縮刷版97年12月上旬号


【12月10日】 「This is 読売」を買ってしまう。報知新聞が明治34年に掲載したした「二十世紀の豫言」を20世紀ももーじき終わるってことで検証してみた、それじゃあ21世紀はどうなってるのって予言してみせた企画が載っていて、それだけだったら立ち読みで住ませても良かったんだけど、何しろ筆者に小松左京さんとそれから明治ならこの人な横田順彌さんが起用されているとあっては、SF者としてはその意気に答えなくっちゃ御先祖様に申し訳がたたん。で、まずは横田さんが報知の予言を検証して、だいたい70点から80点てな評価をつけている。予言の中では無線電信電話の普及と遠距離の写真と7日間世界一周緒と電気、鉄道、市街鉄道、自動車の普及ってのはもう満点で、とりわけ自動車の普及ってのは、その時期に自動車がほとんど日本に入っていなかったことを考慮すると、まさに慧眼というより他にない。

 ほかにエアコンの普及と思われる「暑寒しらず」とか、カタログ販売の普及に見立てられる「買い物便法」ってのも、おおよそ当たっている項目で、逆に「人と獣の会話」ってのは、身ぶりてぶりや思いこみはともかくとして、人は未だ猫がにゃあとなく意味、犬がわんと吼えるその意味を理解できずにいるから未達成。サハラ砂漠は広がる一方だし、幼稚園の役割は一環教育の普及でますますおもくなっている点から、この2つに関する項目はマイナスがついている。けれどもやっぱり相当な確率で当たっていて、横田さんによればSF小説なんかも書いていた村井弦斎って人が書いたとゆーことだから、その想像力や恐るべしと平伏し、ひるがえって昨今のSF作家に果たして未来予測が可能かと、進化に深化、特化に発展著しい科学や技術の世界を思うにつけて、小松さんをしても難しいものだなあと小松さんの文章を読んで思う。奇抜さも夢もあんまりないんだよね。

 「This is 読売」じゃあ明治人の想像力を越えられますかって惹句で「二十一世紀大予言・百年後の世界」がどーなるかを募集しているから、どうだいSF作家の方々よ是非とも名誉にかけて挑戦してみてはいかがなか。まあ未来予測だけがSF作家の仕事じゃなくって内面をえぐったりはっとするビジョンを見せたりってことも重要な仕事になっているから、一様に応募しろってのは無謀な求めかもしれないけれど、せっかくの機会だもん、ここで1番SFの存在を世に問い大きくアピールするためにも、SF作家クラブ一同こぞって応募すれば世間の話題になって面白いと思うんだがなー。賞金だって1万円も出るんだよ。

 少年マガジンはちょっと前の「バーチァファイター」鈴木裕物語に続くゲーム・クリエーター・コミックの流れを汲んで今後はカプコン「バイオハザード」の開発チームが取りあげられている。とにかく「恐怖」を基本コンセプトに押して押しまくったんだなーとゆーことが分かったけど、実際にゲームをプレイしていない身には、その恐さっていったいどーゆー種類のものなだろーかと不思議でならない。例えばテレビのホラー・ドラマのように、日常的なシチュエーションのなかで出会う恐怖を我が身に重ね合わせて震え上がるってのはありかなーと思うけど、わっと出てきたりぬっと出てきたりってびっくり箱的、おばけ屋敷的な展開(のよーに見える)から感じる恐怖ってのは、どれだけ怖くても一過性のものとしか認識できない。しかし売れている実態から考えると、コンセプトが受け入れられたかどうかはともかく「面白い」という点は確実に評価できる。来月発売とゆーパート2、やっぱりそれなりに売れちゃうんだろー。コミックの冒頭でゲームの売れ線はシリーズ物がほとんどって怒っていたその人が、そのシリーズ物を作るのってなんだかなあ、って気がしないでもないけれどね。

 名古屋で港区の方に向かって走っている臨港鉄道の貨物線がなんでも第3セクターで旅客へと転換されるんだとか。名古屋駅を出て中村区から中川区、港区へとずるずる下がって最後は金城埠頭へと至るその路線は、途中に名古屋競馬場があったり金城埠頭には大きな展示場があったりして、横方向の電車しか走ってなかった地域をタテに通ったそんな新路線には、結構な需要が付くよーな気がするんだけど。しかし平成16年って開業時期はあまりにも先過ぎるよなー。そのころもしかして名古屋に帰って庭いじりでもしながらときどき電車で競馬場通いでもしてるんだろーか、それとも東京の街をさまよい歩いているんだろーか。どっちにしたって会社でバリバリ出世を遂げてガンガン仕事をしてるって未来だけは想像に難い。難すぎるのは衆目の一致する意見であって、やっぱり東京をウロウロって可能性が高いなー。利用するのは今も未来も山手線と総武線と中央線で、通うのは中山に後楽園に府中ってことか。はあ。

 アスキーの年末懇親会にカレンダーをもらいに行く、っても自分で使うわけじゃなくって会社に持って帰っている人にわたす。なんか人気高いんだよねー、あのお月様が満ち欠け満ちていく絵がついたカレンダーが。男社会の男会社だけに月齢を気にする人は主体的にはいないはずなんだけど、客体的には護謨製品の使用不使用などを睨みながら安全面を考慮に入れて月の満ち欠け満ちを確認しておく必要があるのかもしれず、ならばカレンダーはばっちりなアイティムだと一応人気を納得する。もっとも周辺には月のモノを気にする必要性なんて客体的にすら皆無って人ばっかだし、やっぱり単純に大きくて綺麗で書き込めてカードも入るってな特徴を買っての人気なんだろー。どーせどーせ。

 リニューアルなった「週刊アスキー」は社長もお気に入りらしくって、入り口に積み上げられた最新号をときどき手にして壇上でも大きく宣伝して、返本率が少ないってことを誇っていた。自分の連載もあるからなー、やっぱケナすなんて出来ないよなー。編集人の渡邊直樹さんがいたので「SPA!」と「uno!」の近況を聞く、ってのはちょっと方向性が違うかもしれないけれど、同じ出版界だけに聞き及ぶことも多いらしく、花田さんがまだまだ頑張る話とか、「SPA!」が情報面の強化を図っているって話など、雑誌などで側聞するにつけて確かにそのとおりだよなってことを教えてもらう。旧「週刊アスキー」で連載されていた企画は続々と単行本化が進んでいるそーで、例えば「大熱言」の島本和彦さんも描き増しなんかやって単行本にするそーだし、岡田斗司夫さんのコーナーも単行本になるらしー。

 面白いのが放浪の紀行家・勝谷誠彦さんの失業だか失敗だかをタイトルにした本が出るとかで、帯がなんでも渡辺さんと花田さんが書くそーな。気分的には筑摩の松田さんも入れてみたいもんだけど、雑誌はツブれたけれど本人はまだ勤め人やってるみたいだから、一緒にしてくれるなって怒られるかも。ほかには朝日の服部さん・・・ってこれじゃーまるで「WIRED」の編集後記だね。明日は我が身は棚に上げとく。場内をウロウロしていると「夕刊アスキー」の人が来て今年のアスキーについて感想を求められたので、なんでまた平井和正さんのそれも「幻魔大戦」を再刊したの、あちらこちらの出版社と仲違いをしまくっている平井さんだけに、ファンとしては有り難いけれど会社としては大変じゃないのって言っておく。記憶にあるだけで平井さんの「幻魔」本、角川に徳間にリム出版とあちらこちらで展開されては雲散してしまったからね。「狼男だよ」に遡れば立風との「さしがねが入っているのだ」事件ってのもあったか。とにかくもファンとしては嬉しい限りだから、どうせだったらハチャハチャな短編集もずんずんと復刻してやって欲しい。面白い話(エッチでもある)が多いんだよ、平井さんの短編には。


