縮刷版96年7月下旬号


【7月31日】 新橋駅を降りて徳間ホールに向かって歩いていると、後ろから肩を叩く人がいる。振り向くと外国人。いっしゅん「チョットイーデスカー」の人かと思ったが、よく見ると、これから向かう徳間ホールで、ビデオアニメ「リトルフット」の発表会を開くCICビクター・ビデオのジャック・メオン社長だった。よく解ったものだと思ったが、結構特徴的な顔だちとゆーか髪型をしてるし、持って歩いているアタッシェケースも目印になったのだろーか、後ろからでも僕と解ったみたい。

 こっちはといえば、日本人でも外国人でもなかなか人の顔が覚えられず、覚えているよーでもいざとなったら「違ってるかもしれないなー」と疑心にかられて、なかなか声をかけられないまま不義理をしてしまうことがよくある。佐々木倫子さんの「代名詞の迷宮」シリーズの黒田勝久くんではないけれど、知り合いを覚えていていちいち教えてくれる付添人がいたらどんなに嬉しいか。そんなわけにいくはずもないから、ここはデジタルカメラでも買って、会う人会う人写真にとってパソコンで管理するか。それでも忘れてしまうんだろーけど。

 「リトルフット」は泣けるアニメ。子供に見せたら子供が泣きだすんじゃないだろーか。子供がいないからよく知らないけど。最近のディズニーアニメは「ポカホンタス」にしても「ノートルダムの鐘」にしても、純粋に子供向けアニメって感じじゃないから、ビデオになった時に、お母さまがたに受けるかどーかちょっと心配。だからこそ期間限定のふれ込みで前に出した「ピーターパン」とか「眠れる森の美女」とかを、タマを揃えるために、もーいっぺん再刊しているのかもしれないが。

 夕方から電通の夏期懇親会。といっても芸能人が練り歩き景品が乱れ飛ぶ新年会のよーな豪勢なもの(行ったことがないから想像だけど)ではなく、社長の人がながながと喋って役員の人とだらだらとしゃべって2時間あまりを過ごす、至極真面目な会合。早速社長を取り囲んでいる1群の背後霊となって、運ばれてくる料理をムシャムシャと食べながら、話を聞いているフリをする。真面目な記者ならネタの1つでも取ろうと、役員の間をマメに歩き回るのだろーけど、怠惰な記者はそーゆー無粋なことはせず、社長の話を一方の耳できき、テーブルの料理を一方の鼻の穴で嗅ぎ、歩き回るバンケットのお姉さんを一方の目で見ながら、しばしの時間をくつろぐ。

 再販制度がなくなって消えるような活字文化なら、消えてしまった方がいいというのが僕の暴論。読みたいものがあれば読むし、読みたいものがなければ自分で書くか人に書かせる。交ぜ書きを平気でやる新聞の人が、どーして「新聞が活字文化を守ってきた」なんていばっていられるのか不思議でならない。新聞の文章は、情報をコンパクトに伝えるのに適した文章であって、美しい日本語を守り伝える役目など負っていない。書き手としての美意識はあるが、こだわりはない。それでは困るというのなら、ちゃんとした日本語で書かれた小説を読んで、ちゃんとした日本語を覚えて下さいというしかない。ちゃんとした日本語で書かれた小説が少なくなってる? うーん、それは困った。


【7月30日】 木場にある山一情報システムに行った帰りがけに、地下鉄東西線の木場駅と東陽町駅の間にある小さな古本屋に立ち寄る。さほど期待しないで入った古本屋で、長く探していた本が見つかるというのはよくある話で、前に船橋の「ブックオフ」で、とり・みきさんの「てりぶる少年団」を見つけた時もそうだった。おまけに今日はラッキーがダブルで到来。これで運を使い果たして、この夏はもうきっといいことは起こらないに違いない。哀しい夏になりそうだ。

 まず見つけたのが、内田善美さんの「空の色ににている」(集英社)。名古屋にいる時に持っていた単行本だけど、引っ越しの時に実家に置いてきてしまい、ときどき思い出したように「読みたいな」と思って神田の古本屋やまんだらけを覗いてみた時には、もうどこにも置いてなかった。ぶーけコミックスから出ている単行本には、ほかに「かすみ草にゆれる汽車」と「ひぐらしの森」があって、どちらも古本屋で買い直し済み。今日はさらに、りぼんマスコットコミックスから出ていた「秋のおわりのピアニシモ」と「星くず色の船」も購入できたから、名古屋から持ってきた「草迷宮・草空間」と「星の時計のLiddell」と合わせて、集英社から出ていた内田さんの単行本を、再び手元に揃えられたことになる。それにしても大好きだった漫画家で、結構人気があると思っていたのに、今では100円均一で古本を揃えられるのって、嬉しいけれどちょっと寂しい。

