと違ってこちらが妙に構えてしまうのは、芸術としての価値でも良い、商業的価値でもいいから、なんらかの価値観のモノサシを、グループ展の会場にあるプロともアマチュアともつかない人たちの作品に、当てはめることができないからだろう。もちろん自分自身が自分自身の経験と知識で造り上げたモノサシを持っていれば良いだけのことなのだが、不勉強かつ不見識かつ不純な曇った眼(まなこ)では、なかなかに純粋なモノサシを持つことは難しい。結局パッと見の印象で「カッコいーじゃん」「カワイイーじゃん」「キレイだねー」ってな程度の印象しか抱けないところに、作り手にもそれを伝えるメディア(媒介)にもなれずに、中途半端なままでいる自分の甘さ、無責任さがあるのだろー。

 区民ギャラリーを出て目黒駅へ。途中でカレーハウス「COCO壱番屋」に寄って、名古屋近辺ではお馴染みのサラリとしたルーのカレーを食べる。たしか一宮市に本部があった「COCO壱番屋」は、辛さの段階を挙げたりライスの量を100グラム単位で増やしたりできることで、名古屋近辺でつとに知られたカレー屋さん。上の具もカツやイカリング、ハンバーグ、ソーセージ、カラアゲ、野菜、ほかいろいろなものから選ぶことができ、お腹が空いた時などはご飯をだいたい600グラム、あと具を3品ばかり追加してモリモリ食べていた。東京地区でも何軒か店を構えているとは聞いていたけど、半年ばかり前に用事で目黒に行って、「COCO壱番屋」を見つけてからは、目黒に出ればたいていそこでカレーを食べることにしている。あとは「ヨコイ」「そーれ」風タレかけスパが東京でも食べられればグッドなんだがなあ・・・。

 新宿に出て本屋で鬼頭莫宏さんのコミック「ヴァンデミエールの翼」(アフタヌーンKC)を購入。翼の生えた自動人形の少女に関わった少年たちの、それぞれの成長の物語を描いた連作集、ということになるのかな。ヴァンデミエールが何故、何のために作られて、それが必ず持ち主を裏切って少年に荷担するのかがつまびらかにされておらず、どんな謎が隠されているのかとてもとても気になるけど、川原由美子さんの「観用少女」が、出自や成り立ちが明らかにされないまま、買い手の心を写す鏡のような存在として描かれていくのと同様に、少年が大人へと踏み出すその際に、そっと背中を押す存在を象徴するものとして、翼の生えた自動人形の少女が用いられたのだと、勝手に自分では想像している。なかなかに気に入った1冊。4人のヴァンデミエールではやっぱ最後の格闘少女が好きですね。次巻が待ち遠しいが、しかし寡作な人のよーだしなー。


【5月4日】 実家を朝出て名古屋駅からJRに乗って岡崎へ。現代美術の画廊で、最新号の「美術手帖」にも紹介されていたノブギャラリーに行く。昨日の豊田市で驚いていたら、きっと岡崎では卒倒するんじゃないかと思うくらい駅の周りには何にもなく、本当にこれが徳川家康の城下町かと、降りた誰もが呆然とするに違いない。実は岡崎は名鉄の新岡崎の方が繁華街に近くって、岡崎城もデパートも商店街もオフィス街もぜんぶそっちの方に集まっている。JRの方は東海道線とゆー大動脈の駅ながら、繁華街からは遥か遠く離れていて、駅前には高いビルは1軒もなく、改装したばかりのよーなピカピカした駅舎だけが目立っている。

 角を曲がって細い路地を抜けると目指すノブギャラリーが見えてくる。古い建物を改装したギャラリーは天井が高く空間も広くて気持ちが良い。2階が画材屋とオフィスになっているらしく、ドアを開けて中に入ると、上からネット方面で有名なアシスタント・ディレクターの内藤美和さんが降りて来た。数回メールのやりとりをしたことがあったため、こちらはすぐ内藤さんだと解ったが、なにせこっちは結婚式の流れだったため着ているスーツは当然黒、おまけにシャツの代わりに黒いセーターを着ていたからものだから、とっても胡乱なヤツに見えただろー。