【12月9日】 so−netからお手紙が届く。きっとピンクの熊が届けてくれたんだといーけれど、繁華街のど真ん中にある拙部屋にたどり着くまでに、きっとひと騒動あっただろーな。封筒をあけると出てきたのは「MIB」のチケットで、一瞬なんのことやらと思案して、いっしょに入っていた半ぺらを読んで得心、そうそう「SFオンライン」の「アンケートに答えて君もメン・イン・ブラックにゅーろんバチバチィ!」(勝手称)に応募していたことを思いだし、珍しくアンケートの懸賞に当たったんだと大喜びする。がしかし某所の某氏も当たったと言っていたから、もしかしたらよほど応募が少なかったのか、つまりは読んでいる人が意外と(意外でもないかもしれない)少なかったのかなんて、SFの現在に消極的な想いが頭をよぎって離れない。

 ちょい前に「キネマ旬報」で「闇のエコエコ大祭」が当たった時は、「キネ旬読者がエコエコでもねえか」と一応の納得は出来たけど、SFのページでSF映画宣伝して当選率高かったりするのは問題かも。でもまあ、確か100人規模で募集していたはずだったし、んでもって純粋にクジ運が強かった可能性もない訳じゃないから、それならそれで大喜びしたいもの。だとすると年末の宝くじは諦めないといかんのか。家も車もあきらめよー。

 日販の年間ベストセラー登場、やっぱりな「失楽園」が総合トップを張っていて、次もやっぱりな「ビストロ・スマップ完全レシピ」が燦然と輝いて扶桑社社員のフトコロ具合を暖めている。でもこれは確か年度では去年の出版だから、今年の冬はキツかったかもしれんなー、なんせ文庫返本率××%なんて紹介されているトコだから。でも新刊の「ビストロ・スマップ本」が出たところだから、冬のボーナスがガッポリと出たのかも。どーだったですかー、海岸方面の人たちぃ。

 総合ではあと大作さんが1冊に隆法さんが2冊と相変わらずの頑張りぶり(もちろん信者の)を見せていて、それから20位にちょっち彼らとベクトルいっしょな「脳内革命」がランクインしてロングセラーぶりを見せつけていた。20位以内にゲームの攻略本が「ファイナルファンタジー7解体真書」を筆頭に8冊も入っているのは、最近の傾向から致し方のないところだけど、発売元がうち3冊がアスペクトって割に(ゲーム攻略本限定なら11冊中6冊だ)、ちょっち前に出たアスキーの中間決算は出版部門も厳しかったようで、ってことはつまりあの裏表のない明朗快活な週刊誌が、足を引っ張ったのかなーなんてことも想像に難くない。首に輪っかはまっていたかは別にして。

 個人モードで購買率の高い講談社ノベルズも新書分野では内田康夫さんの1冊のみ。ベスト10に4冊をたたきこむ内田さんの人気ますますヒートアップってなことを裏付ける数字として理解しておくとして、発行元が中央公論社に光文社に幻冬舎に講談社と見事にバラけているのが素晴らしい。義理固いのかコンペで競わせて吊り上げているのか憶測だけならいくらでも出来るけれど、野次馬的にはこれだけあちこちの出版社から出していると、盆暮れのツケ届けなんてそれこそ倉庫がいくつあっても足りないくらいに来るんだろー。こっちも競い合っているのかな。所得ランクで上位常連だった赤川次郎さんがカッパの1冊しか入っていないのは不思議っちゃー不思議。結構ばりばりと新刊が出ていたよーな気がするのに。文庫で稼いでるのかな。ちなみにトップは天樹征丸だあ。誰それ? じっちゃんの名にかけて。

 どーゆー訳か仕事でバレリーナの熊川哲也の写真集を読む羽目となる。なんの仕事なんだかねえ。およそ芸能界ではソリマチにタケノウチが2大「イイ男」として君臨しているけれど、どっこい古典芸能界(なんて言葉があるのか)じゃー歌舞伎を除くと狂言の野村萬斎にそれからバレエの熊川が、きっとトップを張るだろー。他に知らないし。ベジャールのファンなんで昔っからテレビのローザンヌ・バレエコンクールのテレビ中継を見続けているけれど、何年か前に参加者だったかゲストだったかで登場した熊川を見たことがあって、バレエダンサーのくせに熊なんてイメージ違う名前だなあと思ったことを覚えている。

 それにしても、まさかここまで「違いのわかる男」になるとは、世の中は常にアイドルを求めているんだねえ。顔だけなら萬斎も熊川もソリマチタケノウチには及ばないけど、歴史と伝統を一身に極めた人たちだけに、得意のジャンルではもうすんばらしい輝きを放つ。タヒチで踊り佇む熊川も、毛臑だからってその輝きはまったく衰えていないし、素っ裸で馬にまたがっていたって野生の(乗馬用だから野生でもないが)動物の肉体にいささかも負けていない。でもやっぱりバレエの肉体はバレエの場面で一番輝くことは当然だから、朝ドラに出ている萬斎じゃない狂言している萬斎のように、舞台で海賊でも踊っている熊川を、是非とも1度は見てみたい。とは思わない。

 六本来に米国製ステーショナリーのショップがオープン、六本木の交差点からアクシスビルの方へとちょっと歩いた右手側で、昔懐かしく今も使っている「AT・A・GLANCE」の手帖やらノートやらカレンダーやらがどっちゃりと置かれていて、値段も結構安いから、文房具ファンなら1度はおぞいてみる価値があるかも。といってもフランス物のよーなカラフルさには乏しいから、シンプルでアメリカーンなテイストが好きな人に限っての話ね。とりあえず週刊の仕事が増えて来たので、書き込みの大きいカレンダーを買い求めてGAGAへと出向いて明後日おいでと追い返されて青山ブックセンターで「時計仕掛けのオレンジ」のビデオ買って左様なら。しかし最近のGAGAに珍しい満員札止め、もしかして「ゲーム」ってヒットするかもなあ。


【12月8日】 風邪熱下痢にウナコーワ、はきかんわな。いやまだそれほど酷くはないんだけど、ちょっぴり悪寒がして頭が痛くってお腹の調子も良くないとあって、いよいよ今年のインフルエンザが到来したのかとちょっぴり心配になる。これから忙しさに走りまわらなくっちゃいけないのに、ここで倒れては仕事がたまって後で収集がつかなくなること必至だもんね。去年は無理がたたって年末間際にぶっ倒れて、3日3晩うんうんうなって結局コミケも行き逃したし帰省だってできなかった。いや帰省は正直面倒臭くてしたくないんだけど、コミケくらいは顔出したいから月の後半に仕事をためて年末に倒れる訳にはいかない。オロナイン飲んで頑張ろー。

 会社で郵便物を回収。岡崎の繁華街からほど遠い、JR岡崎駅から徒歩で5分の閑静な田圃地帯にあるギャラリー「ノブギャラリー」から展覧会の案内が届いていたので大告知。すでに先週の土曜日から始まっている今回の展覧会は、その名も「SCALE&SCALE vol.5 11の扉」。「それは食べると虫歯になります」「それは靴下より臭いです」「それは紫色をしています」なんてヒントを繰り出して最終的に「それはなんですか」をあてる、ってのは違うぞそれは「秘密の扉」だ。「11の扉」はノブギャラリーで発表を続ける11人の作家たちが同じ274ミリ角のキャンバスを使って制作した22点の作品を一同に展示する、ちょっちコンペっぽい試みの展覧会。国島征二さんが、井田照一さんが、土屋公雄さんがいったいどんな作品を作ったのか、バラエティエーに飛んだ展示を是非とも見ちゃって頂きたい。年末年始は休廊ってのは帰省者には辛いなあ。こっちでもやりません?

