縮刷版96年12月下旬号


【12月31日】 早起きできないと思い、予約録画しておいた「機動戦艦ナデシコ」を午前中に見る。朝7時半から放送なんて、フェイントかけられた人も結構いるだろーね。まあ今日は「年末恒例総集編」ってなもので、これまでの経緯らしきものを説明する回と銘打ったストーリーだったけど、劇中劇ともいえる「ゲキ・ガンガー」と本編「ナデシコ」の相互乗り入れが進んでいるよーで、このままだんだんと融合していって、ふと気が付くとさらに上から見おろして非難やら賞賛やを送っている「アニメをたく」の姿がテレビに登場するなんて、そこまでメタった展開にするとは思えないけど、なんだかありそーだけに恐い。あと3カ月、いったいどーなることやら。

 ようやく立って歩いて出かけられるだけの体力が回復したけど、2時間電車に乗って名古屋まで帰るのもしんどいし、無理に帰って向こうで寝込んだら明けの仕事に差し支えるので、今年は帰省するのを止めにして、ひとりぼっちで大晦日をアパートで過ごすことに決める。こっちに出てきて7年になるけど、年を越すのは初めてのこと。なんだかはっぴいえんどの「春よ来い」の歌詞が思い忍ばれる。ちょっと古いか。

 3日3晩、7転8倒した名残で部屋が着替えでめちゃくちゃ。流しは食べ残しが山。本は津波とななって床を覆い、その下には抜けた毛とホコリが厚く積もって層をなしている。これを何とかしないと年は越せないと、病み上がりの体に鞭打って、久方ぶりの大掃除を慣行すべく、最近よく行くイトーヨーカ堂でおそうじ関連グッズ一式を買い込み、午後から順次とりかかる。

 まずは台所から。レンジの油汚れをこそぎ落とし、ステンレスのシンクを磨き上げ、蛇口にとりつけてある浄水器のカートリッジを取り替える。本当なら半年で交換しなければいけないものを、金がないとかめんどくさいとかまだいーやとかいいながら、実に6年も使っていた。最近は目詰まりが酷く水の出が悪くなっていて、中にどんなものが詰まっているのか開けるのが恐かったけど、意を決して中をのぞくと、ドンヨリとしたシーモンキーのよーなものが、中空糸の束の周りに浮かんでいた。こんなん飲んでちゃー体も悪くなるぜと改めて思う。カートリッジの交換は重要です。次は1年後か。

 次は風呂場の掃除。カビカビカビの山をカビキラーでこそぎ落とし、浴槽の黒ずみを磨き粉で削りおとしてほぼ完了。さて部屋の方だ。こちらは衣服をハンガーに掛け直して本を積み直し、ほうきをかければだいだい終わる。折角買ったので「クイックルワイパー」も仕様。水っぽくないのに毛がひっつくのは見ていて快感。でもこんなの汚れていたのとしってちょっとばかり悪寒。これからは忠実に掃除しよー。1週間に1ぺんは。

 年始に読むための本を物色。まとめ買いのチャンスだと、椎名誠さんの「みるなの木」(新潮社)、ダン・シモンズの「うつろな男」(扶桑社)、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作、城戸光子さんの「青猫屋」(新潮社)をハードカバーで購入し、これから4日続く休みの間に読み切ろーと心に決める。といっても読み残しは依然として山のごとして、中途半端に100ページだけかじった本も何冊かあるから、そっちをまず何とかするのが筋って内なる声もある。時間だけなら全部を読むだけはあるけれど、でもせっかく「びでおていぷれこーだー」を買ったことだし、やっぱアニメも見たいよなー。さーレンタルビデオ屋に出撃だーっ。

 ってなもんで96年は終わります。どうもありがとうございました。幸か不幸か1月1日から営業してますので、来年もまたよろしくおねがいします。


【12月30日】 生きて朝を迎えるも、風邪快方の兆しなし。それでも意識の混濁はなくなり、ようやくまともに思考ができる状態となる。確実に40度はあったと思われるけど恐くて計れなかった熱によって、この2日間、まるで1冊の本も読めなかったからなー。

 夕べは、何を置いても熱を下げねばと思い、熱い蜂蜜レモンを飲みトレーナーを2枚重ねで着込み、3枚重ねの布団に潜り込んで汗を出す。1時間ほどでじとじとと汗がしみ出てシャツがべっとり。そそくさと乾いたシャツに着替えてまた布団に潜り込むことを4度、5度と繰り返すうちに、なんとか熱も下がったみたいで、今朝方、風邪だと解って以来初めて体温を図ってみたら、37度5分まで下がっていた。