 現代美術の話とか本の話とか1時間くらいしていると、ヒゲを生やした僕よりもっと胡乱なオジサンが登場。ノブギャラリーのボスだと紹介されてちょっとビビるが、しゃべりはじめるとふつうのオジサンで、おまけにしゃべる言葉が大学時代にさんざん聞き慣れた三河弁のアクセントなのでホッとする。有名画家の何千万円もする絵を扱って、それがボコボコと売れていくよーな銀座当たりの老舗画廊と違って、地方の都市で決して一般的に知られているとは言えない現代美術をずっと扱って来た人だけに、筋とゆーか信念はさすがにピッと通っている。

 老舗の画廊が代替わりしても同じ作家を世襲制みたく扱っていくことには抵抗感があるよーで、自分が気に入った作家と何10年もつきあって、いっしょに時代の空気を呼吸しながら歳を重ね、1代限りで終わるとゆーのが画廊ってもんじゃないかって、そんな話を聞かせてくれた。1時間くらい話をしてからギャラリーを辞去し、JRに乗って再び名古屋方面へ。金山で地下鉄に乗り換えて名古屋港方面に向かい、ノブギャラリーで教えてもらった荒木経惟さんの写真展「A人生」を、名古屋港にあるギャラリー「現代美術・名古屋」に見に行く。

 地下鉄の階段を登るとすごい人混みにしばし呆然。人混みが向かう方を見ると、ペンギンで有名な「名古屋港水族館」の入り口が見えた。スピーカーからでっかい声で「×時××分からの入場整理券を配布中です」とアナウンスが流されていたから、中はもっと凄い人混みに違いない。せっかく名古屋港に来たんだから、ついでにペンギンも見たいなーと思っていたけど、これでは無理と早々にあきらめて、ギャラリーがある建物へと向かう。階段を登って2階にある「菊池君の本屋」で有名なビレッジ・ヴァンガードを通り過ぎ、3階にある「現代美術・名古屋」に入ると、そこには倉庫風の外観にピッタリの広いスペースが設けられていて、荒木さんが撮った主に陽子さんの写真が120点ばかり並べられていた。

 入り口も窓もテラスへと向かうドアも開けっ放しになっていたためか、なかはなんだか蒸し暑く、黒づくめの身には正直言ってキツかった。写真も写真集なんかで見たことのあるものばっかりで、とくに感動はしなかったけど、空をすっげー色で塗りたくった「色景」のシリーズだけは、写真集では見られない大きさでプリントされていたこともあって、ちょっと圧倒された。あと荒木さんの作品とは別に写真や現代アートの作品が展示されていて、中にシンディ・シャーマンの「アンタイトルド」のポートレートが25万円で出ていて驚く。あと河原温さんのいろんな場所から出した絵はがきを10枚集張り付けた作品も、たしか25万円だったかで出いて心惹かれる。それとも1枚の絵はがきが25万円だったのかな。

 名古屋駅まで戻って菱信ビル地下のスパゲティー屋「チャオ」で名古屋式タレかけスパを食べる。幾度か説明したよーに、油でいためたぶっとい麺にデミグラソースをカタクリ粉で解いたよーなドロンとしたタレをかけたのが名古屋式タレスパ。栄の「ヨコイ」と新栄の「そーれ」が有名だけど、「チャオ」のもそんなに違わない(とゆーかほとんどいっしょの)。いつもオジサンたちで混んでる「ヨコイ」や「そーれ」に比べると、「チャオ」はパスタ屋さん風の店構えで店内も広くてオシャレだから女性客が大勢いる。味にうるさい女性たちが、かの名古屋式タレかけスパをもりもりと食べている様を見ると、もしかしたら東京あたりに持っていっても、結構人気が出るのかも知れないと、味噌カツに天むすといった物を好む名古屋人の一風代わった味覚を忘れて、無謀なことを考えてしまった。