 回収した資料にはバンダイの社内報ってのもあって、ちょっち前に記者発表があった「デジタルエンジン」を紹介する記事に、なんとゆーことか僕がしっかり写っている。もちろん壇上に居並んだ面々って訳じゃなく、会見場に座っている姿を後ろから撮られた、2人のうちの左側に写っているのが僕だっただけ。何で分かるかっていえば、そりゃあ分かるよ丁髷だから。でもてっぺんが白く抜けていないところを見ると、前は結構いっててもてっぺんは意外や大丈夫なのかもしれんと、妙な自信が湧いて来る。写真見て我がふり見定める。あるいはバンダイさんのご配慮で、写真にベタの修正が入っていたとか。まさかなあ。しかしなあ。

 社内報にはほかに玩具菓子の売れ筋ベスト20ってのが載っていて、やっぱりな「ポケモンキッズ」が1番で、「ポケモンシール」が2番で、4番に「ポケモンコレクション」、5番に「たまごっちテープメイト」等など、20位までの実に16種類をバンダイの製品が占めている。ベスト10ならうち9つがバンダイで、うちポケモンが5つ、たまごっちが3つ。97年を代表するキャラクターとして新聞で取りあげたってのも、まんざら間違いじゃなかったと悦に入る。ちょうど例の大騒ぎから間もなく1年になるけれど、その間のバンダイのブリブリぶりを見るにつけ、やっぱ破談も正解だったかなって気にもなるねー。山科誠は何ぞ思う。

 あれこれと仕事が入って急にフトコロが膨らんだよーな気分になったので、勤め先の近所にあるディスカウントストアに行ってMDプレーヤーを買う。かといって一番高い品物をポーンと札ビラ切って買うほどには神経の方が金持ちにはなっておらず、山積みの特売品の中から目立ったビクターのちょっと前のMDプレーヤー29800円なりを1つ取り出しておずおずと購入。だから貧乏性って言われるんだろーなー。とりあえず年末年始のインタビュー仕事に使うつもりだけど、前に買ったマイクロレコーダーだって録音はしたものの聞き直すのが面倒で、結局メモだけで記事作っちゃう僕だから、MDプレーヤーだってホントに使いこなせるのかちょっち疑問。昔アルクからガメたMDの英語教材でも聞いて、お勉強でもするかなー。中国で受けた数々の辱めを思い出すだに赤面することでもあるし。

 あれこれの仕事で吉本ばななさんの「ハネムーン」(中央公論社)を訥々と読む。「死」についてたくさん触れているんだけど、その「死」が真っ向臭くも悲嘆に満ちてもいなくって、かといってあっけらかんとしている訳でもなく、なんとも奇妙な「死」への捉え方が同世代的に共感を覚える。吉本隆明さんの沈没に開明を受けて書いたんだろーか、だとしたら淡泊すぎる死のイメージは、大詩人の死を送るに相応しいものなんだろーかと、思い浮かべる事柄はつきない。たくさんのイラストが挟まった本で、よく見るとおおなんと「MAYA MAXX」さんのイラストではないか、もしかしたら描き下ろしの。まだあんまり有名じゃないけれど、「ポンキッキーズ」の「ピピカソ」のイラストなんかでじくじくと知られて来たアーティスト、CD−ROMも発売中で多分キリンアートスペース原宿だったかな、近く展覧会も始まるみたいなので、「ハネムーン」読んで気になった人も、ピッピピピピもピカソもダヴィンチも、是非ぜひご覧になってみて下さい。場所、合ってかなー。


【12月7日】 矢作俊彦さんの「あ・じゃ・ぱん」読了。ほんとは「ん」じゃないみたいなんだけど、吃驚マークにuだかロシア文字だかをくっ付けるのも面倒だからこちとら「ん」でいくことに買ってに決めちゃう。話題作だからきっとあちこちの雑誌で紹介されることになるんだろーけど、さてみなさんどーいった表記を使うんだろー。雑誌はともかくCTSが入ったフルデジタル化された新聞製作じゃー、文字1コ作るのって結構大変なもの。お金がかかっておまけに面倒なことは嫌いだから、「ん」でいっちゃうかもしれないね。ためしにうちの新聞で書評を書いて試してみるか。

 しっかしおよそ居並ぶ「昭和」のキーワードにいったいどれだけの人たちが反応できるのかちょっと心配。相当に「昭和史」とかを読み込んでいる人だって、「平岡公威」に「佐藤昭和」に「吉本チヅ」に「李香蘭」に「ライシャワー」に「バーナード・ショウ」にエトセトラ、登場人物の現実世界で持つ意味を理解できないだろーね。とくに「平岡」と「佐藤」は物語の根幹に関わる人物だけに、例えば奥野健男さんの書いた評伝とか、あるいは「寂しき越山会の女王」とかいったノンフィクション本を予習に読んでおく必要があるんじゃなかろーか。まあ知らなくたって楽しめることは楽しめるんだけど。注釈付き完全バージョンってのをどうですか新潮社さん文庫で出しませんか。

 「とり・みきの大雑貨辞典」を買う。双葉社文庫で再刊されたバージョンで、原本はたしか1992年頃に同じ双葉社から発売されたっけか。確か買って読んでいた記憶がるけれど、読んでいた場所が当時在籍していた日本銀行の記者クラブで、その時に隣りに座っていた産経の記者に貸してそれっきり行方不明になったよーに記憶している。ってことはきっといまでも日銀の記者クラブの机の裏当たりに、初期バージョンの「大雑貨辞典」が転がっているって訳で、やがきて来るべきビッグバンのなか、日銀の役割が増して大きく立て替えなんてことになって、日銀のクラブもいっしょに移転ってことになった暁には、ひからびた家蟋蟀(つまりはゴキブリ)とか茶色く変色した紙っきれなんかといっしょに、名著「大雑貨辞典」の変わり果てない姿が発見されることになるんだろー。ああなんと偉大なことよ。

 巻末の著者後書きに登場するのはフリー・エディターの小形克宏さん、「モノの話が多いからカタログでいきましょう」とアイディアを出したいいけれど、いきなりフロッピーディスクを口から取り出して、とりさんに向かって「コンドノゲンコーハゼンブコレニイレナサイ」と言ったとか。1992年当時って言えばまあワープロは普及をはじめていて会社の原稿も確かワープロで書いていたはずでそれより以前から自宅ではワープロを使っていたはずだけど、決していまほど普及していたとはいいがたい。そんな時代から自宅にPC−9801を入れて、とりさんから上がってきた原稿を組み直していたなんって、まあとってもデジタルな生活じゃああーりませんか小形さんっ家って。あたしなんざあようやく3年ってとこのマック生活、それも1歩の進歩もないってんだから、いかに怠惰かってことがよくわかる。勉強せねば。お小遣いのためにも。

 お小遣いといえば某誌の本読みの仕事。難しくって頭が溶ける。ふだんからどれだけ長く書いて紙面を埋めるかってことに腐心している人間にとって、短くてそれでもツキ抜けてる言葉ってのは、そーやすやすとは思い浮かばない。決して本を読むのは遅い方じゃないけれど、書く段になって覚えていることといったら濡れ場にアクションシーンくらいだもん、これじゃー核心をつく短評なんて書けやしない。うんうんとうなって午後を潰し、それから買い物に言って500グラムの冷凍ピラフを買って来て、1缶1000円の蟹缶といっしょにフライパンでいためてかき込む。ちょっと贅沢なピラフ、でもベタベタで不味い。明日こそはいよいよ蟹玉に挑戦するか、永谷園の「かにたま」でも買って来て、ね。

 「フォトン」のLDを見返す。たぶん3回目。いやーやっぱり何度見てもよく動くしとっても健康的にエッチで面白いんだけど、でも巷のレコード屋にボックスが余っているところを見ると、もしかしてあんまり売れてないのかなー。面白いからボーナス余っている人は買うべし。でも次巻からもちゃんと面白いのかは保証の限りではないのだか。堀江由衣ちゃんの唄うエンディングテーマを聞きながら、金も入ったことだしと思い立って、レコード屋に行って映像に先行して11月6日に発売されていたCD版「フォトンのドラマCD」を買うとおおなんと、キーネちゃん家の秘密とかポチの生い立ちとか額の紋様の意味とかが、ずえーんぶ説明されちゃっているではないですか。画面じゃーいっさい説明的なセリフも描写もないから、「アニメージュ」の評でも「世界観が見えない」と言っていた人がいたっけか。たぶんCDも買わせようって腹なんだろーけど、ここは1つキングさんの戦略に乗ってやって下さいな。これで結構楽しめますから。例えばフォトン・アースの顔真似一発芸とか、ってCDだろ?