 この期を逃すと、風邪がぶり返した時に食べる物がなく飢え死にしてしまうと思い、着替えて近所に買い出しに行く。とりあえず本でも買おうと東武百貨店の旭屋をのぞき、「出版史上初」とゆー試みが行われた本を見つけて、その試みのすごさにおもわず吹き出しそーになる。引間徹さんの「塔の条件」(角川書店、1600円)とゆーその本に行われた「出版史上初の試み」とは? それはなんと「発行全部数に著者の直筆サインを入れて通し番号まで振ってしまう」とゆーことなのだー(をを!!)。

 積んであった本を開けると、確かに直筆サインが入っていて、横にナンバリングで振ったと思われるナンバーが押してあった。平台から3冊ばかり持ち上げてバラバラとめくってみると、確かに全部、違う番号が振ってあった。番号は6030番前後だったから、少なくとも6000冊は刷ったってことになるかな。これだと刷り部数を過少申告して印税ごまかすって訳にはいかないね。しかし、ナンバリングをガチャガチャと押していく作業は編集の人がやったとしても、1冊1冊積み上げられた本にサインしていく、それもサイン会のよーな華やかな会場じゃなくって、製本所か出版社の倉庫みたく薄暗い地味な部屋の中でってな光景を想像すると、そこまでして話題を取りたいかって、ちょっぴり寂しい思いにとらわれる。いや、企画した出版社の志に対してってことだけど。

 まーどーせなら他の出版社も、作者のサインなんてケチくさいことにとどめずに、例えば1冊1冊に作者直筆の「肩たたき券」とか「お風呂掃除券」とか「布団叩き券」とかを添付するとか、袋とじの部分を作って中に「スカ」から1等「印税の10%お受け取り権」までのバラエティーに富んだ景品を入れるとかすれば、もっと本が売れていーかも。あるいは1万部刷った中に1冊だけ、オール作者の手書きって本を混ぜといて当たった人はラッキーってなことにするとか。その場合は表紙の絵ももちろん直筆で、イラストも直筆ってことなるけどね。なんか昔の肉筆回覧誌っぽいね。

 病み上がりなので難しい本は読めないと思って、漫画とヤング・アダルトを何冊か買い込んで再びの病床に備えることにする。しかしよりによってしりあがり寿さんの「瀕死のエッセイスト」(角川書店、1500円)なんか買わなくってもいーのにねー。読んでるとホント、自分が死んでるみたいな気持ちになってくる。漫画はあと水樹和佳さんの復刻なった「樹魔・伝説」(集英社、1000円)。かつて「ぶーけコミックス」として刊行されて星雲賞まで受賞したSFコミックの秀作。わずか15年ほど前のことなのに、もはや古典となっているところに漫画出版の移り変わりの激しさを覚える。

 ヤング・アダルトではお馴染み「天地無用!」シリーズの最新刊「天地無用!魎皇鬼 よいこの生活編」(長谷川菜穂子、富士見ファンタジア文庫、500円)と、樹川さとみさんの「緋面都市」(角川スニーカー文庫、600円)を購入。言わずと知れた人気OVAの「天地無用!」シリーズはともかく、「緋面都市」は見も聞きもしたことのない作家さんの作品だけど、なんとなくタイトルに惹かれた。あと田村由美さんのイラストにも。気分が良ければ2−3日中に読み終えられるかもしれないけど、何となくまた熱がぶり返しそーだし、そーなると年が開けても読み終えていられるかどーか。とりあえず2−3時間寝てから考えよー。


【12月29日】 風邪一段と悪化。コミケに行くなどもってのほかの状態で、一人寂しく家で養生する。熱があり頭が痛く胸も痛い。幸いにして腹痛はないのだが、悪寒が酷くて立って歩くのもままならない状況なので、午前中はベッドで横になり、寝入ったり覚醒したりの状態を繰り返す。

 午後になっても一向に快方の兆しはみえなかったが、このままでは飢え死にしてしまうので、近所のイトーヨーカ堂に行ってスープと蜂蜜とポッカレモンとポカリスエットとカロリーメイトを買い込んで、栄養不足にだけはならないように気を付ける。家に帰ってスープを飲んで蜂蜜レモンを 飲んでカロリーメイトを飲んで夕食終わり。このまま寝るが果たして明日は生きて朝を迎えらのだろーか。


【12月28日】 コミケでも行こうかと朝起きると体が動かない。昨晩あたりから兆候はあったのだが、どうやら風邪が本格化してしまったようで、頭がガンガンとして目眩がする。熱もあるよーで、暖房がばりばりに効いてる部屋なのに、ゾゾッと寒気がして仕方がない。外はポカポカといい天気で、とても12月の最後の週がとは思えないほどの陽気なのに、駅前の薬局へ薬を買いに行くのが精いっぱいという体たらくでは、あの行列に並んでビッグサイトに入るまでの5時間(それとも8時間?)を待つことはできないと、コミケをあきらめて家で静養することに決める。

