縮刷版96年4月上旬号


【4月10日】 やっぱり買ってしまった少年マガジン。一歩はいきなりパンチをくらってよろけるし、コーターローは本筋からそれてどーでもいー古畑任三郎ごっこをしている。3本あるサッカー漫画の1本「シュート」も載っていない。読み切りとか短期集中連載が入って、レギュラーの連載漫画がときどき抜けるのが最近の少年マガジンの傾向だけど、それでも確実に売り上げ部数を伸ばしているのは、残りの連載陣がそれなりにしっかりと、お客さんをつかまえているからなのだろう。それにはやりの社会現象を取り入れるのがとてもうまい。著名人の列伝漫画をいいタイミングで掲載するし、先週からはサイコメトリー物の漫画も始まった。連載開始、10週打ち切りのパターンを実直に踏襲している今の少年ジャンプには、ちょっとできない芸当だ。少年ジャンプの新編集長マシリトが、どんな挽回策を打ち出すのかちょっと楽しみ。切られる漫画も出るだろーね。
 午後は仕事で扶桑社に行く。浜松町に移ってからこれで3回目の訪問。開発企画部で部長さんや大島一夫さんに最近の話を聞く。電子出版やマーチャンダイジングや新規商品の企画などを担当している開発企画部が入っている5階の大部屋は、ほかには「ESSE」や「CAZ」や「JUNNIE」なんかの編集部があって、女性の編集者がいつも大勢詰めている。若い女性がほとんどいない暗黒のオフィス環境からやってきた人間にとって、このフロアはさながら天国であり極楽であり桃源郷。ただただうらやましいばかりである。締め切り間際の修羅場を見ると、きっと印象も替わるのだろーけど。
 扶桑社では「SPA!」の別冊「就職SPA!」や、「JUNNIE」のロゴが入ったカサや、開発中の新商品のチラシなどをもらう。「就職SPA!」は名前のとおり就職関連情報ばかりを集めた雑誌で、就職のウワサやドリアン助川の詩やいしかわじゅんの漫画なんかが載っている。昨今のコンピューター・ブームを反映して、コンピューター関連業界の情報もたくさん入っていて、インタビューにもアスキーの西和彦社長や、フューチャーパイレーツの高城剛氏なんかが登場している。この人も出ていた。やっぱりなあ。雑誌の巻末には「OB訪問応募券」とゆーのが付いていて、これを切り取ってハガキに貼って扶桑社に送ると、宣伝部長以下宣伝部員の方々を訪問できるのだとか。訪問したからって就職できる可能性はひたすら薄いとは思うのだけれど、企画の爆裂具合は扶桑社らしくて面白い。僕も送ってみよーかな。仕事は5階専属のお茶くみ兼床掃除担当でいいです。

【4月9日】 緑色のリボンをホームページに飾るのが流行りになっているので、自分で描いて貼りつける。リボンといえばやっぱりこれかなあ。1年も日記を書き続けるのって大変ですよね。書き始めて初めて気がつきました。
 ここから本文。朝から会社で編集局の全体会議。先月就任した山下さんという新しい社長が挨拶をするとゆー催しで、朝に弱いはずの新聞記者が、この日ばかりはほとんど全員そろっていた。新社長は産経新聞の社会部長や夕刊フジの営業局長、フジサンケイグループの事務局長などを歴任した偉い人。社会部出身とゆーだけあって、押し出しが強くてコワモテで、なにより声がでかいでかい。マイクなしでしゃべっても、広い部屋の隅々まで声が通る。
 社長が話しているあいだ、社長の似顔絵をボールペンでこきゅこきゅと書く。似ないなーと思いながら影を付けたりシワを加えたり。顔を見ながら社長の顔を観察していていて、あの毛量の多さはなんだろうと気になった。確か先月の就任記念会見では、来年還暦だといっていたから、ほとんど自分の倍は生きているわけで、それでいて白髪はない、生え際はびっちり、つやもある。もしかして・・・といけない想像をしてしまったが、怖くて面と向かっては口にだせない。
 会社でカメラをいじりながらふと思いつく。「デジタルカメラで念写は可能なのだろーか」。早速試してみたいと思ったが、残念ながら会社にも自宅にもデジタルカメラはない。たしかマルハが新製品「カップdeライス」の発売を記念して、ホームページ上のクイズに答えると、カシオの「QV-10」が当たるキャンペーンを展開していたはずだが、自分で記事を書いておいて、キャンペーンをやっているホームページのアドレスを覚えていない。デジタルカメラで念写ができるのなら、フロッピーディスクでだって念写も可能だと思い、そこいら辺にあるFDを手にとって一生懸命念じてから、マックのドライブに差し込んでみたが、何も入っていなかった。やはりレンズがないとダメなのか。誰か試していないのだろーか。ユーザーの方、「QV-10念写館」のホームページを作りませんか。(日記のアップ後にマルハのアドレスをメールで知らせて戴いた方がいた。こちらです。ありがとう御座います)
 先月作るのに失敗した寿がきやの「味噌煮込みうどん」に再挑戦する。水を少な目にして煮る時間を短くして、味噌はあくまでも濃く、麺はあくまでも固く、味噌煮込みの本道に少しでも近づかんと細心の注意を払うが、肝心の卵が冷蔵庫になくて入れられず、おまけにかしわ(鳥肉のこと)も入れられず、あまつさえネギも入っていないという、味噌煮込みうどんを構成する要素の8割を欠いたものとなってしまった。情けない。でも注意をはらっただけあってまあまあのできあがり。来月は具を完璧に揃えた上で再再挑戦したい(って名古屋に帰ればたべられるだろーに)。