【12月6日】 「レディ・ジョーカー」読了。素晴らしい。ちゃんとオチてる、ってそーゆー次元で誉めてるんじゃなくって、実に真っ当に今の社会が抱える気分ってゆーか病理ってゆーものを指摘していて、読んでいて酷く虚しくなり、とても哀しくなる。哀しいけれど、これ、社会、なのよね。ちょっとスレッガー・ロウ入りました。やっぱスレッガーは玄田哲章さんだよね。井上真樹夫さんじゃないよね。話がズレた、「レディ・ジョーカー」で感じた虚しさってのはつまり、システムに埋没しそーになって、必至であがいて自分を取り戻そーと頑張って、でも結局はシステムのなかで己を見失ってしまう、からめ取られてしまうとゆー、実にやりきれない物語の筋道によるもので、ただ1つ主人公の1人である合田刑事が、なんとゆーか本当の自分を発見したのが救いだったのかもしれないけれど、それすら追いつめられて挙げ句の逃避衝動かもしれんしなー。ともかくも冬コミでは合田ネタが増えそーな予感。間に合わないなら夏コミか。

 別に構わないけど「日刊スポーツ」、いきなり中田がアルゼンチンを倒したなんて1面でやられると、戸惑う読者がたくさん出るんじゃないだろーか。スポーツ新聞が頑張っても結局1日遅れでしかワールドカップの対戦相手決定と、中田も出場した「世界選抜対ヨーロッパ選抜」の試合を伝えられないからとって、ちょっと凝りすぎの誌面だぜ、来年の開幕戦の架空戦記を載せるのは。スポーツ新聞がすでにジャーナリズムとしての機能を失って久しいとはいえ、1面くらいはニュースなり評論で勝負して欲しかった。それは別に中田を褒めそやす内容でも構わないから、どーゆープレイをしてどーゆープレイが出来なくて、それでどー評価されたのかってことを、でっかい紙面を使って克明に伝えて欲しかった。一般紙の場合だいたい1面に500行は叩き込む。スポーツ新聞ではせいぜいが100行。中面に行っても写真を多用するからせいぜいが200行とか300行ってレベルの文字しか入れられないのに、それを絵空事で埋めてしまうなんて、それも「中田活躍」の陳腐な予定調和な内容で埋めてしまうなんて、メディアの自死に近いところがあるよーな気がする。もう死んでる? ごもっとも。

 六本木に行く。年末でアベックがあふれる六本木を1人で歩く。とっても良い気分で神経がどんどんと細っていく。そのまま消えてしまいたくなる。クリスマスが近づくにつれ、繁華街に出かけるたびにきっと精神の荒廃はますます進むことだろー。で「ヴェルファーレ」で開かれた「ニフティサーブ」が主催したイベント「キャバレー複雑系」なんたらゆーイベントに入ると、おーここにはいかにもな「ネット系」の若者たちが有象無象たむろしていて、とても落ちついた気分になれる。空気が六本木のココだけ違うよーな気がして、街を歩くカップルたちにちょっとだけ申し訳ない気になった。でもコスプレショウじゃなかったから、空気はまだまだおとなしかったハズだよ。

 オープニングからいきなりの松岡正剛さんは、ゴルチェだかコムデだかワイズだかイッセイだかのまーそーいった感じの服装で、いつ見てもどーしてこの人がネットワーカーたちの集うニフティのイベントに呼ばれているのか不思議で仕方が無い。もっともこれは自分のネットワーカー観を踏まえた上での歪んだ意見だから、存外世の中のネットワーカーにはコムサだかピンクハウスだかケンゾーだかをサラリと着こなしている人が多いのかもしれん。話し方も堂に入ったもので、次から次へと呼び込むゲストをあたるを幸いなぎ倒し、じゃないちゃんとトークして要点を引き出した上で時間が来たらご退場願う、司会者としての分をわきまえた仕事ぶりを発揮していた。相方のいとうせいこうさんは、知ってのとおりにおしゃべり上手だから、見ていて安心できるけど、しかしよーわからん取り合わせだなー。どっちも顔が広いのか。

 大原まり子さんは最初のリレートークの部分に登場、とても安定性の良さそうなお姿を遠くから見入って、過去は過去でしかないことを納得する。どーゆー意味だろー。で話した内容は新しいメディアを使って何か新しい小説を作りたいってことで、それはただ単にテキストを電子化するだけじゃなく、ハイパーテキストなりマルチメディアって要素を採り入れた作品、リニアではない作品を作りたいってことらしー。大容量性なのかランダム性なのかハイパーテキスト性なのか、とにかくいろいろな要素を採り入れたマルチメディアの小説の可能性が言われているけれど、例えば筒井康隆さんが「上下左右」をもっと発展させたバージョンをゲームか何かで作りたいと言ったら、売れないから無理ですとゲーム会社の人に言われたとか聞いたこともあるし、つまりは作家の期待するほどには、そして作家の意欲ほどにはユーザーはそーいったものを求めていないってことなんだろー。

 で1つやっぱり大原さんには、いとうせいこうさんのネットを使ったプロジェクトなんかとリンケージしながら、んでもっってジャストシステムあたりを騙してお金を引っぱり出して、そーいったユーザーを目覚めさせるよーなマルチメディアな小説を書いて頂きたいものですね。トークの終了間際、松岡正剛から「面白いSFは」と聞かれて、パソコン好きな人にはSF好きな人が多いみたいで、だからアスキーとかジャストシステムからSFの本がたくさん出るよーになったのかな、と言いつつ例えば日本のなら自分の「SFバカ本たいやき編」を上げて、しっかりと会場に向かって宣伝してた。流石に「ジャストネット」の宣伝はしなかったけどね。海外SFについては突っ込まれて「知りません」と答えたのが印象的。さては最近、海外SF、読んでないなー。

 間のイベントは学者たちの座談会。内容はムツカシクって覚えてないけど、司会に立った東大社会情報研究所助手の松田美佐さんがなんとゆーかとてつもなく美人で圧倒される。黒いワンピースに黒いストッキングはどっかの葬式帰りのお姉さんって感じだけど、知的な頭脳を包み込んだお顔はどこまでも美しく、パンプスの足下にすり寄って「踏んで」とお願いしたくなった。あれこのネタこないだもやったぞ。知的なグッズで満ちた6畳一間(なんでだ)での、知的な会話に知的な食事に知的な炬燵の生活を妄想するが、じっと見ていると左手の薬指に指輪がはまっていたのに気が付いて、ちょっとだけ気を失ったあと気を取り直して目を安田雪さんに転じる。

 立教大学助教授とゆー安田さん、インターネットとかパソコン通信のログを数学的に研究している学者ってことだけど、この日の格好はローブデコルテってゆーんですか、肩の開いた胸で抑える白い服を着て、長い手袋をして、黒いストッキングの足下は黒いピンヒールってまるで結婚式に呼ばれた友人代表Aってな格好で、それがステージの上で足を組むんで目のやり場に困らなかった。じっと見てればいーんだから。松田さん同様、ちょっとだけ「踏んで」とは思ったけれど、お顔がなんとゆーか迫力があったので、踏まれるのはまたの機会へとおゆずりしてお引きとり願う。バイバイ。

 さあお待ちかねの「明和電機」だ。ナマで見るのは2年ぶりくらいになるのかな。せり上がって来た舞台の上にズラリならんだ魚器の数々。名前を知っているもの失念しているものあれこれだったけど、目の前でホンモノが鳴る機会ってのはあんまり無いから、良い物が見られて本当にラッキーだった。それもタダで。きっと集まって来ている人たちの8割は明和のファンだったんだろーね、だって土佐兄弟が登壇して来た時の賑わいったら、他のゲストの100倍も凄かったんだから。相変わらず無表情に淡々と喋る副社長は背中にパチモク背負ってティンパニーの調整に余念がない。社長はゴムベースにグラスカープをメインに使用し、真ん中で経理の小野さんがオルガンを踏んで一番真っ当な演奏をする。ナッパーズがいないのがちょっと残念。