 そもそも1度も出向いたことのないコミケに、たとえ一時の気の迷いであっても、行ってみようかなどと考えたのがそもそもの間違いで、30を過ぎてこれからの人生を真剣に考えなくてはいけない年頃になってなお、ヲタクへの道をまっしぐらに突き進もうとしていることに、神様が天罰を与えたに違いない。12月に入って、頑なに購入を拒んで来た「びでおていぷれこーだー」を買い、プレイステーションを欲しいなーと思っていたことだけでも、罪万死に値することなのに、あまつさえコミケなどに足を踏み入れては、更正することなどはおろか、周囲を巻き込んでのヲタク病パニックを引き起こす可能性すらあると、神様の裁きが下ったのだろう。

 ここは神様にヲタクではないことを証明すべき時であると、家にこもってひたすら真っ当になろうと務める。テレビだってほら、頑張る婦警さんたちた登場する番組とか、小さな船しかないのにツアーを成功させようと一生懸命になるクルーの番組しか見ないもんね。しかし頑張る婦警さんたちが登場する番組、入浴シーンはたっぷりなのにシナリオがベタベタで、原作の2話だか3話分だかをつぎはぎして作った割には、詰め込み過ぎどころか話に抑揚がなくって全然面白くない。絵柄も満足できる水準じゃあないし、いい加減にしないとファンがそっぽを向くぞTBS、おまーらにはアニメは作れねーとキレそーになる。

 それに比べて、小さな船でツアーを組んで頑張るクルーの話の方は、某国営放送が製作してるだけあってエッチ度に欠けるところはあるけれど、そこはヒロインの桂さん18歳のパワーあふれる肉体美がカバーしてくれていて、番組名そのままに「YAT安心」して楽しめる作品に仕上がっている。ヒロインが良いと番組ってやっぱしまるもんだねー。声をあててる椎名へきるさんもグッドだし。とまあ大変に真面目な番組を見ながら自分の将来設計と新年からの仕事の進め方なんかについて考えてると、熱もひいてきてようやく真っ当な思考が可能になってきた。さあ明日こそはコミケに行くぞ。

 ジュディス・ホークスの「氷の囁き」(延原泰子訳、ハヤカワ文庫NV、820円)を途中まで読む。ニューヨークでばりばり働いていたファッション・フォトグラファーが旦那さんとの生活につかれて子供を連れてテネシー州の田舎に帰り、そこで不思議な出来事い会うとゆー話。ほっとさせる描写のすぐ後に、ギョッとさせる描写を重ね合わせてインパクトの度合いを上げる腕前はなかなかのもの。もっとも、盛り上げるだけ盛り上げておいて、最後が尻すぼみってこともよくあるから、今のことろは評価は棚上げにしとく。


【12月27日】 パイオニアLDCからリリースが届く。プレステ用ゲーム「ノエル」の主役キャラ、清水代歩ちゃんがパソコンの使い勝手を格段に良くしてくれるってソフト「タスクランチャー」の出荷が、11月の発売から2万本を超えたって内容で、全国各地のパソコン上に代歩ちゃんが登場して、アプリケーションのアイコンを手で触ったり足でけっ飛ばしたりして起動しているんだと考えると、なんだかちょっぴり悔しい思いにとらわれる。残念なことにこの「タスクランチャー」、マック版は「システム7・5」以上じゃないと稼働しない。パイオニアLDCのホームページからデモバージョンをダウンロードでして試してみたところ、「システムが違ってます」ってな警告がでちまった。ちぇっ。

 バーチャルアイドルでは代歩ちゃんのはるか上をいく人気者、「ときめきメモリアル」の藤崎詩織ちゃんが登場するエッチなパロディー本を出していた出版社がコナミと示談したとの報。その本自体を見たことがないので、どんな内容でどこまで「ときメモ」のキャラクターを使っていたのかは知らないけれど、巷にあふれるパロディー本にとっては、決して無縁で済まされる話ではないだろー。おそらくは出版社などは、こーいったパロディー本に対しては、ファンが人気を盛り上げてくれてるって側面を勘案して、「黙認」あるいは「無視」とゆースタンスを取っていたのだろーけれど、まともに闘えばパロってる側が不利なことは、至極当たり前の話といえるだろー。

 なんでも明日から冬のコミケが始まるそーだけど、会場に行けば過激が過激じゃないかは別として、アニメやコミックやゲームや小説のパロディー本が所狭しとならんでる。著作権者への断りなしには出せないってことになって、違反したとこは全部、さっきの出版社みたく金を払えだの日経新聞に謝罪広告を出せだのって条件を呑まされるよーになれば、どこもパロディー本なんか出さなくなるね。あるいはコミケのよーな大っぴらな場所では売られなくなる。もっとも、パロディー本に関する問題は、10年以上も昔から指摘されていたことだから、そんなに急に締め付けが厳しくなるってことはないだろーけど。