 家に帰ってビデオに撮っておいた「エコエコアザラク」を見る。久々に「ねらわれた学園」の清水厚さんが監督を務めていて、相変わらずの凝ったカメラアングルに引き込まれる。いきなりのブルマーアップにはサービス精神を感じたけど、画面の両端で女性が向かい合ったロングとか、手前に電柱を入れて奥に登場人物を配してななめ上から見おろすシーンとか、とにかく気になるカメラアングルばかりで、1シーンたりとも見逃せない。もしもビデオを出すなら、清水監督の回だけセレクトした巻ってのを出して欲しーなー。


【5月3日】 5時に起きて6時に家を出て7時の新幹線に乗って名古屋へ。朝早いから余裕で座れると思ったら大間違いで、自由席は満席、デッキには人がぎっしりで仕方なく通路に立って名古屋までの約2時間を過ごす。9時に名古屋着、地下鉄と名鉄豊田新線を乗り継いで豊田市へと向かうのだが、名古屋をちょっとだけ出た赤池を過ぎて線路が地上に出ると、相変わらず周りは緑色した丘陵地帯が続いていて、それがだんだんと濃くなっていくものだから、初めて乗った人は、世界に冠たるトヨタ自動車の城下町へと向かう電車だとは、とても信じられないらしー。

 豊田市に到着すると、駅前にそびえたつそごうがまず眼に入るのだが、土曜日でおまけに休日だとゆーのに人通りはほとんどなく、道路も全然空いていて、まるで休日の大手町とか丸の内とかを見ているよーな感じを受ける。トヨタ自動車がゴールデンウイークで長い休みに入っているからなんだろーね。時間があったのでそごうを見学、本屋に「エヴァ」のコーナーが出来ているのを見ると、人気は何も東京だけじゃないんだってことが良く解る。別棟には無印良品の店もあって、そこが結構女の子たちで賑わっていて、東京とあんまり変わらない光景に、豊田市だって見捨てたもんじゃないねって安心する。

 タクシーに乗って豊田キャッスルへ。名古屋では一番のホテル「ナゴヤキャッスル」の姉妹店としてオープンした豊田キャッスルだけど、何年か前に見た時の記憶よりこぢんまりとしていて、これじゃー神田あたりにあるビジネスホテルと大きさだけなら変わんないなーと思う。向かいにはパチンコ屋が建っていて電飾をバリバリいわせてる。きっと夕方になると、浴衣を着たおっさんたちがスリッパペタペタさせながら、娯楽を求めて道路を横断してパチンコ屋へと向かんだろー。なんか温泉宿の射的場ってな雰囲気。もちろんホテルだから大浴場も卓球場もないんだけど。

 つとに派手だといわれる名古屋の披露宴に比べると、豊田は三河だから割と地味。式を挙げた当人たちも派手な儀式とか形式化したイベントを嫌っていたよーで、ケーキ割りの代わりに酒樽の鏡割りをやったり、キャンドルだといたずらされるからキャンドル風のアルコールランプに点灯して回ることにしたり、ラストの恥ずかしいハート型のキャンドルを1本のローソクに変えてみたりと、いろいろ工夫をしていた。さすがに引き出物はタオルの風呂敷に皿にワインほか7点ほどあったけど。

 やっぱり唄うんだなアムロちゃん。新婦の中学時代の友人4人のコーラスで、カラオケで鍛えたのかそれほど聞きづらくはなかったが、問題は新婦の妹がその婚約者と唄った「切手のない贈り物」。妹がピアノ、旦那候補がギターを弾いてカッコいーなーと思ったけど、唄い始めるととズレる音程、ハズれるハーモニーに頭が痛くなる。が、すぐに甘かったことに気が付く。新婦の職場の友人が演じたのがかの名曲(!)「てんとう虫のサンバ」、それも演技付き。披露宴の途中でトイレに立った時、廊下の片隅で女性軍がなにやらウチワのよーなものを降りながら踊りを合わせていたが、それが「てんとう虫のサンバ」の踊りだったとその時気がついた。誰かの披露宴で再現したいと思うので、希望者は是非1声かけて下さい。