 えっとなんだったっけ、映画「ブレードランナー」の曲とか「マイムマイム」に合わせて「君たち男の子」と唄う曲とかあれこれと披露。回転する「ナタデコト」の目がピカピカ光るとは知らなかった。「スカイハイ」の曲に合わせて唄う副社長のなんとも苦しそーな表情が、見る者を官能の渦へと叩き込んだし、途中でサバオくんを取り出してサバオくんに「もののけ姫」を唄わせる、つまりは自分で唄う時にちょっとだけ表情が緩んだのがまた印象的だったし、最後はどーゆー訳か「残酷な天使のテーゼ」まで披露、やっぱり歌下手だわ副社長ってな感じで、およそ20分程度のラブは無事終了して経理の小野さんともども静かに退場して行った。踊り出す人もなく拳振り上げる人もなく手拍子打つ人もないライブだったけど、「日本公演」のよーなツアーだとどーなんだろーか。本当はこれで帰りたかったけど、後にまだ見たいゲストが控えていたので痛いケツをさすりながらパイプ椅子に座り続ける。

 最後は1人10分程度のリレートーク。次から次へとゲストが登場してあれやこれや喋って引っ込むおもちゃ箱のよーなコーナーで、その短さ故に面白くなって来たところで話が終わってしまい、物足りないって気になった。人選もはっきりいって松岡正剛の趣味丸だして、冒頭からグラフィック・デザイナーの中条正義さんに漫画家の岡野玲子さん、高城剛、山咲千里、清水ミチコ、洞口依子ともう分からない。岡野さんはメッシュの長髪で短いスカートからガラもんのストッキングの立派な足がにょっきり生える、実に官能的な姿で良かったし、山咲さんはパンツだったけど顔はやっぱり美人だし、洞口さんは「セサミストリート」のカエルを抱えて手にはイエローサブマリンを持って、いとうせいこうから突っ込まれても明るく受け答えをしていたし、清水ミチコさんは顔まね右翼禁止系を披露してくれた。高城剛は元気だけは最高。フランキー・オンラインってまだあったんだねー。

 トリは押井守さんで、例の「G.R.M」のパイロットフィルムをまた見たけれど、どーしても凄いって思えてこないし世界観も分からない。もとよりアニメでも特撮でもない、いろいろな表現をごちゃっと合わせて作るって話なので、アニメパートのパイロットフィルムとも実写パートのパイロットフィルムとも違う世界に本編はなるんだろー。とりあえず態度は保留。けど今になって人形も使おうかなって言っているよーなので、2000年に本当に上がるのかそれだけとにかく心配している。どうも熱海に引っ込んでいられなくなったよーで、東京で仕事場に詰めっきりになって2000年まで「G.R.M」に掛かるとか。その間は会社から給料をもらうことにしたとゆーから、なるほどアニメの監督も寡作であるだけに結構厳しいもの、あの押井さんとしてこうだから末端なんてもっと厳しいんだろーなと類推する。しかし幾らもらってんだろ給料。ボーナス出たのかな。


【12月5日】 本に絡んだ謎の仕事の打ち合わせをした後で、そのまま「VIRUS」を見る。いよいよ切羽詰まってきたのか絵ぐちゃぐちゃでせっかく自分的に星1つ2つ上がって来た評価がぐぐぐっと下がる。物語自体が崩壊した訳ではないので、その点でしばらくは見続けることが出来るだろーけど、あんまりな絵が続くよーだとLDの売り上げに響くから、せめて裸を出すなりパンツを見せるなりして見せ場(さあびすかっと)を作っておいた方がいいと思うよ。予告編を見る限りでは、来週なんかもっと違う絵になりそう。もっとも今までより遥かにヒトの顔に見えるよーなので、その意味でちょっち楽しみにしてる。しかし続けて見ると違和感ありそーな気がするなー。でも9話と10話だからLDじゃ同じ巻に入るだろーからなー。目が疲れそー。

 そのまま臣民の義務としてサッカー「世界選抜対ヨーロッパ選抜」を見る。中田ももちろん期待していたけれどやっぱり凄いね、ロナウドとバティストゥータの破壊力は。サイドに振るとかフェイントとドリブルで何人も抜き去るってことじゃなく、1タッチが2タッチで決定的な場面を作り出しては確実にシュートを決める。この決定力が半分でもあれば日本はあれほどワールドカップ予選で苦労しなかっただろーに。ディフェンダーがぐじゃらっとしている場所でロナウドがちょこんと出した球にバティが反応して飛び出してシュートした場面にしても、たぶんロナウドがセンタリングを凄いスピードで出してそれをバティがボレー気味にゴールに叩き込んだ場面にしても、確実な場面では確実に得点を取るし取れるってことを証明していて、これが世界なんだと戦慄を覚える。

 顔見せ興行だっからピッタリとマークがついてなかったってこともあって、あれだけゴールを決められたんだろーけど、ペナルティエリアでディフェンダーを抜き去って斜めからゴールを決めたロナウドのシンプルにして強烈な足裁きといったら。これが岡野にできてればあれほど心臓をやきもきさせることもなかっただろー。中田は与えられたポジションで与えられた仕事を確実にこなしていたって程度の評価。ロナウドに良いパスは出していたし、それがさらに前線に渡ってゴールに繋がったけど、キラーパスって騒ぐほどのものじゃないし、起点になったって誉めるほどのものでもない。中田にパスした奴だっていたからね。それでもあのメンバーで遜色がないくらいの仕事をしたのは流石なもの。サイドに開いていい所にいたから、球が出ればもうちょっと仕事をしたらどーけど、そんな中田を必要としないくらいに、センターのロナウドとバティは自力が高いんだもんね。おっと日本ばバティと初戦で当たるんだ。マークさえきっちりやっておけば、ボロ負けはしないぞ。秋田に頑張ってもらおー。

 赤坂で迷う。仕事で中華料理屋(ってなんの仕事なんだ)へ行かなくてはならないのに、前に通ったことのある道であるにも関わらず、まったくもって居場所が検討つかない。赤坂といってもふだん通るのは丸の内線の赤坂見附であって、TBSとかクラブ(お父さま専用)とかがある赤坂とは縁遠く、一ツ木通りっぽいところから1本とか2本とか筋を中に入ってしまうと、もうまったくもって西も左も分からなくなる。ちょっと外れに行くととたんにネオンも一切無いオフィス街とか住宅地区になってしまうし、東京ってホント不思議な街ですね。あれやこれやで警察に飛び込むこともなしにとりあえずは到着。中国で食べた中華料理より100倍美味しい中華料理を食べながら薄いおじさんの愚痴を聞く。薄いおじさんは濃いおじさんたちに怒っていた。さあこのおじさん(たち)は誰でしょう。食べた中で蟹玉がやけに美味しかったので、明日は1つ1000円の蟹缶をムダに使って蟹玉を作って食べるぞと決心する。これくらいの贅沢は許しておくれ。油は何が最適なんだろー。オリーブオイルじゃまずいかなー、やっぱゴマ油かなー。

 ボーナスが出ているハズだか銀行にいってないので幾らもらえたのか分からない。山一証券じゃーボーナスが出て27・5歳で夏の32万5000円から2、3割少ない額が支給されたそーだけど、これよりは多分良いだろーね。だって年齢がずっと上なんだから。でも山一ってホントにこれだけしか出てないの。30過ぎで1000万円ってなプレイヤーがゴロゴロしていたのがあの証券業界でしょ。ボーナスだって平均つまり20代後半ってところで70万とか80万とかってレベルだったはずだから、僕が担当を外れたこの6年か7年の間で、どっかーんと下がってしまったってことになる。僕が就職活動をしていた時期はもーバブルのまっただ中で株は天井を突き破っていた黄金の日々、文学部のそれも史学科から証券会社に行ったり受験した先輩が何人かいて、いったい世の中どーなってるんだと愕然とした覚えがある。1人は山一の内定を最終面接の日に寝坊してもらいそこねてそのあと三洋証券に入ってすぐに辞めたはずだから、まるでレミングのごとき危機察知能力を持っていたってことに、ならんわな。