 今年の仕事は今日で終わり。年末年始は新聞を出さないので、次に出勤するのは来年1月5日の日曜日からってことになる。いつもよりちょっぴり長めの冬休みがとれることになるけれど、行くところもないので、こっちの家か実家で本でも読んでヒマを潰そう。今まで1度も行ったことないコミケだけど、せっかく東京地区にいることだし、気力があったら立ち寄ってみよーかな。冬だから柔肌露出系のコスプレは少ないのかなー。そうそう、今回は「星界の紋章本」が結構な数出ていそーだから探してみるってのもいーな。あと今年の冬は、会社から支給された「98ノート」を実家に持って帰れば、いろいろと触って遊べるなー。でも使い方が今いち解らないから、HTMLを書いて転送したりなんって離れ業は出来そーにもなく、こっちにいない間はこのページも更新が滞るってことになるのですいません。


【12月26日】 恒例の「1996年傑作ミステリー・ベスト10」が掲載されている「週刊文春」を買う。べらべらめくっていると小田島久恵さんとゆー人の新連載「独占 街のウワサ」が始まっていて、イラストを何と水玉蛍之丞さんが手がけていた。超マイナー雑誌「SFマガジン」誌上で「SFまで1000光年」とゆーコラムが始まってから、もうかれこれ4年とちょっとが経ったろーか。その前からもパソコン雑誌なんかで活躍していた人だけど、最近は日本どころか世界でも最大規模の発行部数を誇る「読売新聞」なんかにイラストを寄せるなど、超メジャーな舞台での活躍が目に止まるよーになっていた。

 新聞の超メジャーの次は、雑誌の超メジャーにも進出ってことで、まことに目出たいとゆーよりほかにない。でも正直「SFマガジン」なんかのイラストの方が、水玉さんらしー気がするなー。あと「インターネット・アスキー」のコラムの方も。今週号に限って言えば、「文春」のイラストって、あんまし水玉さんっぽく(画調じゃなくて内容がって意味)ないもんなー。でもまあいつか、そのうちきっと、ヲタクのそこぢからを発揮し始めるんじゃないかって、期待してみたりもしてるんだけど。

 水玉さんじゃーないけれど、マイナー・シーンでカルト的な人気があった人・物がメジャー化していく過程で、マイナー時代からのファンが嬉しい気持ち、誇らしい気持ちを抱く半面で、大切なものが奪われてしまうよーな、一抹の寂しさを覚えるのはよくあることで、例えば来年3月に映画が封切りされる「新世紀エヴァンゲリオン」なんかの場合でも、「SFマガジン」のコラムで久保美鈴さんが書いている、「このままでいくと、すりきれるまで続編が作られることになってしまうのかもしれない」といったよーな不安を、放映時からリアルタイムで見ていたファンは、きっと抱いていることだろー。

 11月に新宿で開かれたCD−ROM関係のイベントに、たまたま来場していた角川歴彦・角川書店社長をつかまえて、あんまり派手に騒ぎすぎたり、作品世界を壊すよーなマーチャンダイズなんかをすると、かえってファンがそっぽを向いてしまうかもしれませんよ、なんてことを立場を省みずご注進申し上げたけど、マイナー新聞社の不良記者の戯れ言だけに、きっと覚えていないだろー。でもまあ、角川書店にしてもキングレコードにしても、それなりにヲタクなファンを大事にして来た会社だから、続編とか枝編とかを製作しまくって、ついでに「SDエヴァンゲリオン」なんて作ったりなんて無茶はしないだろー。と思う。けど。でも。うーん。

 話もどって「週刊文春」の「96年傑作ミステリー・ベスト10」。国内作品に関しては、1位は「不夜城」で、宝島社の「このミステリーがすごい!」といしょだったけど、2位に「左手に告げるなかれ」なんかが入っていたりして、ベスト10のうち5本が「このミス」と違ってた。海外作品に関しては1位は「死の蔵書」でやっぱり「このミス」とおんなじで、ベスト10でも7作品が「このミス」と重複してた。

 しかし海外作品のベスト10作品を、「このミス」にしても「傑作ミステリー」にしても、1冊も読んでいないとゆーのは、自分がいかにミステリー・ファンではないかを示しているよーで恥ずかしい。ちなみに「SFマガジン」2月号の「ベストSF1996」の方は、国内・海外とも10作品中で7作品を読んでいるからそこそこのヒット率。結局は「SF者の魂、30越えても」ってことになるらしー。