【4月8日】 吉村明美さんの「麒麟館グラフィティー」を夜どおし読みつぐ。13巻と番外編を買い込んで1気に読み通し、ベッドに横になってまた初めから読み返す。もう1度、気になった場面、印象的な場面を確認するようにパラパラと読み返して息を付く。そして考える。2時間かけて名古屋から豊橋の学校に通った4年間、どうして下宿しなかったのだろう。もちろん漫画の舞台になった「麒麟館」のように、助け合って和気あいあいと暮らせるとは限らないし、若い女性が管理人でいることなんて、億に1つだってありはしない。それでも通いの生活とは違った、自分にとって大切な思い出になる経験ができたのではないかと、ついつい考え込んでしまう。今となっては仕方がない。後悔できるのはオヤジの特権。思い出に浸りながら仕事に出かける支度をする。
 会社に行くと、アスキーから本が届いていた。1冊はダイヤモンド社から発売になった「会社の歩き方 アスキー」。まるまる1冊アスキーの紹介。平均年齢33歳ちょいで平均給与が40万円ちょいとあってこめかみに血管が浮く。130ページの「(年収が)30代後半で1000万円という例も」とゆー記述を読んで、頭の血管が少し切れる。初台に向かって呪いの念力を送る。もう1冊は「辛ミシュラン」。雑誌「アスキー」編集長の遠藤諭さんが企画した本。辛い食べ物総まくり本で、口の中が辛くなる。胃がしくしくと痛む。「マーフィーの法則」ほどのブームを起こして、アスキー再浮上の一翼を担うか(うんにゃ)。
 かめやっこさんがでていると聞いて、リクルートの雑誌「ダヴィンチ」を買う。ちょっと不本意。創刊号を買って、2度を買うものかと心に決めていたのだけれど、売れているのか中身が充実してしまっていて、ああ、ちゃんとした雑誌になったなあ、との感慨を抱く。「本の雑誌」を情報量で凌駕してしまった。来月は買わないぞ。多分買わない。でも・・・。かめやっこさんはホームページの荒い粒子の写真より綺麗。発言は極めて真っ当。ホームページの書評のようには凶悪ではなかった。取材でも申し込んでみようか。でも何の企画でとりあげよう。謝礼も払えないし・・・・。
 ほかに「週刊将棋」を買って羽生善治7冠王の記事を読む。投票で選んでいる「週刊将棋MVP」を、今年は対抗馬がいないということで無投票で獲得してしまった。結果は解っていても、投票はやって欲しかった。11日から名人戦が始まるから、マスコミの羽生フィーバーは再び燃え上がるだろう。それでも羽生は騒ぎに動ぜずに、名人位を防衛していまうのだろう。対戦成績は4勝1敗くらいかと、6枚落のコンピューターに勝てない棋力のくせに予想する。