【12月4日】 国民の義務だ。「ナンバー」のワールドカップフランス大会出場32カ国決定特集号を買う。金子達仁さんによる中田英寿インタビューは「分かってるどうし」のラフな会話が面白いっちゃー面白いんだけど、一歩下がってスポーツ新聞的人情涙話大好きなヒーロー探し第一主義の編集方針からいくと、ホント扱いにく奴ってことになるんだろー。

 あの感動のラストシーン、自ら切り込んでシュートを放ったことに関して、金子さんから「シュートがGKのケガのしている手の方に飛んだ。あれは狙ったの?」と聞かれて、一言「当然」と答えるなんざあ、謙遜で引っ込み思案で沈思黙考なニッポン人には、ちょっと理解できんだろー。ダエイが決定的な場面をフカした場面でも、「シュートのポジションに入るのがちょっと遅れたのと、軸足がヨレてたのが見えたんです。あ、もしかして大丈夫かな、と」って、あの緊迫の冷や汗場面で冷静で沈着に観察してる。草サッカーでもボールを持つと緊張しちゃって足がすくむ僕なんかとは、当たり前だけどやっぱ人種が違うなー。あやかりたい。

 事務次官の記者会見に出る。普通だったら30分もたたずに終わる会見が、今日に限って1時間10分にも及ぶ長丁場になったのは、ひとえに旧国鉄長期債務の処理に関連して、JRにも一部だけ負担してって頼んでいるのにJRではビタ1文払えないとこれを突っぱねて、おかげでたばこ税だの郵便貯金の黒字だのといった、別のお財布を作ってまで処理に取り組もうと考えていた処理策のスキームが、ガラガラと崩れかねないってことを心配して、なんとかしてJRの主張をひっくり返そうと頑張ったから。

 曰く最初に決めた枠組みは崩してないよ、だってお願いしているのは分割民営化の時に分け合った借金で国が引き受けた分を払ってよってことじゃなく、あくまでも国鉄共済年金が厚生年金に統合された時の不足分をもうちょっと出してよってことだし、半年前に施行されたばかりだからって事情は時によって変わるもの、それから経営が悪いから出せないってゆーけど、決してそんなことないだろーさ、ってなことを延々と話しているうちに時間がたってしまった。

 ただし理論武装しても根底にあるのは国民が負担するのにJRが負担しないのはどう考えてもおかしいってな、どう考えても筋道がたたない人情論感情論だったりするから、やっぱりなかなかかみ合わない。なにせ旧帝大ばかりをずらり7人そろえたJR社長連合、おまけに旧国鉄時代は鬼の動労に鉄労やらとくんずほぐれつのバトルを戦い抜いて来た人たちだ、ちょっとやそっとの圧力やおどしやすかしじゃー、テコでも動かないって構えを見せているから、やっぱり最高学府ばかりをぞろり揃えた役所でも、そう簡単には納得させるのは難しく、かくして政治家と国民と新聞記者たちから突っつかれ突き上げられて事務次官、話す声にもどことはなしに力がない。

 もっとも官僚っぽくない居丈高な態度をとらない姿勢を続ければ、人情家とゆーか情実主義とゆーかしょせんは人間の新聞記者も、いつしかホダされて今はJRの見方でも明日には役所の見方とならないとは限らない。僕はといえば泣こうが土下座しよーが筋は筋で通すべきだしJRだって突っ張り通すべきだと思うけど、でもJRの社長たち、みんなフサフサなんだよなー。対して時間はツルツル。こうなるとなんか見方してもいーかって気になって来る。うん、やっぱフサフサは敵だツルツルは見方だ。JRよ負担せよ。世界禿頭同盟が命ず。

 阪急電鉄が年末恒例といってカレンダーをもって来る。阪急って言えばそうあの有名な「宝塚」のカレンダー。でも生憎とムサい男たちの集う記者クラブだけに、ビキニでもヌードでもない男装の麗人のカレンダーにはピクともしないところがもの悲しい。どーせだったらクラブじゅうに配られたカレンダーを300円くらいで買い取って回ってそのまま背中にしょって日比谷へゴー、むしろを敷いて歩道に座って1つ1000円くらいで売れば1つにつき700円の儲けで10本売ったら7000円、100本売ったら7万円の儲けになるのになーと算段する。やらないけどね。でもどーしよー。表紙はえーと誰だったっけ、新しい組のトップになるとかゆー人で、聞くと新しい組の名称は近日中に発表になるんだとか。「虹」は抜かれちゃたんでもーないって言っていたけど、さていったい何組になるんだろー。

 大阪商船三井船舶の年末懇親会に出てあれやこれや喋って引き上げる。ずわい蟹の缶詰がもらえてちょっと嬉しい。金融を担当していた時にはなんだかんだ言ったって儲けていた金融機関から牛肉とか缶詰とかを頂戴した記憶があったけど、エンターテインメントになったとたんにそーいった食い物とかから縁遠くなって、ひもじい思いをしていたもんね。さて久々の蟹缶、やっぱもったいなくもおそれ多い巨大蟹卵にして食べちゃうか。それとも蟹チャーハンにしてしまうとか。やっぱ根が貧乏性なんで真っ当な蟹の食べ方を知らんのですよ。蟹シュウマイにでも挑戦してみるか。

 本を読まなくちゃいけないのに、今晩は早朝から国民の使命であるサッカー観賞が控えているので、週末は地獄の読書漬けになるだろー。でも土曜日はニフティーのイベント取材で明和電機とか大原まり子さんとかを見物に行かなくっちゃいかんし。こーなったら昼間読むか、っておいおい仕事はどーなんだ、いえいえこれも仕事です。そのうちクビになるかもなー。


【12月3日】 すべての愛煙家が地獄に叩き込まれたってな気分を味わっただろう今日の旧国鉄債務の処理に関してたばこ税の引き上げが検討されているってニュースを見て。なんでまた大昔に滅び去った国鉄の借金を自分の一服で支払わなくてはならんのか、とゆーご意見まっことごもっともなのではあるが、なにしろ28兆円からなる大借金だ、借換で金利を圧縮して郵便貯金の黒字を突っ込んだところでとても足りない、かといって総合交通税なんかを導入した日にゃあ、かえって人の流動が抑制されてしまって景気に影響を与えるってことらしく、ならば嗜好品でちょっとばかり値段が上がったってヤメられない煙草からむしり取ろうって算段になったらしい。たぶん。

 個人的には煙草は吸わないわけじゃないけれど吸わなくっても平気なコウモリみたいな奴なので、上がって別段屁でもない。「わかば」好きな助教授は困るかもしれないけれど、もとより値段の安い煙草なんだから我慢してちょと牽制しておき、さてあなたの1服が国鉄の借金返済につながることになった以上は、運輸省の職員は全員が全員明日から愛煙家へと転向して、仕事中だろうと会議中だろうと陳情中だろうと会見中だろうと、のべつまくなしプカプカと吸ってお国のために貢献すべきではなかろーか。同じ庁舎で5階から上が運輸省とゆーことになっていて、そこだけ煙が充満するのも業腹なので、やがては統合となる4階から下の建設省さんにもご協力を願おう。かくして外務省と警視庁に挟まれた第3合同庁舎はインドネシアもかくやと思わせる、霞ヶ関スモーキーマウンテンとなるのであった。ぷかぷか。

 「レディ・ジョーカー」(高村薫、上下各1700円)の「ノワール」を読了。って別に「ノワール」と「ルージュ」に上下が分けられている訳じゃないけど、方や黒、方や赤で装丁されているからには、やっぱこう呼んで欲しかったなあ。たぶん誰もがキリンビールを思い浮かべるビール会社を舞台にして、今はやりの総会屋が絡むは同和問題は絡むはとさまざまな要素がぎっちりと詰め込まれ、警察と報道がくんずほぐれつの情報戦を展開しながらも、根底には世を拗ねた老人の思いつきが流れているという、重層的かつ多面的な物語にのめり込んだが100年目。残る半分を読み終えるためにきっと今晩は徹夜だろー。世相を折り込んでも陳腐にならないのはディティールに徹底的にこだわっているからで、こういう小説を読むとしょせんは上っ面な新聞屋の仕事がとたんにムナシク思えて来る。頑張ろう。