【12月25日】 「SFマガジン」2月号は日本SF特集。早川書房SFチームの期待を一身に背負った超新星、森岡浩之さんのアーヴシリーズ外伝読切短編が載っていた。主人公は「蹂躙」だい好き美人のスポールさんで、文庫でも表紙1枚しかない赤井孝美さんのイラストが、なんと2枚も掲載されていた。おまけに赤井さんのミニ・インタビュー付きスポールさん他のラフ・スケッチもフィーチャー。おっとイラストの衝撃に忘れるところだった、大森望さんによる森岡浩之インタビューも載っているから、普段はSFマガジンなんて絶対に買わないヤング・アダルト派の少年少女よ、完売したとかしなかったとかゆー「新世紀エヴァンゲリオン特集」掲載号に続いて是非買おう。でも2月号だからちょっと(どえりゃー)高い。

 巻末には2月号恒例になったプロに聞く96年ベストSFも掲載されている。やっぱり森岡浩之さんの人気は高く、久美沙織さんなんか日本SFとして挙げた3点が「星界の紋章1」「星界の紋章2」「星界の紋章3」というベタベタな展開。コメントがまた振るっていて、仮に(可能性はあるかも)「星界の紋章」がOVA化されるとしたら、スポールの声は是非とも私にやらせなさい、ってなことを書いている。だったらじゃないが、侵攻艦隊総司令長官でアーヴ帝国皇太子のドゥサーニュは、是非とも私にやらせなさい。自慢だが私は声質だけはいいのだ。顔はともかく。2枚目美青年声も2・5枚目美中年声も出来るぞ。熱血系はちょっと苦手だが。しかし久美さんがスポールなら、スポール配下の参謀長クファディス役でイジメられてみるとゆーのもいいかも。

 会社で使ってる「98ノート」を電話と共用できるよーにする2股モジュラージャックとケーブルを買いに秋葉原へ。冬休みに入っているからなのか平日だとゆーのに異常に人が多い。サラリーマンの結構いるよーだったけど、やっぱり学生が中心で、通り沿いの歩道を歩くのにも、日曜日なみの苦労が必要だった。ボーナスが出てしばらくして給料が出てってところで、秋葉原のお店も今がかき入れ時なのだろー。必要な物を石丸電気で買ってから、ヤマギワのソフト館あたりに行って、ソフト関係を見て回ってうろうろする。

 松本弦人さんの「ジャングルパーク」が特性バンダナ付きのバージョンになって並んでいたり、リセアンの「全国制服美少女グランプリ」シリーズのフィギュア付きバージョンが積んであったり。フィギュアはソフビだけどなかなかの出来(パンツ履いてるって見たのか? 見たのだひっくり返して)で、2種類とも買って家に飾っておきたくなった。某夕刊フジに書いていた秘密の連載がなくなってしまったのが残念。あれがあったら正々堂々「仕事です」ってな顔でソフトをレジに持っていけたのにい。

 ソフトと言えば、会社に戻るとゲーム担当者あてにコナミからリリースが届いていて、のぞくと「ときめきメモリアル」の新シリーズを制作するとゆー内容だった。清水代歩もダテキョーも、未だも及ぬ人気バーチャル・アイドル「藤崎詩織」は今回主人公じゃないみたい。恋愛シミュレーションでもなくって、制作する3部作のそれぞれ、新しいキャラクターが登場しての、アドベンチャーゲームになるらしー。恋愛シミュレーションとゆー分野を根付かせたとゆー意味で、「ときメモ」の果たした役割は確かに大きいかもしれないけれど、絵的にあんまり好きくないので、シリーズ化されたってもあんまり嬉しくない。でも売れるんだろーね、確実に。


【12月24日】 蔵前にあるビームエンタテインメントに行く。バンダイグループで映像ソフトなんかを販売している会社だけど、ちょっと前から妙な品物をたくさん作るよーになっていて、一度話を聞いてみたいと取材を申し込んでいた。何が妙かってゆーと、例えばマクロスのバルキリーが浮き彫りになったZIPPOライター。裏にはリン・ミンメイのイラストがカラーで入っていて、1個1万9800円もするのに、限定500個が残部僅少だとゆー。もっと妙なのが「新世紀エヴァンゲリオン」の初号機を型どったとゆーZIPPOライターで、値段は同じ1万9800円。マクロスの倍の1000個を作ったところ、来年1月の発売を待たずに予約で完売してしまったとゆー。まさにアイディアの勝利!