 母校の教授が来ていたので挨拶。某筋から仕入れた情報をもとに「さいきん、学生を卒論で落としまくってるそーですね」と聞く。なんでも今年の3月の卒業率は5割を切ったそーで、中には就職も決まっていた学生がいるから、困った親がどなり込んで来て、4月までごちゃごちゃしていたそーな。かくゆう僕も口頭試問で卒論の書き直しを要求されて前書きの部分を書き直して送り、かろうじて及第点をもらって卒業した口。「今だったら卒業させてもらえたでしょーか」と聞くと、「うーん」と難しい顔をしたので、これはヤブヘビだったかもしれないと冷や汗が出る。しかし流石に落としたり書き直しを命じるだけあって、9年たって本人がすっかり忘れていた中身のことを覚えていたのには驚いた。

 話を聞けば、意識して厳しくしているのではなく、就職が決まっていなかったり単位が足りなくて卒業できないことが決まっているため卒論を書かなかったり、書き直しを命じても書き直しをしなかったりする人がいて、結果卒業率が落ちているのだとか。あんまり学生を残すと、たった3人で40人から50人分の卒論を指導して精読して審査しなくちゃならなくなるから、ホントは卒業させたいらしーから、まだ学生の某筋には頑張って卒論を書きなさい、されば道は開かれんと伝えることにしよー。って1週間徹夜しただけで卒論書いて挙げ句に書き直しを喰らった僕の言葉じゃ説得力ないよね。


【5月2日】 グレッグ・ベアの「火星転移」(早川書房)の上巻を読み、どうしてこんなに長いのかとちょっとだけイラつく。このところポンポンとテンポよく話が進んで、300ページもあれば終わってしまうヤング・アダルトばっかり読んでたから、400ページが終わってようやく物語の端緒に付くって感じの小説に、すんなりと入り込めなくなっている。それでも「火星転移」は、各章で起伏に富んだエピソードが提示されており、上巻の最後にもなかなかに期待を持たせるヒキがあって、即下巻って感じに読み継いでいけそーだから、まだ良い方なのかも。

 それにしても、最近のSFってどーしてこんなに長いんだろー。「火星転移」の場合だと、地球と火星の体制の違いとか考え方の違いとかを描写していかなくっちゃいけないし、ナノのよーなテクノロジーについても説明しなくちゃいけないから、長くなるのは仕方がないんだろーけど、「女王天使」に「大暴風」に「大いなる旅立ち」に「緑の少女」ってな具合に、これだけ上下組の翻訳が続くと、たくさん売れるよーに、ワザと長いのを選んで上下組にして出版してるんじゃないかって、そんな邪推までしたくなる。これは冗談としても、長いSFが多すぎるってのは、これからSFを読もうかって人に作品を薦める時の、ちょっとした敷居になっているよーな気がしないでもないんだが・・・・。

 ちょっと浮気して清水玲子さんの「輝夜姫」(白泉社)の第9巻を読む。スリムな女性を描かせれば当代1って思っている清水さんのキャラクターのなかでも、やっぱり晶(玉鈴)はピカ1の美しさ。実写化したら誰が演じることが出来るだろーって考えても、適当な人がちょっと思い浮かばない。「レオン」のジャン・レノをモデルにしたんじゃなかろーかの高力士だったら、やっぱりジャン・レノがピッタリなんだろーけどね。ヒゲ伸ばしてるときのコニタンって話はないか。それにしてもモノホンの玉鈴が大変なことになっちゃった時に、落涙する高力士ってばすっげー不気味。あと「岡田まゆ」っていったい誰だったっけ。あんまり間が開くと、ストーリーやキャラクターが思い出せなくなるから、出来れば次巻は年内に出してね。