 2つ目のラッキーは、久美沙織さんのファンタジー作品「ソーントーン・サイクル」(新潮文庫)を、第1卷「石の剣」、第2卷「舞いおりた翼」、第3卷「青狼王のくちづけ」の3冊まとめて購入できたこと。「青狼王のくちづけ」は去年の9月に出た本だから、今でも探せば書店に並んでいるけど、「石の剣」と「舞いおりた翼」は、シリーズの巻頭と巻中であるにも関わらず絶版になってしまっていた。「青狼王のくちづけ」が出たときに、新刊でなかなか変えなかったのも、前の2巻を読んでいないと気になってしょうがない、シリーズ物読みの習性が働いたからで、どうせなら最初から読んでみたいと、古本屋で探して歩いていた。

 この古本屋には、あと1組分「ソーントーン・サイクル」全3冊を揃えられるストックがあったから、欲しい人は早めにのぞいてみよう。場所は東陽町から木場に向かって永代通を歩いていく右側の歩道の途中。売り切れの時はご勘弁。

 こちらは新刊本で、雑誌「ユリイカ」の8月号「ジャパニメーション」を購入。1冊のほとんどを使った特集は、押井守・伊藤和典・上野俊哉の対談に四方田犬彦、岡田斗司夫、大塚英志、村上隆といった「是非読んでみたい」と思っていた人達の論考が載っていて、ボリュームの多さと中身の濃さに、しばし脳みそをかき混ぜられるような興奮を味わう。岡田の論考の末尾に登場する「(アニメ特集の『ユリイカ』を読んでいる君は立派なオタクだ)の1文に妙に納得。それから「『ユリイカ』や『現代思想』で『エヴァ』や『攻殻機動隊』が取り上げられるのは、これらの作品が一般に受け入れられたのではなく、ユリイカがオタク化した、と考えるべきであろう」にも。SFマガジンが「エヴァ」を特集するよりも、「ユリイカ」が取り上げた方が「らしい」と感じたのも、そんな意識が根底にあったからなのだろう。


【7月29日】 (27日から続く)鰻の腹から見つかった指輪を持って、杉浦日向子さんの「鏡斎まいる」(杉浦日向子全集第5卷「東のエデン」所収)で紹介されていた術士、霞鏡斎のもとを訪ねる。雷童子に引き裂かれた小宮藤九郎を蘇生させた術を、助教授にも試して欲しいと乞い願うと、鏡斎は水盆を取り出して、「全覚坊、全覚坊。」と話しかけた。しばらくすると、衣をまとった小人が浮かび上がってきて、「またお前は昼寝の邪魔をするのか」と鏡斎を叱った。鏡斎は詫びるような表情を浮かべて、「知ってのとおり帰らない人がいる」と全覚坊に話しかけたが、全覚坊は「仕方のないこと」とにべもない。「そこを頼みたい」と鏡斎。「天界のものとは話が通じぬ」。

 やれやれといった表情で、全覚坊は鏡斎に「上等の酒を五十石」と供物を求める。いっしゅん渋い表情を浮かべた鏡斎だが、仕方がないという顔でこちらに目をやり、1度2度うなづくと、指輪を水盆に落とした。指輪は水のなかをゆっくりと沈んでいき、そのまますーっと消えてしまった。

 しばらくして、浜松の町に助教授が戻ってきた。どこも変わっていないのに、どこか違う雰囲気をまとって取材に走り回り、山ほどの原稿を書き、学生に講義を行っている。そして、どんなシチュエーションでも指輪だけは決して外そうとしない。小宮藤九郎は残された腕から蘇生されたが、指輪だけしか残っていなかった助教授は、蘇生された後も指輪を外すと、とたんに現世(うつしよ)の肉体が雲散してしまうらしい。「それは弱りましたね」と話しかけると、助教授は口ひげの端をニッと上げて、寂しそうに笑った。(以上業務連絡、ほとんどすべてフィクション。ご無事でなによりです)

 真ん中あたりまで読んだまま中断していた笠井潔さんの「サマー・アポカリプス」(創元推理文庫、850円)を読了に持ち込む。漫画やほかのミステリーに目がいってしまって、なかなか戻ってこれなかったが、ふとしたことで気分が変わり、しおりを取り払って続きを読み始めたらうまくハマッた。ミステリーは1度ツボにハマルと、謎を追って次々とページをめくってしまうから、読み終えるまでの時間も早い。これで次の「薔薇の女」に移れる。さらに次の「哲学者の密室」が控えているが、「薔薇の女」は1両日中に読了に持ち込めそうな予感がしているから、どうやら夏休みが終わるまでには、「哲学者の密室」も読み終えられそうな気がしている。