 メジャーなマーチャンダイジングがお家芸のバンダイとは違って、スキマのさらにスキマを狙った商品を追求していくその姿勢は、確かにヲタク心を刺激する。けれども狭いスキマを狙うってことは、それだけ外す可能性も高いってことで、商品企画を担当する側の苦労が忍ばれる。Zガンダムの連邦軍の制服をイメージした皮ジャンはまだ余ってるそーだし、値段が高いってのも考えものなのか。しかし例えば綾波レイのプラグスーツだとか、「時空戦士 魅鬼」で横山智佐さんが着ていたコスチュームのレプリカだとかを作ったら、10万円くらいでも売れそーな気がするなー。あと渚カヲルくんの首だけフィギュアのペンダント・ヘッドとか。金ピカだったらなおグッド、かも。

 とはいえビームエンタテインメント、濃いものばかり作っている訳ではなくって、例えばアダルトCD−ROMの「クローンドール課外授業」だとか、エッチCD−ROMの「真・淫獣学園」とか、緊縛CD−ROMの「団鬼六作品集」といった、ごくごく普通の(どこが普通だ)売れ筋CD−ROMも作ってるから、やっぱり不思議な会社としかいーよーがない。サンプルでデータベースCD−ROMの「スーパーロボット伝説 サンライズロボット編1」(メタルキット入り)をもらったから、キットを組立ながら「ダイターン3」とか「戦闘メカザブングル」だとかの設定画でも見てみよう。ビューティー、好きだったなあ。

 東芝の年末記者懇談会。とりたてて担当している分野がないので、社長を取り囲んで話に聞き入る記者の後に背後霊のようにくっついて、運ばれて来る食べ物をむしゃむしゃと胃袋に放り込んでいた。クリスマス・イブだとゆーのに、なんでジーチャンとトッチャンの顔を見ながら、エビ天とか寿司とかしゃぶしゃぶとかローストビーフとかいったパーティー料理を食わなきゃならんのかと憤っても、だからといってフランス料理にシャンペンに鳥モモに七面鳥なんかを誰かと一緒に食べる甲斐性もないから仕方がない。晩御飯代が浮いただけでも良しとしよー。

 悲しみついでに家に帰ってGコード予約しておいた「機動戦艦ナデシコ」を見る。ケーキは食べてないよ。シーズンらしく、お約束の艦内クリスマス・パーティーがエピソードとして登場していて、見せつけてるんじゃねーよと、怒り心頭に達してついついリモコンを投げつけたくなる。先週から見始めたばかりだとゆーのに、何となく話の先が見えてきてしまうのは、長年アニメを見続けてきた賜だとも言えるけど、しかし流石に話題の「ナデシコ」だけあって、きっと期待を良い意味で裏切る展開を見せてくれるんだろー。そーですよね。


【12月23日】 父親による娘の性的虐待を取り上げた児童文学とゆー、ハドリー・アーウィンの「愛しのアビー」(桐山まり訳、新樹社、1000円)を読み終える。ベタベタの青春小説のフォーマットに、父親が娘に対して何かをしているとゆー描写がほのめかしのように入っているだけで、陰惨な場面や猥雑な場面がまるでない。虐待の告白というクライマックスの部分も、その後の父親の処罰の部分も、こうした場面に付き物の暗さが微塵もない。子供に読ませる児童小説とゆーことで、父親を恐い存在と思いつつも、やっぱり父親だからと責めきれない、複雑な子供の気持ちに配慮しているのだろー。

 前に読んだスーザン・パルウィックの「いつもの空を飛びまわり」(安野玲訳、筑摩書房、1545円)も、同じく父親による娘の虐待と死を描きながら、ファンタジーの要素を上に被せて、重いテーマをすんなりと読ませ、勇気を出すことの大切さを効果的に伝えていた。澁澤龍彦さんは何かのエッセイで、娘を作ればきっと性愛の対象として見てしまうだろうから、自分は子供を作らないのだといった意味のことを書いていた記憶があって、そちらの側に組したい気持ちがある身には、「なーんだつまんないの」って小説だと言える。しかし、常識人に立ち返って真っ当な意見を言うならば、興味本位な部分を完全に廃した形で、もっと注目されるべき本ってことになる。

 休みなのに仕事。来年用の新聞に入れる原稿が足りないってことで、会社に行って導入したばかりの「98ノート」で原稿を書くが、キーボードのあまりの使いにくさに肩が凝る。スライドパッド形式なので、黒い部分に指をあててスラスラずらすとマウスが動くんだけど、トントンと叩くことでクリックと同じ操作を得られるとゆーシステムに馴染まず、いらぬ所でポイントが動き、アプリケーションが開き、文字が消える。それから新しいワープロを使う時に直面する問題として、漢字仮名混じりの文章に英文字やカタカナや半角英字やらを入れる操作が解らずイライラする。しかしせっかくの「98」だ。どっかでフロッピー仕様のエッチゲームを手に入れて、家にパソコン持ち帰ってプレイしてやるゾー。