【4月7日】 夢の中にナベツネさん(渡辺恒雄=読売新聞社長)が出てきて、僕に向かって「アメリカの記者クラブ制度がどーなってるか知ってるか」と聞いてきた。答えられずにむにょむにょしていると、ナベツネさんは好々爺の雰囲気で「アメリカには日本のような記者クラブ制度はないけれど、有力なマスコミだけを集めたインナーサークルとゆーのがあって・・・」と話しはじめた。それからどこかで行われた将棋の試合について、「桂がはねて云々」といった具合に解説をはじめた。サッカーで相手チームの1人とぶつかって、頭を打ったせいか、脳みそのシワに折り畳まれていたモロモロの事柄が、少しづつこぼれでている感じがする。脳が融けはじめているのかもしれない。
 「読売新聞」や「将棋」は、最近の日記に話題として何度かでてきた。記者クラブ制度についてはたぶん、金曜日に「ニュース23」で見た鎌倉市の記者クラブ問題のニュースが、夢のきっかけになっている。たしか記者クラブをやめてしまって、誰でも(といっても宗教団体の広報紙、政党機関紙、企業のPR紙はダメ)入れるセンターを作りましょう、といった内容だった。日本の記者クラブ制度は、それはもうガッチリと新聞社の仕事のなかに組み入れられてしまっていて、記者クラブがいきなりなくなると、明日からどこに出勤していいのか、どこで仕事をしていいのかが解らなくなる人が大勢でる。
 記者どうしの親睦団体としてはじまった記者クラブが大きく変質したのは、太平洋戦争期に国家の報道統制のシステムに組み入れられてからだと思う。むろん個々の報道機関なり記者は、政党なり行政機関と緊張関係を保ちながら報道を続けているから、戦争期のような言論統制の窓口に、記者クラブがなっているということはないと信じたい。しかし、会社に机をもたずに、官庁のなか、国会のなか、民間団体の建物のなかに部屋を取ってもらい、そこに机や椅子やワープロや電話を持ち込んで仕事をしている現状は、なれ合っているととられても仕方がない。そんなやましさがあるからこそ、報道機関自身が今回の鎌倉市の記者クラブ問題の成りゆきを、関心を持って報道しているのである。なんてマジメなことを言うと、脳がガサガサと崩れていく気がする。
 無性にプリンが食べたくなったので、船橋駅前のイトーヨーカ堂に行って「ハウスプリンエル」を買ってきて作る。牛乳だけで作るやつ。どんぶりにいっぱいのプリンを、お玉ですくって食べるんだよ。穴あきお玉だとトコロテンになっちゃうからダメだよ。

【4月6日】 ぽかぽか春の陽気に誘われて、やってきました代々木公園。原宿駅からてこてこと歩いていく途中には、女子高生の集団や着飾ったアベック、モデルとおぼしき金髪の女性たちなどと幾度もすれちがったのだけれど、こちとらでっかいダッフルバッグにサッカーボールやらスパイクやらを詰め込んで、集合時間に遅れないようにグラウンドへと向かわねばならない。今年も春は僕の傍らを通り過ぎていくのかと、天を見上げて嘆息する。
 いちおーマスコミだというのに、女性は4人しか応援に来てくれていない。それにみんなヒモ付きだから、生え際の後退した北澤モドキが立ち入るスキなど微塵もない。仕方がないので、もしゅもしゅと着替えてグラウンドに行き、同じように春に縁遠い男たちと、サッカーの試合を始めた。最初の相手は「産経社会部」。社会部チームのまとめ役で、19番を付けたおじさんが、今日も前線に張り付いて頑張っていたのだけれど、サイドアタックをかける人や中盤でパスを回す人が不足しているのか、いつものような迫力がない。こちらも守って守って、守り抜いてからカウンターアタックをかける、ちょいとばかり卑怯な試合をしてしまったが、ともかくも2対0で勝利をおさめることができた。いちおう1アシスト。産経社会部は「謎のミュージシャンチーム」にも完封されたから、きっと試合の後で、泣き出す人も出るという、恐怖の大反省会を開いただろう。怖いんだぞ、産経社会部は。
 その「謎のミュージシャンチーム」。見るとロンゲーはいるし茶髪はいるしと、確かに「ミュージシャン」っぽい人たちなんだけど、試合が始まると走る走る。ミュージシャンにあるまじきタフなアタックを仕掛けてくるから、ディフェンス陣は大変だった。かろうじて守りきって引き分け。しかしミュージシャンはあなどれない。伊達にでかい声は出してないし、伊達に太鼓はたたいていない。
 杉浦日向子全集の「百物語(上)」(新潮社)と二階堂黎人の「人狼城の恐怖 第1部ドイツ編」(講談社)をだらだらと読み継ぐ。「人狼城」はいきなり外国の伝説の記述で始まっていて、こりゃ島田荘司のシリーズかいなと一瞬だけ思ったが、伝説はすぐに終わって、ちゃんとストーリーが始まったから、とりあえず安心した。しかし第2部、第3部があると解っていると、読み終わってからフラストレーションが溜まる。京極夏彦を上回る超分厚いノベルズを出されても困るが、できれば間をおかずに、続きを出して欲しい。