 アスキーに行って取材。「週刊アスキー」の渡邊直樹編集長に創刊に当たっての意気込みを聞く。両方が表紙って前代未聞の雑誌の体裁が話題になっていて、きっとすっげーコダワリがあるんだろーなって先入観バリバリで聞くと、意外にも1年を期限に見直す可能性があるとゆー答えが帰ってきた。タテ書きに象徴される文化系な文化と、ヨコ書きに象徴される理系な文化が混在している今とゆー時代を、具現化してみせよーとしたのが両開きとゆー雑誌の体裁。しかし時代の流れがこのまま一気にヨコ書きの文化の方へと突き進めば、1年後にはぜーんぶヨコ書きって雑誌に衣替えする可能性もあるとゆー。もちろん時代が昔に回帰して、全部タテ書きになるって可能性もないわけじゃないけどね。

 あとヨコだからヨコ的な人、タテだからタテ的な人を並べるのかと思っていたら、ヨコにタテ的な人を持ってきたり、タテにヨコ的な人をもってきて、ズレとゆーか違和感とゆーか、とにかく読者に「おやっ」と思わせるよーなことをするらしー。10ページくらいの読み物的な記事は読みやすいタテ、4ページとか6ページとかのトピック的、ビジュアル的な記事はグラフィックとの組み合わせが生きるタテに持って来るって手もあるね。創刊ゼロ号ではヨコに持ってきた記事とタテに持ってきた記事にヨコならなぜヨコか、タテならなぜタテかって主張が感じられなくってとまどったけど、中身がギッシリつまった創刊号では、きっと「おおっ」と思わせるよーな記事を前から前から(だって両表紙なんだもん)並べてくれるだろー。

 帰りがけに「週刊アスキー」編集部をのぞくと、ネット上に公開されている「創刊への道」的な記事に使われているガランとした編集部はもはやなく、机がびっちりと並んで男性女性がワイワイガヤガヤ働いている、活気ある編集部が出来上がっていた。およそ40人のスタッフは、アスキー組、移籍組、新規採用組とおおまかに3種類の人たちが集まっていて、奥の方には前にレインボーブリッジを窓越しに見ながらいろいろと話を聞いたことのある人もいた。そーだ編集長の渡邊さんだって、ちょっと前まで窓越しにレインボーブリッジや銀玉ビルを見てたんだった。

 レインボーブリッジそばの会社は表の会社とまんざら関係がないわけじゃなく、その意味では「週刊アスキー」は「身内の敵」ってな位置づけになるんだけど、サブカルってジャンルで突っ走って突っ走り過ぎて、気が付いたら周りに誰も、執筆者も読者もいなくなっていた某雑誌の眼を醒まさせるという意味で、「週刊アスキー」の旗揚げは決して悪いことじゃーない。あとは某雑誌がちゃんと眼を醒まして起き出して、再び自分の脚で走り始めることができれば、身内としては喜ばしー限り。「週刊アスキー」には初台の空から、浜松町に向かってポポンポンポンと天狗火を投げて((C)柴田よしき「炎都」)もらい、尻に火をつけてやって頂きたい。類焼がこっちにも及んで共に丸焼けって事態にならない訳じゃないけどね。

 明日5月3日は友人の結婚式で豊田市に行く予定。日帰りはできないかもしれないので更新はなしね。でも遠いよなー豊田キャッスル。周りは田圃だったっけ?


【5月1日】 うだうだと午前1時過ぎまで本を読んでいて眠れなかったので、流れでテレビ東京の深夜アニメ「MAZE★爆裂時空」を見てしまう。深夜ってことでエログロシーンでもたっぷりあるのかと思ったら、意外にストレートな展開でちょっとがっかり。それともたまたま見た回だけが普通の内容だったのか。もっともそんな期待を抜きにすれば、土曜の夕方にやってる婦人警官の某アニメよりは楽しめる内容のよーな気がする。エンディングのアニメがなんか好き。ミルちゃんてゆーんだっけ、女の子のデフォルメキャラが手をちょこちょこ動かしているしぐさがとっても良くって、そのままパソコンのマスコットにしたい衝動にかられた。でも深夜は疲れるので来週はビデオに撮って見よー。これで週に何本アニメをビデオに撮るんだ?