 とは思っていても、新刊への興味はなかなかに尽きず、今日も読売新聞のマルチ読書面に紹介してあった坂口尚さんの「石の花」を講談社漫画文庫で3卷まで買う。「COM」や「SFマガジン」などで見知っていた坂口さんだったけど、「石の花」だけはなかなか手に取ることが出来ないまま、いつしか絶版になってしまっていた。坂口さんの没後、ようやくにして復刊されたものを見て、やはり上手い、そして切ないと思った。もう2度と坂口さんの新作を読むことができないのだと思って、とても哀しくなった。

 マルチ読書には、坂口さんの師匠(坂口さんは手塚プロダクション出身)に当たる手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」をこき下ろす一方で、坂口さんの「石の花」を絶賛する評論が載っていた。たしかに評者がいうように「石の花」の志の高さは素晴らしいが、かといって「アドルフに告ぐ」の志が低かったとは思えない。エンターテインメントを常に志向した手塚さんと、求道者のように漫画の可能性を追求し続けた坂口さんとの方法論が違いが、同じナチスドイツへの批判や戦争の残酷さを描いた作品にも、やっぱり現れていたのだろう。


【7月28日】 「ガメラ2」を日比谷映画まで見に行く。10時からの第1回上映だったけど、夏休みってことで子供連れの親たちで館内はほぼ7分の入り。公開からまだ2週間しか経っていない映画がこれじゃあねって思ったけど、暑いし早いしっオリンピックはやってるしってことで、まあこれくらいの入りでも万々歳なのだろーなと思い直す。

 さて映画の出来。「いいんじゃないの」ってのが率直な感想。「1」に比べて結構悪い評判が経ってたから心配していたけれど、最初から最後まで息をつかせぬストーリー展開に、1時間半の上映時間があっとゆーまに経ってしまった。上映前に「モスラ」の予告編が放映されて、これがまた重量感のない縫いぐるみのモスラが浮き上がって空を飛ぶとゆー、なんとも情けない映像を見せられたばかりだったってこともあって、レギオンの造形にもガメラの造形にもリキ入ってるなって感じた。

 普通だったら尻がこそばゆくなるよーな、子供たちの見つめるなかでのガメラ復活の場面も、妙にシーンを引っ張ることなくまとめていたし、水野美紀の演技も中山忍ほどには素っ頓狂ではなかったから、「いちおー映画だなー」と思って見てられた。オリンピックで世界記録を狙っているよーなハリウッドに対して、高校総体で新記録が出たといっては大騒ぎするよーな日本のソフト状況をどーにも歯がゆく思っていて、「ガメラ2」もその域を抜けていないんだろーなと、妙な期待をかけていなかったから、いい意味で期待を裏切られたって感じ。なんかホメすぎか。徳間康快には火曜日にホテル・オークラで会ったばかりだったから、映画の官房長官役で出てきたとき、「あっ、徳間だっ」とすぐに解った。あれは演技じゃなくって地のまんまだね。

 帰りがけに本屋に寄る。「闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相」(一橋文哉、新潮社、1600円)は、タイトルのとおりに「警察庁指定広域重要114号事件」として指定された「グリコ・森永事件」の顛末を記したルポルタージュ。事件そのものが未解決で、多くの謎が残されているだけあって、それらの謎を1つ1つ検証しながら、今なお闇の世界でほくそ笑む犯人グループの姿に迫ろうとした力作。事件の論評そのもよりも、江崎グリコという会社の謎、事件を解決できなかった警察の謎、そしてなによりも犯人グループの謎といったものへの探求が、読む者をミステリー小説の世界へと誘う。もちろん解決編はついていないから、あとは読んだ人が考えるしかない。事実は小説より複雑なんですね。

 偶然なのかもしれないが、この本と同じ棚に「警察庁指定広域重要113号事件」に関する本が並べられていた。ご存じだろうか。勝田清孝という名前を。警官から奪った短銃で、スーパーを襲い、養老インターに死体入りの車を乗り捨て、最後に銀行を襲おうとして取り押さえられた1連の事件の犯人で、すでに死刑が確定している。当時住んでいた名古屋を中心に、1連の事件が起こったため、新聞紙上でさかんに報じられて記憶にも強く残っている事件だが、その当事者である勝田が、逮捕後マスコミからの接触に一切の沈黙を貫くなかで、1人の女性と何百通にも達する文通を行っていた。「113号事件 勝田清孝の真実」(恒有出版、1500円)はその女性、来栖宥子に届けられた勝田清孝からの書簡を中心に、悔恨の念をつづる勝田の心情を記した本である。