【4月5日】 思い立って、今は無き幻の雑誌「月刊KITAN」(読売新聞社)がいかなる雑誌だったのかを、未来永劫ビットの海に記録しておくために、主だった特集の目次を並べたページを作る。名付けて「KITAN'S BOX」。こうして並べてみると、確かに雑誌の中身が右往左往している様が見て取れる。聞いたところによると、雑誌が始まってからも営業サイドの絡みとかがあって、こんな特集のラインアップになったのだとか。しかし何よりも、雑誌を最初に立ち上げる段階のコンセプトや読者対象を、どれくらい絞り込んでいたのか怪しく思えてくる。
 目次を写していて思ったのは、薄っぺらい小さな雑誌でも、これだけの中身が詰まっているのかってこと。たった100行の記事を書くのに、何時間もかける時がある僕なんかからすれば、企画を立て、アポを取り、取材に行き、写真を撮り、記事を書いて、雑誌の形に組み上げていく編集の仕事って、とても大変なことのように思えて来た。でも、売れなきゃゴミってことには代わりはない。これは新聞もいっしょだけどね。「KITAN'S BOX」は最新号の分がまだ入っていなくて未完成。投書が載ったのに見本誌を送ってこないところを見ると、すでに編集部は消滅したのかもしれない。
 フジサンケイの人間なのに、読売新聞絡みの話が多いのは、僕のメジャー・コンプレックス故か。今日の読売新聞朝刊(夕刊だったっけ?ちょっとうろ覚え)から、パソコンに関係する記事だけを集めたページが出来ていた。水曜日付けでは「マルチメディア」というページを掲載しているから、読売新聞がなんとなく、こうした分野に力を入れ始めていることが見てとれる。少し前までは、"表"日本工業新聞とか日本経済新聞くらいしか手掛けていなかったコンピューター関連のイベントを、去年あたりから朝日新聞も手掛けるようになって来た。もしかすると読売新聞も、この辺りでパソコンかマルチメディアのイベントでも、立ち上げるつもりなのだろーか。ちょっと気になる。
 夜も遅い。明日は午後1時から代々木公園のグラウンドでサッカーがあるから、もう寝ます。近くに住んでいる人は応援に来ましょう。生え際の後退した北澤、もしくはてっぺんがまだあるアルシンドみたいな選手が僕です。明日の相手は「産経社会部」と「謎のミュージシャンチーム」。前者は因縁の相手だが、後者はこれが初顔合わせ。一体どんな集団なのか。ゴールを決めたらギターでも弾くのか。競り合いの際にピックで目潰しに来るのか。全員髪が立っているのか。世を忍ばない本当の姿をしているのか。ユニフォームにチェーンとかが付いているのだけは、勘弁して欲しい。

【4月4日】 キノトロープとゆー会社に取材に行く。ウェブ方面では知らない人はいないくらい有名な会社。日記界の女王様(パッパラー河合ぢゃないぞ)が鎮座まします、代々木上原のバッキンガム宮殿は、駅徒歩2分の交通至便なマンションの3階にあった。2人も載れば満員になってしまうエレベーターは、昇降のためのボタンが、ドアから中を見て右手横の壁に付いているとゆー珍品。オフィス内にはワークステーションとパソコンが所狭しと並べられ、大勢の人達が「忙しそうに」キーボードを叩いていた。ローラースケートは履いていない。
 何しに行ったのか。もちろん取材に決まっている。遊びにじゃないぞ。女王様への謁見でもないぞ。しかし、ぐるりと中を見回して、ここが女王様のおわす玉座の間かと思うと、体はブルブル、足はガタガタ、口もモゴモゴとなってしまって、言葉がスムーズに出てこない。ふと本棚に目をやると、おお、あれは「加藤直之画集」ではないか。今でこそ「グイン・サーガ」といえば天野喜孝さんのイラストを思い出す人が多いけど、最初の20巻は加藤直之さんが描いていたんだよ。個人的には、アルド・ナリスは天野さん、グインは加藤さんの方が好き。スカールも。リンダとレムスはどっちでもいい。ああ、緊張のあまり関係ない話をしている。
 どこかにおわす女王様のご不興を買いはしまいかと、椅子から尻が浮き上がるくらいブルブルと震えていた1時間ちょっと。ノートの字は死にかけたミミズのようでまるで読めず、果たしてちゃんと記事がかけるのか心配だ。早ければ来週中には、取材の成果をお見せできる予定。でも肝心の新聞は、デパートでは売っていないので、確実に読みたいという人は、日比谷図書館にでも行って下さい。女王様は出ていませんが、王様と御狐様、御狸様が登場します。(ここまで多数誇張あり)
 朝日新聞の月曜日付けから、コミックに関する連載がなくなったと思ったら、木曜日付けの今日、学芸面と称して、少年ジャンプの凋落と少年マガジンの興隆を比較した大きな記事が載っていた。でも、中身はどこかで見たり聞いたりしたような話ばかり。ジャンプの推定部数が600万をちょい割り込んだだけになっていたが、火曜日や水曜日に、キオスクの脇に積み上げられている返本の山を見るにつけ、現実はもっと落ち込んでいるような気がしてくる。マガジンは快調。一歩ははたして勝てるのか。以下次号、乞うご期待の展開に、来週の水曜日もまた、小銭入れから210円が、キオスクのお姉さん(byキムタク)に差し出される。