 なぜか知らないけれど案内が来ていた小学館の雑誌「DIME」のトレンド大賞の授賞式に行く。去年はアトラスの「プリクラ」に任天堂の「NINTENDO64」、それから「テトリン」が受賞していたから、きっと今年も「ポケットモンスター」とか「たまごっち」が入ってるなと確信していたら案の定、「ホビー・レジャー部門」に「ポケモン」「ハローキティ」、ニューアイディア部門に「たまごっち」が入っていて、キャラクター関連が賑わった年ってことが改めて裏付けられた。冒頭で挨拶に立った加藤直人編集長も、「キャラクターコンテンツの重要性が増しているって感を強くした」と話していたし。

 授賞式に行った表の理由はきっと「たまごっち」に「ポケモン」が入っているから、きっと授賞式に来ている人たちに挨拶でもしようかと思ったからだけど、裏の理由はプレゼンターとして登場する吉野紗香ちゃんを見たかったから。あの超絶映画「タオの月」に登場した時の薄い着物に押しつけられた胸のささやかな膨らみにアテられた口としては、是非ともそのお姿を拝んで足下にひれ伏し、「踏んで」と言わなくては気がすまなかった。そして実際に壇上でちょこちょこと動く紗香ちゃんを見た時、なんだガキじゃんと思ったことは脇に置き、チャイドルとして一頭抜けた輝きを放つその真相を、すらりと伸びた首やら足首によって、目の当たりにしたよーな気がした。やっぱナマはいーわ。たとえ出演した映画がポン酢でも、出演者には罪はないってことで、ナマに接したこれを契機に、今後も紗香ちゃんを応援していくことにさっき決めた。すっすめー。

 それにしてもとゆーか、やっぱりとゆーか大賞は「たまごっち」が受賞。さっそう大騒ぎするバンダイご一家に近寄ってあれやこれやと話し込んでいると、なにやら入り口の方から巨大な黄色が近寄って来た。おやこれはもしかすると・・・・おお「ピカチュウ」、それも身長1メートル60はあろーかとゆー巨大「ピカチュウ」ではないですか。さすが小学館プロダクションを傘下に抱える小学館のパーティー、日本で唯一の自走する「ピカチュウ」を呼びつけることくらい朝飯前だったってことだろー。でもこの巨大「ピカチュウ」、足があるんだよなー、なんか中途半端なんだよなー。もっと足の短い人を起用しなさいと忠告しましょう。

 さて次第に近寄って来た「ピカチュウ」に、対抗馬にして本命馬の「たまごっち」を掲げるバンダイご一行様もすっかり参られたご様子で、取締役からたまごっちの母とまで夕刊紙に呼ばれた真板さんに至るまで、つぎつぎと「ピカチュウ」と並んだりバックにしたり抱き合ったりして写真を撮りはじめた。おいおいあんたたち他社のキャラとなれ合っていていーんかい。しかしまあバンダイだって食玩の分野では「ポケモン」物をあれこれ出しているし、だいいちこの冬のクリスマスケーキには「ポケモンケーキ」を投入するってんだからまんざら関係がない訳じゃない。少なくとも来年は「ポケモン」も64で人気沸騰だろーし、「たまごっち」だって映画化で人気をつなごうとするから、共闘連帯しつつデジタル発のキャラクターコンテンツとして、しばらくは世評を2分していくんだろー。再来年は知らんが。

 特別賞を受賞した「失楽園」の製作委員会を代表する形で、角川書店からソフト事業部の唐木次長が来ていたので挨拶。なんでも来年はエヴァの劇場版のビデオで一儲けするらしーし、他にもスレイヤーズやらロードス島やらナデシコやらメイズやらのアニメ映画をばんばん出すってことらしーので、ファンはやっぱり目が離せない。もちろん「失楽園」的実写映画もちゃんとしっかりやるみたいで、明日はなんでも「始皇帝」とかゆー映画の発表会が開かれるとか。製作費60億円とは大きく出たもんだが、「もののけ姫」で予想を大外しした僕だけに、絶対無理とか赤字が必至とかなんてことはもう言わない。でも「北京原人」は、ねえ、どうなのバンダイさん、「原人っち」なんて作ってて、いいの?


【12月2日】 ありがとうございます森下一仁様。今週の日曜日付けの日本経済新聞で森下さんが松尾由美さんの「マックス・マウスと仲間たち」(朝日新聞社、1700円)を取りあげて「十代から四十代まで、世代によって読み方が違ってくる小説だろう」と書いていたことに、森下さんだったらどんな感想を持つのかなーって感想を言ったら、ちゃんと近況の方でフォローしてくれました。まさに「世代によって読み方が違ってくる小説」であることを、自らの”経験”を踏まえて考え方を述べてくれていて、なんか公の場所で恥ずかしいことを書かせてしまったかなって、ちょっとだけ反省する。でも恥ずかしいことと思えるだけ、こっちも結構頭は歳食ってるのかもしれない。提示されている問題に反論はあるけれど、それが小説への反感にはならないってところが、この小説の巧さというか説得力で、ならばますます幅広い世代、とくにもはや宇宙人的にその気持ちが分からない10代に、この本の存在を知ってもらい、読んでもらって、どんどんと感想を言ってもらいたい。でも日経新聞じゃあ10代、読まないからなあ。「小学6年生」には書評のコーナー、あったかなあ。

 朝の9時などという新聞記者にとっては早朝どころか未明に近い時間帯に記者会見があるとゆーので職場に出向く。運輸大臣の定例会見で話題は旧国鉄長期債務の処理に関連して、JRにも追加負担を求めるの求めないのと揉めている点。ちょうどこの日、会見の後にどこやらにJR7社の社長を連れ込んで「どうか負担をお願いします」と要請することになっていたけど、どこで会合を持つのかが謎になっていたため、ある記者が「どこでやるんですか」と聞いたところ、会見場に座っていた別の記者が「ちぇっ」と小さく舌打ちするのが聴こえて来た。たぶんこの記者、会見場がどこなのかを割っていて、そこに別の人間を張り付けていたんだろーけれど、オープンになってしまったので抜け駆けができなくなって、ちょっと悔しい思いをしたんだろー。まあ朝に会見があることは解っていたし、聞いて教えなければ追っかけるって息巻いていた元気な社もあったから、いずれバレることだったんだけどね。僕? 解ったら解ったでいーやって思ってた。怠惰だから。

 なにしろ会合の場所が赤坂プリンスホテルって解ってからも、半分寝ぼけてぼーっとしてたくらいだし、駆けつけて騒ぐかって気分にはなれなかった。んでも突然会合の後に記者会見をやるって話が飛び込んで来たもんだから、慌てて赤プリへと駆けつけて会見まで場内をうろうろ。会合の部屋から出てきた社長さんとか大臣さんを取り囲んで話を聞けば、テレビに映る可能性が高かったけど、あんまりテレビ向きのツラじゃないから遠慮して先に会見場でぼーっと「レディ・ジョーカー」(高村薫)を読んで過ごす。うーん面白くって面白くってこのまま会見が始まらなきゃいーのにと思っていたら、ぞろぞろとJR7社の社長さんたちが入場。前に運輸省の会見室に7人揃ったことがあったけど、これが2度目のそろい踏みに「よっ、社長」って呼びかけたら真っ先に誰がこっち向くのか調べてみたくなった。今度機会と勇気があったらやってみよー。たぶん東日本の松田昌士社長だと思うな、1番に向くのは。

