Numberなんて、きらい




 基本的にミーハーであるからして。

 この、国民的に盛り上がったお祭り騒ぎに、便乗しない手はない。
 だから、最終予選の、それこそ最後の何試合かは、きちんとテレビでリアルタイムで見たし、やっと選手の名前の何人かは覚えてきた。

 もちろん、サッカーのワールドカップ予選のこと。

 こういう付け焼き刃ミーハーが知ったかぶりをするためのツールとして、最高の雑誌があるんだ。

そう、Number。

 スポーツグラフィック誌として隔週に発行されるこの雑誌は、毎号一つのスポーツに焦点を当てて、ページ数にして半分ほどを割いて特集を組む。あるときはプロ野球であり、格闘技であり、F1であり、そしてもちろんサッカーであり。
 見応えのある写真とともに掲載されるかなり読み応えのある文章は、ノンフィクションという観点からみれば、ときにかなり感情的に、情緒的につづられていく。

We did it!

 試合終了後わずか三日ででたこの雑誌の、試合中のショットの表紙に染め抜かれたこの文字が、この雑誌のかなりを表していると思う。

 このNumber、ぼくは毎号買っているわけではないのだけれど、年に数回は、もっといってしまえば、F1特集のときには欠かさず買っている。そしてそれ以外のときもちらほら。

 今回も、もちろんそのちらほら。

 まあ、みんな考えることは同じで、この号はもちろん即日完売。ぼくは、その翌週の異例の再発売をひとに頼んでやっと手に入れたのだけれども。それはまあ、いいや。

この雑誌、きらいだった。    
この雑誌、反則技だって思ってた。

 感情と才能と努力が競い合い、勝敗を分けるただでさえ感動的な一瞬を、写真の手助けを借りて感動的に描く。
 元々のスポーツファンに読ませるためのこの手の文章は、いとも簡単にかけるものだと思っていた。ぼくにだってできる、っておもっていた。だから、恥ずかしげもなくこれを書くライターも、読む自分も、あまり好きではなかった。

 でも、ちがうね。今回、わかったよ。

 感情移入をしながら、ノンフィクションを書くこと。自分が感動しながら、他人を感動させる文章を書くこと。それも、試合後三日で、店頭に並ぶようにすること。きっとすごく難しいんだね。
 だって、あまりに感動的なことって、言葉がでないじゃない。それに至るまでの感情の動きを理解していれば、なおさら。それを言葉にするには、頭を冷やすためのいくらかの時間が必要だよね。つまり、ぼくにはできないってことを認めること。

 だからやっぱり、ただ楽しむのがいいね。この雑誌を、スポーツ観戦を。

 ちょっとくやしいけど。



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