 長く続いた昭和の末期に、相次いで起こった2つの広域事件を思い返す時、高校生から大学生へと進む過渡期にあった当時の自分が、胸躍る気持ちで事件の成りゆきを見ていたことに気がつく。不謹慎な態度は、今だってたいして変わっていない。むしろ人間がスレてきた分、あらゆる事件にはウラのウラのウラなんかがあるんじゃないかと想像して、益体もない推理をめぐらしている。ミステリーなんか読んでいるとなおのこと、犯罪に潜む世紀の陰謀とか時代を越えた怨念とかを想起して、いよいよ事件の本質を見えなくしている(見なくなっている)。真実を追っかけるブンヤにはつくづく向いていないと思う。


【7月27日】 土用の丑。暑気払いを兼ねて鰻でも食べようと、近くの魚市場に行って桶のなかで蠢くまるまると太った鰻を1本、仕入れて帰って来た。浜名湖産ということで、驚くほど値段が高い。目に楔を打ち、背中に包丁を入れて1気に引き裂こうとしたが、真ん中辺りで「ガリッ」と音がして包丁が動かなくなった。「なんだろう」。開いた背中から手を入れると、金属らしきものが手に触れた。引っぱり出すと、鰻の血でぬらぬらと光った、1本の銀の指輪だった。

 「どうして指輪が鰻の腹に」。不思議に思って、指輪の血糊をふき取り、内側に刻まれた文字を読んで、頭から血の気がすーっと引いた。「AKA・・・、まさかこれは!」。心当たりがあった。1週間前から、浜松近隣に住んでいる助教授が1人、家族とも仕事先とも連絡を絶ったまま、行方をくらましていた。辛口の評論が禍してか、依然から身の危険を訴えていたこともあり、知人たちが心配をして、あちらこちらに消息を問い合わせているとも聞いていた。「鰻のエサになっていたのか」。僕は指輪をポケットに入れると、再び包丁を鰻に入れて引き裂き、ガスレンジで焼いて食べた。(以上、業務連絡。1部を除いてフィクション。正直心配しています)

 田村亮子は銀。決勝の相手がフィールドに姿を現した時から、嫌な予感がしていた。試合が始まって、パパッ、パパッと手を飛ばし合う様を見て、これはヤバイかもしれないと思った。案の定、相手を警戒し過ぎて攻め手を欠いたまま、受け身の試合をしてしまい、最後はあせったのか仕掛けた技を返されてポイントを取られ、負けてしまった。まあ、まだ20歳だから次とか次の次とか次の次の次とかに出ても不思議じゃないから、あきらめないでほしー。でも負けた相手もまだ16歳とゆーから、4年後も8年後の12年後も、きっと田村亮子のライバルになるんだろーな。

 柴田昌宏の「クラダルマ」(秋田書店、500円)は、17卷にして将介と由麻が「合一」を成し遂げた。おめでとう。次の卷くらいで終わりかな。柴田さんの作品とは高校生の頃に読んだ「ブルーソネット」からの付き合い。「狼少女ラン」のシリーズは、いったいどーなってしまったのだろーか。平井和正さんの「ウルフガイ」も復活したことだし、こちらでも新しい展開を期待したい。


【7月26日】 笠井潔さんの「矢吹駆シリーズ」第4弾となる「哲学者の密室」が、カッパノベルズから再刊となったので早速手に入れる。上が1300円、下が1200円。足すと900ページ近い分量があって、この週末を楽しませてくそうだなーと期待に胸躍らせる。しかし、第2弾の「サマー・アポカリプス」、第三弾の「薔薇の女」を先に片づけないといけないから、読む量は文庫であと800ページくらいあって、とても週末には「哲学者の密室」のラストまでたどり着けないだろーなと思い直す。週末はいろいろとオリンピックの面白そーな種目があって、そっちも見なくちゃいけないから、本を読む量はぐっと減りそー。とゆーわけで、多分「哲学者の密室」の感想を言えるよーになるのは、今年のクリスマス当たりになるだろーと今から予言しておこー。

 ほかにはケヴィン・アンダースン&ダグ・ビースンのコンビによる「星海への跳躍」(ハヤカワSF文庫、上下各660円)を購入。「臨海のパラドックス」にはあんまり感心しなかったし、「無限アセンブラ」は積ん読の山の下に埋もれてはや何年かとゆーところなのに、それでも買い込んでしまうのところが哀しいSF者の性なのよ。今買っとかないと、ずーっと再版されないで、幻になってしまう本が多すぎるからね。同じ「星海」が付いていても、森岡浩之さんの「星界の紋章」は、重版がかかる位のヒットに育っている模様。久々のヒットに早川書房で「大入り袋」は出したのだろーか。