 千葉テレビでアニメの番組。OVAとして絶賛好評発売中らしー「マスター・モスキートン」の番宣用テレビ版らしく、宝物を探してピラミッドにもぐってモーちゃんことモスキートンの昔の愛人カミラが登場して乗ってた船が爆沈する当たりで話が終わってしまう。垂れ目で頭のてっぺんがハネたモーちゃんが情けないが、モーちゃんの従者みたいなユキちゃんが、戦闘の際にアダルトバージョンに変わる場面はなかなかのもの。あとカミラさんの大きな胸も。それにしても流石にOVA版だけあって動画のクオリティーが高く、普段見ているテレビ番組のアニメが粗雑に見えて困ってしまう。製作費もなく時間もないから、仕方がないとはゆーけれど、もーちょっと丁寧に作って欲しいぞ「逮捕しちゃうぞ!」テレビ版(をを名指し)。

 村山由佳さんの最新作「きみのためにできること」(集英社、1300円)を読む。ファンタジーでもミステリーでもSFでもないベタベタの青春小説を何故読むのかと言われれば、村山さんと誕生日が同じで親近感があるからだけど、しかしやっぱり青春小説って苦手。離れてしまった恋人とメールで文通したいとゆー主人公の感情や、夢に燃えてテレビ番組制作会社に入って下積みから頑張るって主人公の姿勢や、自分には決定的に欠けているもので、読んでいてちょっと辛くなる。こんなやつぁういねえよと毒づくいっぽうで、羨ましく思ったりと、複雑な心境に囚われる。ましてや明日はクリスマス・イブだ。どーするってまあどーしよーもないから、「ナデシコ」の録画でも見ながら、1人で30センチのケーキでも食うことにしよー。


【12月22日】 「NEON GENESISI EVANGELION ADDITION」に入っているドラマ「『終局の続き』(仮題)」を2度ほど聞き直す。最初ほどのインパクトはないけれど、やっぱりおかしくてグビグビと喉を震わせながらお腹を抱えてのたうち回る。とくに最後の部分の「音だけアニメ」が良いね。ニッポン放送の「ラジメーション」みたいなモンだろーけど、全部が口三味線ってとこが凄い。サウンドトラックをバックに使徒と闘う「エヴァ」の姿が瞼の裏にくっきりと浮かんでくるもんね。これとおんなじ方法で、3月公開の映画の後半部分を作ったら、ずえーったいに面白いんだがなー。予算も安く済むし。

 ソニーを食い物にしたピーター・グーバー&ジョン・ピータースンの一代記「ヒット&ラン」ナンシー・グリフィン&キム・マスターズ著、森田伸訳、2800円)を読了。ハリウッドってとこがいかにすごい所なのかが逐一細かく書いてあって、最高に面白いノンフィクションに仕上がっている。断片的な新聞報道じゃー解らなかったことが、歴史をさかのぼって実に細かく書いてあって、これからの仕事の参考になる。日本でこんなん書いたら、きっと次から映画業界の取材なんで出来ないんだろーね。メディアと取材源との健全とゆーか闘う姿勢ってのがくっきり出ていて、見習うべき点多し。

 しかし「スター誕生」や「ザ・ディープ」や「バットマン」のような成功を納めた映画をプロデュースしたせいなのか、その後、山ほどの愚作を作っておきながらも、未だ両名ともハリウッドで健在とゆーのが解せない。それだけ映画製作の実力があるとゆーことなのか、それとも口先だとか人心掌握術だとかいった、別の能力があるとゆーことなのか。こーゆー話を読むと日本人も、大人になって企業人としてハリウッドで札束バラ撒くよりは、若いうちから入り込んで修行して成り上がっていく方が筋だし可能性も高いと思えて来る。ってな期待も込めて、ビルドアップの岡部さんには是非とも成功して欲しいもんです。

 TBS「噂の東京マガジン」恒例中吊り大賞の96年下期は扶桑社の雑誌「SPA!」が受賞。星は5個くらいだったけか。小林よしのりさんの連載が抜けて、宅八郎さんの連載が抜けて、田中康夫さんの連載が抜けてとまあ、この何年かのうちにいろいろと話題を振りまいた雑誌だったけど、世の中のスキ間をねらった特集は相変わらずの健在で、部数的に苦しいなりに、知恵を絞って頑張ってる。

 小林さんの連載があったころの「SPA!」とか、今は「UNO」編集長の花田さんが編集長を務めていた頃の「週刊文春」のよーな、中身的にも部数的にも周囲を圧倒するよーな週刊誌が、今はほとんど見あたらない。ネットワークの発達で、日刊どころか時刊なんて形態の雑誌の刊行が可能になって来ると、どんどんと倒れていったかつての月刊誌のよーな運命を、今度は週刊誌が辿る・・・なんてことはないけれど、でもちょっとは頭に入れておく必要があるね。

 朝日新聞に母校の広告。何でも「現代中国学部」とゆーのを来年4月に新しく開設するんで、その学生集めをしているらしー。学部長には現代中国政治だったかの第1人者、加々美光行さんが就任するんだっかしたんだったか。ちょっと前なら現代中国についての学部ってゆーと、例えば毛沢東思想だとか、あるいはマルクス・レーニン主義だとかを学ばせられる学科だと思われて、受験者本人じゃなくって両親とかに敬遠されたかも。