 何が問題になっているかを簡単に説明すると、旧国鉄の長期債務ってのがたしか30数兆円あって、それを国鉄の分割民営化の時にJRグループに14兆円、国とゆーか国鉄清算事業団に22兆円だか振り分けて、それぞれが責任を持って処理していくことになったってのが始まりだな。んでもって、JRは経営で頑張って利子を9兆円ばかり、元本は3兆円ばかり減らして来たんだけど、清算事業団の方が例のバブルとその後の地価の大暴落に重なって、高すぎるからと売れず景気が悪いからと売れない悪環境のまっただ中にはまってしまって、結局今に至るまでほとんど処理が進まないまま、利子が積み上がって実に債務が28兆円になっちまった。これが議論のベース。さあ解ったかな。実は僕もこの辺りまでしか解らない。

 さて。国が処理を任された28兆円をいよいよ処理することになって、その時に財政なんかとてもとても余裕がないから、煙草税とか郵便貯金の黒字とかを使おうってことがほぼ決定。ただこれだと煙草好きは「なんで国鉄の借金をわいの煙草銭で返さにゃあかんのか」って怒るだろうし、郵便貯金の黒字を使うって点で貯金者も利益が侵害されると同じ怒りを抱くはず。そんな批判を受けてまで負担を求めることになるんだから、国としても国民の怒りを弱める意味を込めて、いくら最初に明確に切り分けたといっても、ちょっとばかり負担するのが人情ってもんだぜって、JRに追加負担を求めることになった訳だ。ああ、いよいよ解らなくなって来た。

 けれども。手前の財布の借金はちゃんと返しているのに、別の財布の借金を押しつけられるのは筋違いってのがJR側の基本姿勢で、おまけに100歩譲って責任の一端があったとしても、現在の経営状態ではとてもとても支払えないし、そもそも上場の時にそんな使い負担なんて情報は折り込んでなかった訳で、経営を悪化させるよーな追加負担が突然加わって来ると、それこそ株主は怒る、日本の資本市場の信用は失墜し、日本政府への信頼感もガタガタになるぞってJRは主張する。まさにグローバルスタンダードな正論で、これにいくらニッポン的な人情論をぶつけてもかみ合うはずがないんだけど、そこは人民は弱く官吏は強しなニッポン株式会社、どこかでなんらかの落としどころを探りながら、双方の主張に折り合いをつけて、議論を収斂していくことになるんだろー。って他人事みたいに言う私。なんせ怠惰だから。

 ムズカシイ話をしたのでネムくなって来たけど、単に早起きし過ぎたからって説もある。眠い目をこすりながら「トヨタカップ」だ。きっとクルゼイロが勝つんだろーな、ベベットもドニゼッチもリカルジーニョもエリベウトンもいるし・・・・と思っていたらあれれ、強いじゃんボルシア・ドルトムント。最初のうちこそクルゼイロに攻め込まれて結構危ない場面もあったけど、時間が進むにつれて前へ前へと足が進みはじめ、ロングパス、ワンタッチパス、スルーパスを巧妙につないであっとゆー真に相手ゴール前へと到達し、鋭いシュートをポコポコ放つ。クルゼイロもゴールキーパーのジッダが何度もファインセーブを見せていたけど、最後はゴール前でマークが外れてしまって、1点を決められてしまった。

 1点とった後も攻め手は緩めず、かといって守りも疎かにしないので、クルゼイロもなかなか決定的な場面が作れず、そうこうしているうちに1点追加されて哀れネルシーニョ、ベベットド、ニゼッチを確保しながら破れ去ってしまった。点は入らなかったけど、攻撃のアイディアとディフェンスの確実さを見る上で、結構役に立つ試合だったかも。ビデオに撮っておけばよかったかなー。セリエAが”世界最高峰”だなんて妙に褒めそやされている日本だけど、これでもうちょっとブンデスリーガにも注目が集まるかな。個人的にはプレミアリーグが見たいんだけどね。アーセナルとか。


【12月1日】 12月になっちまったよ。1月だったか2月だったかにあと11カ月で今年も終わりだなーなどと冗談めかして言っていたのを妙にはっきりと覚えているのに、その間に何があったのかはろくすっぽ覚えちゃいない。決して忙しかった訳でもなく、むしろ怠惰に1日が過ぎるのを遅いなあ、まだかなあと時計をながめてネットで遊んで待っていたくらいで、そんな退屈な日々の積み重ねでも、終わってみるとあっとゆー間だったのには、ホント歳食うと時間が過ぎるのが早いってことを、身をもって実感したことになる。

 結局この1年で記憶に残ったことといったら、やっぱ「エヴァ」でしょ、それから「ウテナ」かな。「もののけ姫」も入れていーけど、それならダンボな「タイム・リープ」にりょんりょんの「20世紀ノスタルジア」の方が記憶に残る。ってつまりはそーいった物でしか、今年って時間の記憶が残ってないってことで、よほど日々の仕事がイヤで嫌で仕方がなく、架空の世界に逃避していたんだってことが、改めてハッキリしてしまった。これからの人生設計を立てるにあたって決しておろそかに出来ない歳、遊びっぷりに目をつけられて、いよいよ尻に火が着いて来たこともあるし、残る1カ月くらいは真っ当な世界で真っ当な仕事に邁進し、それなりの成果を残した上で、来年からは再び架空の森へと逃げ込むことにしよー。残る1カ月ってあんたいったい運輸省はどするのかって? さあね。うふふふふ。

 おー宝塚。東宝ビデオから届いたリリースを見ていると、なんとまあ宝塚歌劇団のビデオがいよいよレンタルでリリースされるとゆー案内があった。よくは知らんが宝塚ってビデオになってなかったの? もしなかったとしたらこれは結構ファンにはタマラナイ品物かもしれず、レンタル向けであるにも関わらず、高いお金を払ってでも自宅に集める人が出るに違いない。どーせだったら5000円くらいでセルで出せばいーのにね、全国1000万(もいるのか)の宝塚ファンなら10タイトル出る全部を絶対集めるから。

 ざっとラインアップを見ると、2月13日にリリースされるのが星組の「国境のない地図」(麻路さき、白城あやか、稔幸)、同じく星組の「剣と恋と虹と」(同)雪組の「JFK バロック千一夜」(一路真輝、花總マリほか)などなど。3月13日には月組の「チェーザレ・ボルジア」など3本、4月24日には花組の「花は花なり/ハイペリオン」ってのが発売されるらしーけど、うーん書いていていったいどんな話でどんな人たちが出演しているのかさっぱり解らんぞ。あくまでもショップ向けだから一般の人は買えないんだろーけど、10本セットだとステッカーにタカラヅカ歌劇紹介パネルボードに特製吊りPOPといったオリジナルプロモーショングッズがもらえるとあっては、ファンなら抜け道使ってでも購入するかも。頼んで宣材だけガメて高く流すか。

 矢作俊彦さんの「あ・じゃ・ぱん」を上巻200ページあたりまで読み進む。2巻組でどちらも400ページ強だから、だいたい4分の1を読み終えたってことになる。なるけれども話は未だ端緒についたばかりで、中曽根康弘に田中角栄ってな亡霊(あっと中曽根はまだ生きている亡霊だ)がばしばしと登場しては日本の歩んできた道にあれやこれやと注文をつける、どーにも政治っぽい、説教くさい話になってしまって面白いんだけどどこか醒めてしまう。夢物語に逃避ばかりしていると、こーした真正面から今の日本をおちょくる話に頭がついていけないらしー。漫画ばっかり読んでるってこともあるしな。

 加速度が付けば週内には読み終えられるだろーけど、困ったことに高村薫さん渾身の大作「レディ・ジョーカー」(毎日新聞社、上下各1700円)が出ちまった。「リヴィエラを撃て」を読んで「マークスの山」も読んで「照柿」は読んでいなかったから、合田刑事がどんな人だったのかちょっと思い出せずにいるけれど、舞台が企業とあっては端くれながらも経済記者、まずは読まねばなるまいと早速買い込んで部屋の中に積み上げる。ああまだ「消えた子供たち」も未読だよ、それから「風車祭」も読み差しだってのにまったくもう。毎日本を買っては部屋に積み上げて巣を作る、まるで私は冬眠前の熊か卵を生むまえの鳥だね。瀬名秀明さんの新刊もいよいよ発売出し、やっぱ真っ当に生きる宣言は撤回しよー。今月は(も)、読書だ。


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