 オリンピックのサッカー男子予選最終戦は、日本が勝つには勝ったが、得失点差の関係で決勝トーナメントに進めないことになった。ナイジェリア戦の失点がつくづく悔やまれる。とくに2点目のペナルティー。前園は最後の試合でちょっとだけいいところを見てもらえた。マーク厳しいなかを切れずによくやった。日本に帰らずこのままスペインでもイタリアでも渡って、ワールドカップ予選のために修行して来てほしー。加茂! 前園はフル代表に入れるんだろーな。オリンピックチームとAチームをすっぱりと入れ替えちゃったほーが強いかもしれんぞ。井原と高木とカズだけ残してさ。でもやらないだろーな。せめて小倉と森山と平野と大岩を入れてくれい。森山は前回の中山のよーな活躍をするはず。なにせ天皇杯で優勝した夜に名古屋で放送された祝勝番組で、サルの着ぐるみ来て顔に紅さしてヘラヘラ笑ってたほどの大物だからねー。


【7月25日】 期待に胸を躍らせて、大日本印刷の「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」に向かうが、一昨日見たショートヘアーで長身の美人はいなかった。ぐっすん。でもいい、今日はお姉さま風長身の美人がいて出迎えてくれたから。もちろん声なんかかけられるはずもないから、目配せ手踊り足じゃんけんといったあらゆる手段を通じて魂の叫びを伝えるが伝わらない。仕方がないので案内されたとおりに会場に上がって、席に座ってためいきをつく。ほーーーっ。

 会場で見たのは、映像プロダクションのユニコーン・インターナショナルとゆー会社がインターネット上に立ち上げた、自然や野生動物をテーマにしたホームページのデモンストレーション。あまり聞かない名前だけど、このユニコーン・インターナショナルは、かの「ナショナル・ジオグラフィック」が持っている自然や野生動物に関する映像の、日本での窓口みたいいな役割を果たしている。もちろん自社でも映像作品を数多く撮っていて、ほかにも2年に1回日本で開かれている、ワイルドライフ・フィルムのコンペティションの主催なんかもやっている、その方面では結構知られた会社らしい。

 ホームページにはギャラリーとか動物園・水族館等のホームページへのリンク集とかが設けられている。面白いのは「ミジンコ」では彼をおいてほかにいないとゆー、サックス・プレーヤーの坂田明さん協力して作った、「ミジンコ」に関するコーナーがあること。芸能人には、坂田さんに感化された隠れミジンコファンも結構いるそーだし、そんな人達の「ミジンコ日記」なんてのが公開されたら面白いかも。

 夕方は富士通の発表会。ずいぶん昔に記事にしたことのある、3次元空間をコンピューター・ネットワーク上に構築して、そのなかでチャットとか買い物とかを楽しめるよーにするサービスが始まるとゆー話。まだ続いていたのかとゆー「インターネットエキスポ」への出展物の1つとして作ったとゆーから、もちろん利用料はタダ、タダ、タダ、タダ、タダ!。(ムダ、ムダ、ムダ、ムダムダ!ぢゃないよ)。結構リアルなアバターが出てくる3次元空間で、アクセスしている人とか、このサービスを始めるために富士通が用意した「サイバー・ギャル」とのチャットなんかが楽しめるし、ガメラのお店とか妖怪のお店とか巨大迷路とかを歩き回って遊ぶこともできる。もっとも利用には専用のクライアントソフトが必要。雑誌の付録とかで配布される前に、会場でもらたのはいいが、残念なことにとゆーか当然のごとくウィンドウズ対応のみ。かくしてCD−ROMは我が家の新しい手鏡と化す。

 井上夢人さんの新刊「パワー・オフ」(集英社、1800円)を購入。新しい技術を小説の中に取り入れることに長けた井上さんだけに、「A−LIFE(人工生命)」とかコンピューター・ウイルスとかいった、文化系人間が目を回しそうな題材を、実にうまく説明しながら、かつ小説のモチーフとして昇華している。プロのソフトウエア・エンジニアが読んだら目を回しそうな描写があるかもしれないが、小説としてはとりあえず面白い。理系ミステリー作家として目下売出中の森博嗣さんが読んだら、いったいどんな感想を書くのだろーか。


【7月24日】 家の近くの靴屋で、ナイキの「エア・ジョーダン」のローカットが並んでいるのを見つける。ナイキの本を読んだばっかりだったし、他の店では品切れか品薄でサイズ切れかどちらかだったりするのに、その店にはピッタリ合うサイズが並んでいたので、欲しくて欲しくてたまらなくなる。しかし、定価を大きく上回る2万2800円という値段に気がとがめ、この値段なら前から欲しかったフットサル用の「エア・リオ」が買えるじゃないかと思い直して、結局買わずに店を出る。

