たびのおわり


 というわけで、帰ってきたのだけれども。

 文庫本探しではじまった旅は、なにでおわるかというと。それはやっぱり「洗濯」でしょう。旅という非日常を、日常に戻すための儀式。写真を現像に出す前に、思い出の中で身につけていたものをひとつひとつかみしめてしまう。それが洗濯。

 ぼくの旅は、結構大荷物です。おんなじものは二度と着なくていいように着るものはたくさんもっていくし、いまはやりのモバイルなんてのも持っていったりして。その大荷物、帰りは宅急便で出してしまうことが多いのだけれども、しょうがないよね、それは。
 だから、旅から帰ってきて、ちょっと落ちついたころにとどく宅急便。大荷物が、みんな洗濯物に化けてとどく宅急便が、ぼくの旅の、ほんとの終わり。

 あぁ、たのしかった。

 そう思って荷物をひもといてしまう。鞄の中をみんな出して、洗濯物を干して、鞄を押入にしまうころにはもう、旅はおもいで。あしたからしっかり日常に生きていかなくちゃって、ちょっとしゅん。

 でも、落ちつけるところがあるから、旅なんだよね。ふらっといって、うろうろして、後ろ髪引かれつつも戻ってきたらなんとなく落ちついて。そんな日常っていうものがあるから、たまに旅にでるのがうれしくて、楽しくて。
 戻ってきた直後はほんとにつまらない、おんなじことの繰り返しに見えるふだんの生活も、一日たって、その中に入り込んでしまえばそんなにつまらなくもなくて。
 日常って、そんなにつまらないものじゃないよ、って、それを確認するために出かけるのかもしれないね。旅に。

 あっ、ことわっておくけど、今回のは仕事だからね、しごと。だからあそぶひまも楽しい思いでも、あんまりないよ。
 でも、非日常は堪能したけれど。

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