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1968年神奈川県横浜市出身、早稲田大学法学部卒。日本語教師を経てフリーライター。2012年「エンジェルフライト」にて第10回開高健ノンフィクション賞を受賞。 |
1.エンジェルフライト 2.紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 3.エンド・オブ・ライフ |
1. | |
「エンジェルフライト−国際霊柩送還士−」 ★★☆ 開高健ノンフィクション賞 |
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2014年11月
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「エンジェルフライト」という題名だけでは想像つきませんが、脇に添えられた「国際霊柩送還士」という日本語を見ればおおよその内容は察しがつきます。 国境を越えて遺体の送還を行うという業務の内容は実態としてどういうものなのか。それはもう、読んでみて初めて判ること。逆に言えば、読んでみないと判らない、ということです。 何故送還士が必要なのか、その実務はどのようなものなのか。何故送還士になったのか、どのような思いを抱いて仕事に従事しているのか。そして、遺体をきれいにして遺族の元に届けるという意味はどこにあるのか。本書の中にはそれらの問い掛けが詰まっています。 遺体ビジネス/取材の端緒/死を扱う会社/遺族/新入社員/「国際霊柩送還」とはなにか/創業者/ドライバー/取材者/二代目/母/親父/忘れ去られるべき人/おわりに |
2. | |
「紙つなげ! 彼らが本の紙を作っている−再生・日本製紙石巻工場−」 ★★ |
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2011.03.11発生した東日本大震災、この大震災を扱ったドキュメントは数多くあると思いますが、私としては本書が、杉山隆男「自衛隊は起つ」に続く2冊目。 本工場の再始動があって初めて、出版界へ本の用紙の潤滑な供給が成り立つという部分は、象徴的とはいえ工場再生における一部のことですが、本好きとしては感謝の念を持たずにはいられません。 |
「エンド・オブ・ライフ」 ★★ | |
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京都で訪問医療を行っている渡辺西賀茂診療所。 同診療所の訪問看護師の一人である森山文明・48歳が癌を発症。 その森山からの依頼で、筆者は訪問看護の実像や意味、余命宣告を受けた癌患者の家族らを取材したノンフィクション。 私自身高齢となり、実父を看取ってからは、いずれ迎える死について常に考えるようになりました。 がんという病気もあれば、事故もある、また今回のようなコロナウィルス感染という事態も考えられます。 若い時ならいざ知らず、死というのはもう然程遠くにある問題ではありません。 本書に登場する殆どは癌患者ですが、余命宣告という衝撃、余命宣告を受けてからある程度の時間がある、ということを除けば、そう変わるものではない、と思います。 誰しも病院に長く入院するのは嫌な筈ですし、在宅での治療が可能であればそれを望みたい筈。一方では、看護する家族の負担という問題も無視できません。 それらの問題を含んで、在宅医療の是非、意味、終末医療のあるべき姿を考えるにあたって本書は最適のノンフィクションであるように思います。 自分自身の来るべき将来を踏まえ、参考になったというのが、正直なところです。 ※入院医療と訪問医療では、患者との関わり様から必然的に、その姿勢に差異が生じるようです。 医療現場の考え方も変わりつつあると思いますが、所詮最後は誰しも<死>を免れないのですから、それぞれの立場を理由に命を長引かせるのではなく、最後まで充実した<生>を全うさせて欲しいものだと、心から思います。 ただし、そこには患者本人の覚悟もまた、必要不可欠なことでしょう。 プロローグ/2013年−今から六年前のこと(たった一日だけの患者)/2018年−現在(元ノンフィクションライター)/2013年−その2(桜の園の愛しい我が家)/2018年(患者になった在宅看護師)/2013年−その3(生きる意味って何ですか?)/2013年−その4(献身、在宅を支える人)/2013年−その5(家に帰ろう)/2019年(奇跡を信じる力)/2013年−その6(夢の国の魔法)/2019年(再び夢の国へ)/2013年−その7(グッドクローザー)/2014年(魂のいるところ)/2019年(命の閉じ方のレッスン、幸福の還流、カーテンコール) |