 生来の優柔不断さが出たのだろーか、店を出てから「やっぱり買った方がよかったかなー。それとも買わずにすませてよかったのかなー」と思い悩んでいるから始末が悪い。「悩むくらいな買っちゃった方がいいです」とは、某氏の本に対する購入態度への示唆だが、壊れたからといって何10万もするパソコンを買い換えるよーな収入もない身だけに、2万もする買い物となると、悩みの深さも段違いに深くなる(大げさだねえ)。2−3日して見に行って、売り切れちゃっててガッカリするんだろーな。そんでもって「僕はサッカープレーヤー」と、無理矢理自分を納得させるんだろーな。嫌な性格だなー。

 会社では企画記事の出稿とリリースの処理。ビートルズのロゴや写真を使ったライセンスビジネスをプロデュース・センターとゆー会社が始めるとゆー記事とか、夏目雅子のCD−ROM写真集が出るとかいった記事を書いていると、自分が本当に工業新聞の記者なのか解らなくなる。「興行新聞」といった方が相応しいかもしれない。それにしても夏目雅子の人気は未だ底知れないものがあるよーで、欲しい欲しいとゆー人が、年輩の人を中心に何人もいた。どっかのコピー機屋が行ったオリジナル写真集のプレゼントにも、何万とゆー応募があったと聞くくらいだし、CD−ROMもきっと、結構な売れ行きを見せるのだろー。自分もその1人だったりするかもしれない。

 午後は電通に行って、コンピューターを使ったプレゼンテーション用シミュレーションシステムとゆーやつを見る。架空のビールのラベルを作って、3DCGで作った缶のテンプレートに貼り付けて見せてみたり、同じく3DCGのコンビニエンスストアの棚にPOPといっしょに並べてみたりして、クライアントにイメージをビジュアル化して見せるシステム(カタカナばっかり)だが、シリコングラフィックスのマシンをぶん回しているわりには、CGに感動するほどの凄みがない。実際には無理なんだろーけど、この程度だったら、フォトショップを使って加工したりすれば、同じよーなことが出来ちゃうんじゃないかと思えてくる。しかしまあ、世の中とゆーものは、値段の貼る機械でやったことは価値も高く、安い機械でやったことは低い価値しかもたない、なんて風潮がなきにしもあらずだから、ONYXくらいぶん回して見せた方が、ありがたみがあるのかもしれない。ひねくれてるねー。

 岩崎陽子さんという女性漫画家の「王都妖奇譚」(プリンセス・コミックス)を第9卷まで読了。悪役・橘影連の非道さ外道さもますますパワーアップして、晴明と激しいバトルを演じて見せてくれる。続きが楽しみ。それにしてもプリンセス・コミックスを買うなんて、山田ミネコさんの「うふふの闇」以来かなー。


【7月23日】 「O−157」ではないと思うのだが、朝から胃腸の調子が悪い。寒気がするのに汗をかく。立ち上がると眩暈がする。ご飯が美味しく食べられない。それでも仕事を休むわけにはいかず、気力を振り絞って家を出て、最初の取材先となっている東京・銀座の大日本印刷「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」へと向かう。

 1階受付にいた、170センチを越えるスラリとした長身とショートヘアーが特徴の超美人に来訪の意図を告げて、教えられた部屋へと向かう。会見自体は、公開鍵暗号を使える高い演算処理能力を持ったICカードを開発したとかゆー話だったけど、茫洋とする頭には小難しいことなど入るわけもなく、霞む意識には、さっきの美人の顔だけが現れては消えていく。明後日も会見がある予定だけど、また会えるかな。まあ会ったところで、臆病者の自分から、声なんかかけられる訳はないんだけど。

 「ggg」には15分ほどいて、それから地下鉄に乗ってホテル・オークラへと向かう。徳間書店とディズニーが業務提携するとゆー内容の会見。何日も前から話題になっていただけに、会場となった本館1階平安の間は、開始時刻のしばらく前には、ジャーナリストや業界関係者でいっぱいになった。日本側の出席者として登壇したのは、御大徳間康快氏とアニメ監督の宮崎駿さん。アメリカ側は外人女性と外人男性。名前は忘れた。

 さて今回の業務提携、目玉はやはり、「風の谷のナウシカ」とか「となりのトトロ」とかで、日本にとどまらず広く世界にファンを持つスタジオジブリのアニメ作品を、ディズニーが全世界に配給するとゆー点だろー。宮崎アニメがいよいよ全世界に出て行くんだから、ファンとしては喜んでいいことなのかもしれないが、それにしては会見の雛壇に並ぶ、宮崎監督の表情が冴えない。世界に進出することよりも、新作の進行状況とか、高年齢化していくスタジオの人材のこととかの方が気がかりらしい。「徳間社長にとっては良かったこと」とゆーコメントからも、とりたてて世界進出を喜んでいないよーなニュアンスが感じられる。