【4月3日】 読売新聞社から刊行されていた雑誌「月刊KITAN」は、やっぱり今日発売の5月号で廃刊になった。今月号の特集は「競馬」。先月号以下「資格」「パソコン」「カラダ」「女子アナ」「年下男年上女」「外メシ」「プロデューサー」といった具合に、まったく脈絡の感じられない、誰をターゲットにしているのか解らない誌面づくりをしていては、売れないものやむなしといったところだろう。この雑誌、ニフティサーブとYOMINETに専用のコーナーを設けて、書き込みを募集していたんだけど、雑誌が売れていなせいなのか、極端に書き込みが少なく、何か書くと必ず誌面に載ってしまうという状況が続いていた。僕なんか8号中4号も投稿が載っている。最近の3号は立て続けで、まるで投稿の連載をしていたみたい。景品は掲載号だけだから、あんまり得をしたって気はしないけど、加門七海さんとか、藤村かおりさんとか、好きな連載もあっただけに、ちょっと寂しい。
 投稿に関しては、これまで「小説新潮」と「デジャ=ヴュ」に、読者からのお便りとして投稿が載ったことがある。「小説新潮」なんて普段は60歳とか70歳とかのご高齢の人しか投稿しないみたいだから、20代、30代の人の投稿は、結構高い確率で取り上げてもらえる。で、景品が「図書券2000円分」。この程度の金額じゃあ、ハードカバー1冊で吹っ飛んじゃうから、ありがたみはあまりない。「デジャ=ヴュ」は荒木経惟さんのポストカードセットをくれた。でも2回目から何も送ってこなくなった。まもなく潰れた。でも最近、新聞風の体裁で復活した時に、最新号を送って来たから許す。
 ニフティのフォーラムなんかで、プロの作家の人が大推薦していた森博嗣さんのデビュー作「すべてがFになる」(講談社ノベルズ、880円)を買う。第1章を読んだだけだから、確信は持てないが、面白そうな予感はしている。何てったって、愛知県が舞台になっているのが嬉しい。これだけで20点、ゲタを履かせちゃう。作者は愛知県出身で、今は国立大学の工学部助教授らしい。仮に作中に出てくるN大学だとすると、愛知県にある国立大学でNが頭文字なのは、名古屋大学名古屋工業大学の2つだけ。職員録なんかで生年から調べれば、誰なのかは解ってしまいそうなものだが、そこはそれ、ミステリーを書くような人だから、ホントは全然別の学校の人なのかもしれない。ともかくも、面白ければ誉める。つまらなくても誉める。ナゴヤリズム(ナゴヤ+ナショナリズム)の呪縛は強力なのだ。