 そのまま続きで見た「HUNTEDじゃんくしょん」はどーでもいーや。キャラはともかく主役の声に何か乗れない。もっとも「赤ずきんチャチャ」の鈴木真仁さんや香取慎吾くんにも最初はひっくり返ったからなー。こんな下手なやつらが声を当てていていーんだろーかって気になったけど、「チャチャ」はなんかヒットしちゃったし、鈴木さんは今でもあちこちで活躍しているし、香取くんなんてSMAPになっちゃったもんな(って昔からSMAPだったけど。売れないグループって冠詞付きの)。1回だけ見て判断すると「ウテナ」みたく見誤るから、もーしばらくつき合って見るか。もちろんビデオに録画して、だけど。

 寝て起きて仕事。恵比寿にある「エアーズ」とゆー会社に良く。バンダイと音楽プロダクションのアミューズが出資して作ったレコード会社で、アニメ関係のCDとかを結構出している会社だとか。「八雲立つ」とか「花より男子」とかね。社長の人は昔コロンビアでゴダイゴを起用して「銀河鉄道999」のサントラを作って大当たりと取った人らしー。当時はコロンビアにはアニメ関係をやってる学芸部ってところがあって、一方社長の人がいたのは制作部で、お互いに仲が悪かったとか、「銀河鉄道999」の時も制作の方ですべて担当しながら、売り上げは学芸の方にもっていかれて悔しい思いをしたとか、そんな話を2時間近くしゃべってくれた。

 とにかく会社をもたせなきゃいけないから、今は「いかにもな」アニメの音楽を中心に作っているけど、本来はゴダイゴとゆー稀代のグループをアニメの「999」と結びつけたよーに、アニメとゆー人気コンテンツを通じてアニメだけに止まらないミュージシャンを送り出すことが会社の目的とか。作品自体が真っ当なことが大前提にあって、かつキャラクターの顔がパッケージに出ていたり、人気のある声優さんが唄っていれば、そこそこ売れてしまうのがアニメの音楽だけど、そんな仕組みを打破できるだけの力量を持った、アニメで名を売り外でも大ヒットして、そのままミリオンなアーティストに育つだけのミュージシャンを、エアーズが果たして見つけることができるのか。興味はつきない。でも土台がアニメファンなんで、声優さんが唄ってたりジャケットが綺麗だったりする方が、個人的には好きなんだけど。

 グレッグ・ベアの「火星転移」(早川書房)を上巻の途中まで読む。のっけから火星を舞台にした学生の反乱が始まって、この先延々とゲバ棒にヘルメットの学園紛争が続くのかと思ったら、敵方はあっさりと地球に逃げていき、かといって学生は闘争に勝利することなく再び怠惰な日常へと戻って行き、そのまま若さ故のあやまち的な付いた離れたエピソードが展開される、なんともダルな展開になってしまった。もちろんまだ上巻の半分を読んだだけなので、地球対火星とゆー本線が始まれば、ぐーっとテンポ良くかつ面白くなるのかもしれない。少なくとも「女王天使」よりは物語として楽しめるので、さんざん苦労した挙げ句に読み通した「女王天使」よりは、手早くちゃっちゃと読み終えることができるだろー。感動できるかどーかはまた別の話だけどね。

 特別な仕事が明日付けの掲載分でとりあえず終了。特集斑に入れられた人がたいてい2カ月はびっちりかけて取材やら記事執筆やらしているところを、根っからの怠惰な新聞記者は取材もほとんどせずにおよそ2週間で4回分の原稿を仕上げて(でっちあげて)しまい、あとは上からのチェックやら外からのツッコミやらをビクビクしながら待っていた。結局なんにもいわれず原稿はザル。間違いがあったかもしれないが、外からのチェックもゴールデンウイークってことなのかほとんどなく、気負って挑んだ割には肩すかしを喰った。来週からは普通の仕事に復帰できるので、義理を欠いているところにもお邪魔します。こんな面白いもの作ったから見てくれって話も歓迎。でも見てつまんなかったら表で誉めて裏で罵倒するから覚悟だけはしててね。


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