 これは勝手な思い込みだが、出版物は「アニメージュ」くらいしか聞かず、音楽とかゲームとかでは業界をリードする会社とはいえない徳間グループにとって、スタジオ・ジブリのアニメ作品や、「Shall we ダンス?」「ガメラ2」などの大映作品は大事な打手の小槌。それをディズニーにみすみす引き渡して、世界進出だなんて言ってしまっていーのだろーか。結局のところはディズニーが、スタジオジブリの作品を手にいれたってことになりはしまいか。まあ海千山千の徳間社長のことだから、ただでディズニーと取引するはずはないだろー。新作映画の「阿片戦争」のビクトリア女王役に、ダイアナ妃を起用する考えを、まだ捨ててはいないみたいだし、しばらくは楽しませてくれそー。でも忙しくしてくれるのだけはご勘弁。


【7月22日】 全国200万人の日記者のおそらく大半が、今日の歴史的な事実を己の日記に書き記したであろう。アトランタ・オリンピックのサッカーで、日本がブラジルを打ち破ったのだ。公式戦で日本のチームがブラジルを破るのは、A代表はおろか、U−25、U−23、ユース、ジュニアユースなどなど細かく別れている日本代表チームでは初めての快挙。それも国際Aマッチとは名ばかりの、オレたちはすっげー強いチームなんだけど、シーズンオフだし、日本にでも行って遊んでこよーか、ついでにサッカーなんかしちゃったりしてー、といった浮わっついた観光気分で来日したチームが行う勉強試合とは、格がぜんぜん違う。オリンピック予選の大事な試合で、真剣に望んでいった相手に負けたんだから、ブラジルの悔しがりようったら「涙でアマゾン川も推移が数ミリ上がる」なんて記事が出ても不思議でないくらいに、もの凄いものだったろー。

 次はナイジェリア戦。今日のブラジル戦みたく、ディフェンスがマークをきっちしり決めていけば、そうそう点は取られないと思う。あとは決定力で、こちはら前園が日に日に強さを増していくマークを振り切って、どれだけ自分の仕事を行えるか、といった点にかかっているよーな気がする。ハンガリーかナイジェリアかどちらかに勝てば、決勝トーナメントへの出場は確定的。どーせなら次のナイジェリアを粉砕して、地域予選の時みたいに早々と決勝進出を決めて戴きたい。最後までもつれるのって、暑い盛りの心臓にとっても良くない。

 富士通から飛び込みのリリース。富士通が出資して昨年設立したベンチャー企業「トリワークス」が第1弾製品を発売したって内容で、読むと「バーチャルトリップ秋葉原」とゆーCD−ROMを、31日から販売開始すつろゆー。まあ、バーチャルといっても、遠目にはすっきりして見えているのに、近くに寄ると結構いい加減な造りが気になるフルポリゴンのCGキャラクターが、同じくCGで描画される秋葉原の街並みを闊歩するとゆーものではない。秋葉原の街を4000枚ほどのフォトにおさめておき、利用者は紙芝居のよーに写真を1枚1枚めくりながら、秋葉原の街並みを散策している「気分」に浸る仕掛けになっている。もっとも、街中を歩いたりクイズを解いていくだけの内容だから、普段から行き慣れている人にとっては、どーでもいーよーなCD−ROMではある。どーいった人が買うのだろーかと少しだけ悩む。


【7月21日】 柔道女子72キロ超級の阿武敦子さんを、1回戦開始後わずか30秒で内股に切ってとったブラジルのダシルバ選手。スポーツ紙に載った写真を見る限りでは、ディック・マードックもさもありなんとゆーごっつい顔つき体つきなのに、女性として出場しているのは、生まれつきの両性具有を手術して、セックスチェックで女性として認定されたからなのだとか。漫画や小説の世界に出てくる両性具有者といえば、ほとんどが超絶的な美形に描かれているが、実物をこーして目の当たりにすると、そーした描き方がひどく1面的なものであることに気がつく。

 伏見憲明さんの対談集「クィア・パラダイス」(翔永社、1500円)には、両性具有者へのインタビューとか、両性具有のチャート的分類なんかが載っていて、こーした方面に興味のある人にはおススメ。両性具有ではないが、ちょっと前に性転換手術を認可するかしないかで話題になった、「性別自己同一性障害」に関する記述もあって、その時に新聞なんかにコメントしていた虎井まさ衛さんへのインタビューも読める。出版社がコンピューター関連でお馴染みの翔永社ってところがよくわかんないけど。