【4月2日】 参りました、脱帽です。英国の高級紙「がーディアン」が掲載した「エリザベス女王、ホームページを開設してダイアナ妃と対決!」のニュースは、実はエイプリルフールの冗談だったのだ。それを日本の共同通信が、マジに取って配信してしまったから大変なことになった。昨日付けの夕刊で、何紙かがこのニュースを外電として掲載していた。
 「英王室」と「インターネット」という、今まさに旬の話題の組み合わせだったことが、記者を惑わせたのだろうけれど、いくら何でも、ホームページで勲章の授与はないよねえ。とはいっても、日本の新聞に掲載されたこの記事を見たとき、僕自身も「いよいよやるのか」と騙された口だから、大きなことはいえない。ラヂオプレスでも「橋本首相、ロシア訪問にSMAPを帯同」と流して、官邸詰めの政治記者たちを走らせたそうだから大成功。僕もいつかは全世界規模で歴史に残る騙しを仕掛けてみたい。でも日本の新聞じゃあムリかなあ。
 確かにインターネットは旬のようで、ここのところ書く記事の半分以上が、インターネット絡みのものになって来た。昨日は電通がインターネットで開催している展示会の記事、今日は1日から本格運用が始まった小学館のホームページの記事。どちらも超の付く人気企業で、マスメディアの最先端に位置していると目されている会社だけど、ホームページの作り方にはちょっと不満が残った。電通の方は、未だ「ニューメディア」って言葉を使っているのは別にして、掲載している内容が、ニューメディアやマルチメディアに関する単行本に載っている文章、図版、表とさしてかわりがなく、これだったら1回見たらもう来ないという人が多そうだ。
 小学館の方は、単行本やマンガや雑誌のデータベースが作り込まれていて、簡単な操作で探せるところが最高。ヘッドページも見やすい作りになっているし、テレホンカードが当たるアンケートもやっている。それで何が不満かっていうと、新入社員の応募要項の請求を、ホームページ上から電子メールでできるようにしたこと。僕が小学館を受験した当時は、本社とか大阪支社とかに取りに行かなくてはならなかった。ようするに無駄な交通費を使わされた恨みと、入社試験で落とされた逆恨みって訳で、ホームページ自体に含むところは何もない。

【4月1日】 大号外はお楽しみ戴けましたでしょうか。我が国(新聞的表現だね、これは)にハイパーダイアリー界が本格的に立ち上がって、初めて迎えるエイプリル・フール、どうせなら盛大に騒ごうと、天気の素晴らしくよかった日曜日に、アパートにこもってバキボキベキとキーボードを叩いたかいあって、たくさんの方に見て戴けた様子。もっとも騒いでいたのは自分くらいで、会社に行って新聞を読んでも、テレビでニュースを見ても、欧米がエイプリル・フールでどんな馬鹿騒ぎをしているのかは、全然報道されなかった。時差の関係もあるから、明日の朝刊あたりでフォローしてくれるかもしれない。インターネットにある膨大なホームページのなかにも、同じような事を考える人や会社がいるだろう。流石にこちらはサーチしきれないので、インターネットマガジンほか大勢のインターネット雑誌にフォローを期待する。
 あっ、せっかく大号外を見にきてやったのに、ないじゃないかと怒らないで下さい。しばらくここに置いておきます。来年はみんなで盛大に遊びましょう。それまでハイパーダイアリーに燃え尽きないでね。それだけが心配。
 産経新聞の名物コラムだった「斜断機」が今日から復活。背中から切りつけて振り向いたところをガトリング銃で蜂の巣にするような辛口のコラムを、またまた期待しています、といいたいところだけど、いろいろあっていったん中断した後の再開だけに、身に火の粉が降り懸かるような話題を取り上げることができるのか、ちょっと心配している。なにせ初日の話題が、政治家のテロへの恐怖と官僚の天皇への畏懼(いく)がない今の世を憂慮する内容。産経らしいといえばそれまでだけど、個人的には「斜断機」の文壇内ゲバ大罵倒合戦的内容が好きだったので、こうした話題が取り上げられる日が来ることを、担当しているサンケイビル4階の文化部を足下に願っている。
 嬉しい話題をもう1つ。20号を最後に休刊していた雑誌「デジャ=ヴュ」が、装いもあらたに「デジャ=ヴュ・ビス」として蘇った。ちょっと小さめの新聞といった体裁で、ページ数も16ページと少なく、写真集にも匹敵するクオリティーの高い作品を、数多く紹介してくれた雑誌時代の面影はない。それでも荒木経惟さんの新作写真や、吉増剛造さんと今福龍太さんの「ブラジルへの郷愁」(レヴィ・ストロース著)をめぐる対談、森村泰昌さんの展覧会の話題などが載っていて、少ないなりに濃い内容となっている。隔月で1部500円を高いと見るか安いと見るかは、読む人それぞれの判断によるところだろうけれど、写真評論という分野を専門に扱う雑誌が少ない今、この「デジャ=ヴュ・ビス」が発行され続ける意味はとても大きいと感じており、ないお金をはたき、テレホンカードを金券屋に叩き売ってでも、取り続けたいと思っている。まさか半年で休刊はすめえなあ。


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