 でも今時の学生はそんなこと考えずに、「中国語って就職にいいかも」とか言って進学するんだろーね。かえって教授連の方にそんな”古典的”な中国観が染み着いていて、文化大革命どころか天安門事件すら知らないし関心もない学生に、愕然とするんだろーな。ちなみに現代中国学部が出来る名古屋校舎のある愛知県西加茂郡三好町って、東京の八王子みたく山と池とニュータウンくらいしかないから、学生にはちょっち辛いかも。


【12月21日】 銀行のキャッシュカードがペキ割れて金が引き出せない。このままだと連休中に飢え死にするので、仕方なしにクレジットカードでキャッシングして急場をしのぎ、コッペパンと水で食いぐことにする。

 などと謙虚なことを言っていられたのもレコード店に入るまで。噂には聞いていた「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場映画鑑賞券封入版サントラ&ドラマCD「NEON GENESISI EVANGELION ADDITION」(3000円)を見つけてしまい、フラフラと手に取ってレジに運んでしまう。おまけに先々週だったかの雑誌「SPA!」にスレンダーなヌードを披露していた元ラヴ・タンバリンズ(関係ないけど、タンバリンズ仮名漢字変換したら”丹波綸子”ってなった。どっかにいそーな名前)のヴォーカル「ellie」のソロ・アルバム「Bitch In Zion」も出ていてジャケット写真に惹かれて買ってしまう。物欲に負けるひ弱な根性持ち、ですね。

 「NEON GENESISI EVANGELION ADDITION」を聴く。コケる。脳がトケる。体がフルエ出す。いやーおかしいおかしい。同人誌だとかパロディ本だとかがやっている「その後のエヴァ」「裏のエバ」「インナースペースのエヴァ」「その他諸々のエバ」を、オリジナルなスタッフがやっちゃってくれている。とくにドラマ「『終局の続き』(仮題)」。20分近い尺のなかで、もーヤリタイホーダイの展開で、とにかく腹がよじれる、涙が吹き出す、飯くってたらちゃぶ台にばらまいてたね、確実に。

 僕たちは良いよ。こーゆーアニメの見方をやってきたから。たとえ真面目な話でも、裏返して見たりナナメから見たり茶化したりして卑下したりして遊んできたから。だからこそ、テレビ放映の最終回を大笑いしながら見ることが出来た。CDのドラマも大笑いしながら聴くことが出来た。でも、テレビ放映されたオリジナルな「エバ」から「僕はここにいてもいいんだ」ってな真摯なメッセージを受け取ってしまった人たち、最終回の「おめでとう」に自分も救われたと思っている人たちは、こーゆー展開にいったい何を思うんだろー。

 鍛えられて免疫が出来て、やがて立派なすれっからしのアニメ見になるか、あるいはアニメ作りになって、そんな作り手側と送り手側だけしか存在しない、すれっからしばかりのマーケットになる。可能性はあるし、それもまた良いかなって思う。でも「アニメなんて」と開き直ってる一方で、「ガッチャマン」「ヤマト」「ガンダム」「ボトムズ」なんかを見て育った世代として、「アニメだって」って胸を張りたい気持ちもあって、自閉していくマーケットを決して手放しで喜べない、なかなか複雑な心境にある。まあ、こーいった議論を喚起させる要因になったってだけでも、「エヴァ」の果たした役割は大きかったって言えるけど。

 「Bitch In Zion」はなかなか。「SPA!」の記事に、ラヴ・タンバリンズとは全然違ってるって書いてあったけど、あの声はやっぱり健在で、元プリンスっぽいってゆーか、シャーディっぽいっていうか(メジャーしか聴かないんで適切な例えができないのが辛い)、とにかく聴いていて心地よい楽曲に仕上がっている。でも歌詞はすっげー嫌らしい。冬の夜の愛聴盤。でも一番良いのはジャケットその他の写真だったりするところに、中年なりかかりの男のイヤラシさが出ているね。

 読売新聞社から書籍小包が届く。読売が主宰しているネット上で募集していた村山由佳さんの新刊「きみのためにできること」(集英社、1300円)のサイン本プレゼントに当たったもので、扉を開くと青地に銀のサインペンで、村山さんのサインが「メリークリスマス」の文字とともに書かれてあった。去年の冬に出た「青のフェルマータ」に続く、2冊目の村山さんのサイン本。日本版メイ・サートンとの呼び声も高かったエッセイ「海風通信」も良かったけど、やっぱり村山さんの本領は「恋愛小説」。冬の夜の愛読書として、連休中に読み込もー。


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