 安倍晴明づいているらしく、秋田書店のプリンセス・コミックスで出ている岩崎陽子さんの「王都妖奇譯」を3卷まで買う。稀代の陰陽師晴明が、都を脅かす妖怪変化と戦うストーリーは、たとえば夢枕獏・岡野玲子の「陰陽師」(スコラ)なんかとも共通だけど、雰囲気は全然違う。太くしっかりした描線は少女漫画的というよりは少年漫画的で、絵柄は全然似ていないのに、どことなく「ブルーソネット」の柴田昌宏さんを思い浮かばせる。パートナーも「陰陽師」が源博正なのに対して「王都妖奇譯」では藤原将之。小説だけど加門七海さんの「晴明。」「鬼哭。−続・晴明。−」では、師匠の息子の加茂保憲がパートナーとゆーかライバル役を務めていたりする。描く人それぞれに異なった晴明像があるよーだが、超越的な力を持った美形ってゆーところはどれも共通。さて、あなたのお好みは?

 図書館に行って借りた本が、摩耶雄嵩さんの「痾」とか、今日の話題とまんざら関係なくもない作品でデビューした北川歩実さんの「硝子のドレス」とか、有栖川有栖さんの「幻想運河」とかいったミステリー系ばかり。昔は図書館に行ったら、早川の海外SFノベルズとかサンリオSF文庫とかいったSFばっかり探して読んでいたものなのに、最近はハードカバーのSFが滅多に出なくなって、出れば自分で買ってしまうので、SF関連で図書館のお世話になることは滅多にない。あふれるようにSFの新刊書が書店の店頭に並び、買い切れなくって図書館に頼るよーな幸せな状況は、果たして今世紀中に到来するのだろーか。


【7月20日】 「海の日」なので、カバーガールを「鉄腕バーディー」に変える。相変わらずおまけのペイントソフトとマウスでグリグリと描いているので、相変わらず似ていないし、色の塗り方もちょっとヘン。次は「天地無用」シリーズに戻るかもしれないし、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズに行くかもしれない。難しいのや特徴のないのは描けないが、難しすぎたり特徴がありすぎても描けないので、そのあたりの差配が難しい。何かこれはってゆー候補なないだろーか。

 早起きして見るのはオリンピックの開会式。仮面の人々が繰り出して五輪をグランドに描き出したのはいーが、子供たちで作った「100」の字の淵がギザギザになっている。いー加減なところはいかにもアメリカ的なんだけど、日本だったもっとピッチリしてただろーな、北朝鮮だったら違った意味で感動させるマス・ゲームを見せてくれただろーなと思う。

 黒白赤黄とりまぜたブラスバンドの演奏や、男女比でなんだか男子の方が多い気がしたチアリーダーの演技、ネイティブ・アメリカンの伝説を下敷きにした「サンダーバード」とやらの獅子舞なんかがダラダラと続くが、いかにもアメリカってオープニングで、だからどーしたって程度にしか驚けない。ロサンゼルスの時には宇宙飛行士に空を飛ばせたんだから、今度はスペースシャトルを着陸させるだとか、琥珀から抽出した遺伝子をもとに作った恐竜を歩かせるとか、とにかくもっともっと吃驚させる趣向が欲しかった。

 聖火ランナーのアンカーはモハメド・アリかあ。うーんなるほどねって感じにはなるけれど、おーっすっげーぜって感じにはならない。マイク・タイソンにやらせろよ。後ろにドン・キングを従えさせてさ。軍事衛星から火柱を放って付けるとかすれば、アメリカの軍事技術の優秀さが解るってものなのに。頭にカメラを取り付けたミサイルで、点火の瞬間を生中継するって手もあるね。ジョン・ウィリアムズの演奏だけは感動。これはスター・ウォーズ・ファンとしての依怙贔屓。

 白泉社の新刊「少年はその時群青の風を見たか?」を買う。酒井美詠子さんとゆー人の初めての単行本。「怪盗ルパンと名探偵ホームズは高校時代、大の親友だった!? 19世紀末ロンドンは今日も2人の話題でもちきり」とゆー裏表紙のアオリ文句に乗せられて読んでみた。絵はそこそこで、描きこめばどんどんうまくなる人と見た。ルパンとホームズが出ているけれど、金田一のはじめちゃんと明智警視が出てくる某コミックとか、たがみよしひさの「なあばすぶれいくだうん」のよーな謎解きの楽しみはなく、ルパンとホームズの2人を中心にした学園モノのノリでストーリーは進む。キャラクターの口の描き方に特徴があって面白い。2人の仇敵モリアーティーは美形の敵キャラとして人気出そう。

 単行本の「少年はその時群青の風を見たか?」は、白泉社史上3番目に長いタイトルとゆーことだが、さてこれより長い2つは何だったのだろーかと考える。僕にはちょっと思い浮かばない。あとがきによれば、作者の酒井さんは同志社大学の神学部に通っているとか。京都方面の人は要チェックだ。


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